ライプツィヒの図書館で一枚のSP盤が発見された。そこに収められていたのは戦災で楽譜が焼失した作曲家・平尾貴四男の弦楽四重奏曲である。演奏はデッサウ四重奏団。独ソ戦、そして日米開戦という激動の時代に録音されたものだった。この録音をもとにした楽譜復元は約3年前に開始し、平尾の子孫である島根恵と、その息子の島根朋史を中心に作業が進められ、演奏可能な形でよみがえった。そこに聴かれるのは近代フランスの精神を汲んだアンニュイな旋律の数々。今日では古風にも映る表現もまた味わい深い。こうした形でそれまで紛失してしまった作品が世に戻るというのも実に乙な話だ。