タワーレコード渋谷店6Fのアナログ専門フロア〈TOWER VINYL SHIBUYA〉を舞台に、各界で活躍する音楽好きの著名人にお気に入りのレコードを選んでもらう新連載〈MY VINYL CHRONICLE〉をスタートさせる。記念すべき第1回目のゲストは、2026年9月30日に5年ぶりとなる長編小説「きずもの」を刊行した作家の西加奈子さん。

「サラバ!」「くもをさがす」をはじめ、数多くの小説やエッセイで熱い支持を集める彼女にとって音楽は「自分を守ってくれるものであり、出会い頭に殴られるものでもある」という。そんな愛すべき音楽について、そして、待望の最新作「きずもの」に込めた思いについて、たっぷりと話を聞いた。 *Mikiki編集部

西加奈子 『きずもの』 小学館(2026)

 

出産の時もア・トライブ・コールド・クエストを聴いていた

──まずヒップホップのコーナーへ行って、最初にア・トライブ・コールド・クエストのレコードを数枚、手に取られていましたね。

「トライブは10代の頃からのスターで、Qティップが大好きなんです。最先端を行ったものほど、ある時代に一時的にダサくなったりするけど、トライブは一回もない。ずっと色あせないんですよね」

A TRIBE CALLED QUEST 『People’s Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm』 Jive(1990)
A TRIBE CALLED QUEST 『The Low End Theory』 Jive/Legacy/ソニー(1991)
A TRIBE CALLED QUEST 『The Anthology』 Jive/Legacy/ソニー(2008)

──そもそも、ヒップホップを聴くようになったきっかけは?

「最初の入口は、小学生の時に買った映画『スタンド・バイ・ミー』のサントラでした。そこから、映画のサントラを買うと間違いないなと思うようになって。『ニュー・ジャック・シティ』のサントラを買ったら、なんだこれはって、サウンドのかっこよさに衝撃を受けたんです。英語はちゃんとわからなかったけど、そこからヒップホップを聴くようになりました。

ただ、当時の私には、ヒップホップはかっこいいけど、ちょっと怖いお兄さんたちの音楽でもあった。そんな中で出会ったトライブは、すごくハッピーだったんです。こういうヒップホップもあるんや、めちゃくちゃ素敵やなって、一気にハマりました。出産の時も、トライブのドキュメンタリーを観ながら陣痛を待っていたぐらい好きです」

 

めちゃくちゃ泣けたディアンジェロのライブ

──TLCの『CrazySexyCool』と、エリカ・バドゥの『Mama’s Gun』を選んだ理由は?

「例えば当時の日本のアイドルって、可愛い女の子、というのが当たり前だったけど、TLCは体のサイズがわからないような服を着て、コンドームを眼帯にして。こんな女の子たちがいるんやってびっくりしたんです。レフト・アイが特に好きで、インタビューで子供服しか着ないと読んだら、古着屋で子供服を買って無理やり着たり。香水をつけないと聞いたら、私もつけないと決めたり。

女性が強く、クールでいることが嬉しかった。エリカ・バドゥのファッションも真似しました。母親になってもこんなにかっこよくいられることに勇気をもらいましたし、ネオソウルのあの〈もたつき〉が本当にセクシーで。年を取っても好きな服を着て、したいことを続けている年上の女性がいてくれるのは、すごく心強いです」

TLC 『CrazySexyCool』 LaFace/Arista(1994)
ERYKAH BADU 『Mama's Gun』 Motown(2000)

──ディアンジェロには、どんな思い入れがありますか?

「私は10代の時に性被害に遭って、性的に見られることがつらかったんです。だから、自分も男性を性的に見たくない時期がありました。でもディアンジェロに出会って、この人だけは見ていいと思ってしまった。本当にセクシーなミュージックビデオも出していましたし、本人もそれを望んでいるだろうと。

その後、彼がそう見られることに苦しんでいたと知って、結果私も彼を性的に消費していたんやって、すごくショックで。一時期は彼の曲を聴けなくなってしまったんです。

だから、『Voodoo』から16年後の2016年、横浜のライブは、1人で緊張しながら観に行きました。そしたら、年を重ねた彼がすごく楽しそうに歌っていて。生きていてくれてよかった、音楽から離れずにいてくれてよかったって、めちゃくちゃ泣けました。もちろん立場は全然違うけど、それぞれしんどい時期を過ごしたよね、という気持ちもあって。勝手に一体感を感じて、いろんな感情がこみ上げてきたんです」

D'ANGELO 『Voodoo』 Virgin/Cheeba Sound(2000)

──僕もその公演に行きました。昔のままを再現してくれなくてもいい。今の年齢、その状態で歌ってくれることが美しいなと思いました。

「あ、同じ空間にいたんですね。ほんとそう。年を取ったからこそ歌える歌があるし、同じセクシーな歌でも、その意味が変わってくる。本当に観られてよかったです。そこからまたディアンジェロを聴くようになって、年を取るっていいなと思いました。性的な対象から逃れて自由になることってありますよね。当時の歌を、違う声で、違うやり方で表現している彼に、やっぱりすごく勇気をもらいました」

 

カマシ・ワシントンに圧倒された

──カマシ・ワシントンとの出会いは?

「深夜に運転していて、ラジオから“Malcolm’s Theme”が流れてきたんです。心を動かされすぎて、これは事故ると思って路肩に停めました。曲を全部聴いて、落ち着いてから帰ったのを覚えています。小説は、読者が一文ずつ読んで、能動的に作品に入ってくれないといけない。でも私はラジオをぼんやり聴いていただけなのに、圧倒的にさらわれてしまった。来日公演も観に行って、レコードにサインをもらいました」

KAMASI WASHINGTON 『The Epic』 Brainfeeder/BEAT(2015)
KAMASI WASHINGTON 『Heaven And Earth』 Young Turks/BEAT(2018)

──カマシの音楽は、独特の没入感がありますよね。

「トライブを聴くと、クラブのスピーカーの前に自分がいる感じがする。でもカマシは、スピーカーがどこにあるかわからなくて、ただ音の中に私がいる気がするんです。見えないけど存在している、音の振動の中にいる感覚です。

私は言葉を生業にしているので、そんな音だけでミュージシャン同士が対話している姿を観ると、めっちゃ泣いちゃう。すごく特別ですね」

 

人生をかけてやりたいこと

──普段は、音楽とどんなふうに付き合っていますか?

「執筆中は無音ですけど、それ以外はずっとかけています。自分を守ってくれるものでもあるし、カマシのように出会い頭に殴られるものでもある。小説にも救われてきたし、小説家でいることは自分の誇りですけど、音楽がなかったら、違う意味で生きていけない。

ただ、心が弱っている時は、聴ける音楽が限られます。心が動かされすぎて。がんの治療中に聴いていた曲を、しばらく聴けなくなったこともあって。当時に一気に戻されてしまうぐらい、自分の内面に入り込んでくるものですね」

──音楽から受け取ったものを、小説にしたいと思うこともありますか?

「人生をかけてやりたいことが一つあって。グスターボ・ドゥダメルがシモン・ボリバルのオーケストラを指揮して、バーンスタインの“Mambo”を演奏する映像があるんです。圧倒されて泣いてしまうんですけど、なんの涙かわからない。音楽を題材にした小説ということではなくて、あの映像を観た時のような感覚を得られる小説を、いつか書きたいんです」

 

 5年ぶりの長編小説「きずもの」で書きたかったこと

──ここからは、新刊「きずもの」について伺います。小説家の貢(みつぐ)とその幼馴染みを軸に、家族や恋人たちの人生が交わる群像劇です。正しくありたいと願いながら、欲望や衝動にも振り回される人たちの描写に感動しました。どんな思いから書き始めたのでしょうか。

「5、6年前に新聞連載のお話をいただいて、長いものが書けるから、誰かの人生を書きたいと思ったのが最初です。私はメモをしないんですけど、パソコンを開くと、自分の中に引っかかっていたことが一気に出てくる。その一つが、薬物を使用した人への制裁の強さだったと思います。法の罰は受けているのに、社会的に抹殺されかけますよね。

怒りの声を上げることは大切です。SNSも、声の大きい人しか言えなかったことを、いろんな人が同じ声量で言えるようになった点では本当に素晴らしいと思います。でも、怒りの声を上げることを超えて、誰かを罰するツールになっている気がする。人を罰するのは法律であって、その法律が間違っていると思ったら怒る権利はあるけど、人が人を罰する権利はない。そこを、自分も含めて忘れてしまいがちです。

『きずもの』は最初、仮のタイトルでした。性被害に遭った女の子を〈傷物になった〉と言ったり、過去に何かある人を〈すねに傷がある〉と言ったりするけど、じゃあ傷がない人はいるのか。全員きずものちゃうの?って思って。

同時に、私は友達に救われてきたし、友達がいないと生きていけないので、友情を書きたかった。友情も時代によって変わるけど、変わらないものもある。そういうことが一気に出てきて、この物語になりました」

──最初にストーリーや人物の設定を決めていたわけではないんですね。

「ストーリーも結末も決まっていませんでした。1行ずつ書いていくうちに貢という人物ができて、彼には彼にとってのヒーローみたいな幼馴染みがいる。貢が関係を持つ遥はこういう子で、遥にも幼馴染みがいて、と広がっていきました。

新聞連載が始まる前に3分の2ぐらい書いていたんですけど、残りを書きながら毎週ゲラも来るので、今までで一番長く登場人物と過ごしました。それが、現実で人を知っていくプロセスとすごく似ていて。最初は貢があまり好きじゃなかったけど、ずっと一緒にいたら、私も貢やったらこうなっていたかもしれんなと思うようになったんです。

もちろん、自分がコントロールして書くものではあるんですけど、小説は1行書かないと次の1行に行けない。その順番を覆せないのがもどかしいですが面白い。何もかもが速い時代に、ものすごく時間がかかる。その中で、ゆっくり彼らを知っていく感覚でした」

 

自分の中にはいろんな人がいる

──貢はリベラルであろうとしながら、妻以外の女性と関係を重ね、取り返しのつかない事態に陥ります。文芸部特有の自尊心や学生時代の恋愛遍歴などは、ライターの自分にも身に覚えがありました。こうした男性の内面は、人に話を聞いて形にするのでしょうか。

「友達に話を聞いたりはしました。例えば、文芸サークルに所属しながら絶対に小説は書かへんとか、そのこだわりが面白かったり。でも、私は女性として生まれてきたけど、ずっと100%女性として生きてきたことはなくて、自分の中にはいろんな人がいると思うんです。

だから貢みたいな環境で育って、男性だったら貢みたいになり得たなって思います。性欲と虚栄心という得体の知れないものに動かされながら、ずっと静かに生きてきたのに、急にモテ始める、どうしようっていう気持ちも、人ごとじゃなかった。自分も性被害に遭って、なんとなく被害者みたいな顔で生きてきましたが、絶対に加害性はあるし、加害者になっている瞬間もあります。私と同世代で、80年代、90年代に運動のできない男の子が青春を送るのは、特に貢のような環境ではきつかったんじゃないかなと思います。貢がやったことが正当化されるわけではもちろんないけど、理解不能ではない」

──僕も球技が苦手で、体育会系のモテる友人にコンプレックスがありました。でも、高校生くらいから音楽や映画、本に詳しいことがモテる要素になると、ちょっと勘違いしてしまったりして(笑)。

「小学校からそれでモテさせてくれよと思いますよね。賢いことや知識があることが、もっと早くから人気者の要素になったらいいのに。運動会とかが大きすぎて、ヒーローが限られるんですよね」

──貢をはじめ、誰かモデルがいるというより、西さんの中にいる人たちなんですね。

「全部の人物に自分がいると思います。嫌なところも自分だし、特に万千花と遥は、2人とも自分の中にいる感じです」

 

絶対に守られるべき正しさはある。でも……

──貢とともに日本で社会的な制裁を受けた遥は、バンクーバーで幼馴染みの万千花と暮らし始めます。万千花は周囲の環境に感化されて正しく生きようとしますが、そうした行いが元でやがて遥との衝突を迎えます。終盤の2人の言葉の応酬は、笑いながらも切羽詰まったものを感じました。ここも、それぞれにご自身を重ねながら書いたのでしょうか。

「2人のことが大好きなので、2人が言い合いをするシーンは筆が進みました。私自身も変わりたいと思っているし、正しいことを言いたい。誰も傷つけないことは無理でも、だからって諦めて開き直るのは違う。発信する立場の人は、歯を食いしばってでも正しいことをやらないといけないと思うんです。でも、〈昔から正しかったです〉はなしやろと。ひどいことも言ってきたし、間違ったこともしてきた。そういう過去があって今の自分がいることは、忘れたくない。

万千花はその過去を忘れようとしているから、遥は納得いかない。〈嘘つきや、お前。無理すな〉って。しかも、遥は万千花のことが大好きだから、なんでお前が世界に媚びなあかんねんとも思う。その気持ちも、とてもよく分かります。

私が公の場で正しいことを言うと、〈よう言った〉と思う反面、自分の中にいる遥みたいな子が〈お前、ちゃうかったやんけ〉と言っている。どっちも私にとって大切で、どっちもいるから今の私がある。それを2人に託しました」

──貢の対談相手である新人小説家・望月まもるが、人間をパッチワークに喩える言葉も印象的です。布と布に脈絡がないこともあるように、人も、自分では説明のつかない行動を取ってしまうことがある。

「例えば昔の漫画やドラマなんかで、嫌なやつだと思っていた不良が雨の中で子犬を抱いていて、ほんまはいいやつやった、という場面があったじゃないですか。ということは、その逆もありますよね。いい人だと思っていたおじいちゃんが一回舌打ちしたら、嫌な人になるのか。そんなに単純じゃないですよね。いろんな面があって、その人であるはずで。

この人を嫌いになれたら楽やのに、と思う友達もいます。政治的な考えが合わなかったり、びっくりすることを言ったり。でも、いい奴やから難しい。めっちゃ助けられてるな、この子に、って。じゃあどうするかって、やっぱり話し合おうと思う。どれだけ時間をかけても一緒に過ごそうって。その大切さを、この小説が体現してくれた気がします」

──正しいことを言おうとすると、〈多様性〉など誰もが使う、借りてきたような言葉になって、陳腐になってしまうこともあると思います。自分の言葉で正しさを語る難しさを、どう感じていますか。

「公の場で話す時は、陳腐になると思うんです。でも、陳腐であるべきとも思う。その方が遠くまで届くので。ただ、私は友達と話す時にも、公の場と同じ言葉を使おうとしていた。

昔は、悩んでいる友達を抱きしめたり、〈誰や、そんなん言ったん。どついたるわ〉とか〈あんた可愛いねんから気にしな〉とか、今思えば間違ったことも言っていたけど、少なくとも先に愛があった。でもだんだん、公の場の自分が自分を侵食してきて。愛はあるつもりでも、友達に相談された時に〈この場で正しい言葉はなんだろう〉と考えてしまうようになった。それが気持ち悪くて、自分にガッカリしたんです。

それからコロナ禍に入り、人と物理的にも距離を取らないといけなくなったので、それがすごく寂しかった。

絶対に守られるべき正しさはある。でも、人間同士はもともとぴったり合うわけじゃない。会話だけ切り取れば間違っていても、その人たちには愛情の表れだったりする。だから友達と接する時は、ちゃんと時間を取ることを大切にしています。そうしないと、公の場と同じ言葉になっちゃうから。悩みがあったら、LINEじゃなくてなるべく会って話したい。手間も時間もかかるけど、本来、人間関係ってそうやったよなと。

付き合える人は限られてゆくだろうけど、それでもいい。浅く広く付き合う楽しさもあるけど、今は昔からの友達と旅行に行ったり、喋る時間を増やしています」

 

人間関係は厄介で難しいから尊い

──今は多くの人がSNSで発信していて、公の場での自分が日常に入り込み、恋人や家族を裁いてしまうこともある気がします。正しい、正しくないとジャッジする前に、自分の言葉で話せるといいですよね。

「そうですね。だから時間がかかるんですよ。恋人や家族だったら尚更、本来時間をかけるべきじゃないですか。数行の言葉で正しい、正しくないと判断できるものじゃないし、たぶん正解もない。一生話し続けような、ぐらいの気概がいるんちゃうかな。めっちゃしんどいですけど」

──食事に誘うこともハラスメントになりうる時代ですが、だからといって「窮屈な世の中」と言うのもちょっと違うと思うんです。

「すべての人間関係を反映できないから、明文化された基準は必要ですよね。例えばさっきの公の場の正しさは、陳腐でも絶対に必要。〈差別はいけません〉とか、その通りですから。

食事に誘ったことがハラスメントになるんやったら、関係ができていないということですよね。だから、相手を尊重しながら、誠実に関係を築くしかないんですけど、私も耳が痛いです。キャリアも長くなってきているし、例えば編集者お1人おひとりと向き合う時間もなかなか取れない。

長く一緒にやっている人ならまだいいけど、いろんな人が入れ替わり立ち替わりいらっしゃると、食事に誘うことがお互いにとっていいと思える関係になる前に、担当が替わってしまうこともある。じゃあ最初から誘わんとこう、となる気持ちもわかるんです。

だからこれは、社会の問題でもあると思います。1人ひとりにきちんと向き合える時間がないと。やることも会う人も多すぎて、その時間を取るのが難しいのかなと思います」

──遥と万千花のように、自分も相手も変わり続ける。そのたびに付き合い方を考えていくわけですから、人間関係って、そもそも厄介なものなんですね。

「そうです。厄介で難しいから尊いというか。生きにくくなったと言う人もいるけど、本来、みんながちょっとずつしんどいぐらいが正常なんじゃないでしょうか。これまではマジョリティ向けに作られた世界で、マイノリティの方たちがしんどさを一気に背負っていた。それをみんなで少しずつ引き受ける。私もマジョリティにあぐらをかいてきた自覚があるので、日々迷います。でも、本来は人間ってこれぐらい迷わなあかんのやろなって」

──「きずもの」は、西さんにとってどんな本になりましたか。

「この年になって、新しくできた友達という感覚です。結果的に5年ぐらいかけて、ちゃんと知っていった。中学の3年間より長く、一緒にいたわけですから。〈なんかわかってきたで〉という感じの友達。とにかく、すごくスペシャルな存在です」

 


BOOK INFORMATION

西加奈子 『きずもの』 小学館(2026)

発売日:2026年9月30日(水)
ISBN:9784093867887

5年ぶりの長編小説、新たなる代表作。
小説家・松川貢は、郷里の幼馴染みである田持猛とゆるやかにSNSで繋がり続けていた。
運動が得意だった猛は、貢にとって仰ぎ見る存在だったが、いまやその関係性は真逆のものになっていた。
某写真家のパーティーで貢と出会った遥は、ある出来事を機に、カナダ・バンクーバーで生活を続ける親友の万千花のルームシェア相手になる。
幼少期から互いを知る2組には、それぞれの時間が着実に流れていた。

執筆3年。
絶望と勇気が肩を組んでやってくるような、
直木賞受賞作「サラバ!」、がん治療ノンフィクション「くもをさがす」著者の新たなる代表作。

■編集担当者のコメント
北海道新聞、中日新聞、東京新聞、西日本新聞朝刊各紙(2025年4月~2026年5月)に掲載された著者初の新聞連載小説です。書籍化にあたり、加筆改稿されています。
担当したデビュー作「あおい」から22年。そして、直木賞受賞作「サラバ!」から12年。執筆期間3年に及んだ本作は、何度読んでも、西加奈子さんにしか書けない、いや、今の西さんだからこそ書けた小説なのだと強く思います。ぜひ、お手に取ってお読みいただけたら幸いです。

 


PROFILE: 西 加奈子
1977年、イラン・テヘランで生まれ、大阪府で育つ。 2004年に「あおい」でデビュー。2007年「通天閣」で織田作之助賞、2013年「ふくわらい」で河合隼雄物語賞、2015年「サラバ!」で直木賞、2023年にノンフィクション「くもをさがす」で読売文学賞随筆・紀行賞受賞。著書に「さくら」「円卓」「漁港の肉子ちゃん」など多数。