朝ドラ「ブラッサム」で話題! YOASOBIの主題歌“咲き誇れ”

作家、着物デザイナー、編集者、実業家と、多才に活躍しながら明治、大正、昭和、そして平成まで、98年にわたる人生を全うした宇野千代が、この秋からスタートした連続テレビ小説「ブラッサム」のモデルだ。ドラマでは石橋静河演じる主人公・葉野珠が、小説を書きたいという幼い日の夢を諦めず、故郷である山口県の岩国を飛び出し、文学界で才気煥発な人々と出会いながら夢を手繰り寄せていく姿が、これから半年間にわたって描き出される。

暴君のごとき父親の壮絶な最期など序盤からハードな展開が続いているが、この先も幾度かの結婚と離婚(宇野千代は生涯で4回経験している)、震災に戦争、さらには倒産に借金など、波乱に満ちた物語が待ち受けている。しかし、どんな苦難の中からも〈幸せのかけら〉を見つけ出し、小説を書くことを決してやめず、一流作家としての地位を確立していく珠の一生が、石橋静河と晩年を演じる加賀まりこによるバトンで紡がれていく。

そんな珠の溢れんばかりの生命力を象徴しているのが、YOASOBIが書き下ろした主題歌“咲き誇れ”だ。明るく躍動感に満ち満ちたポップソングは第1話で流れるやいなや、満開の桜の木の下で石橋静河がそのリズムに合わせて笑顔で舞い踊る鮮やかなタイトルバックとともに、大きな反響を呼んでいる。そこで今回は、2026年10月14日にデジタルシングルとしてリリースされた“咲き誇れ”がどんな楽曲なのか、詳しく紹介しよう。

 

Ayaseの人生の分岐点となった出会い

上述の通り、「ブラッサム」は小説家が主人公の朝ドラだ。だからこそ、〈小説を音楽にするユニット〉であるYOASOBIに主題歌の白羽の矢が立ったという。コンポーザーのAyaseとドラマのモデルである宇野千代が同じ山口県の出身という縁もあってのことだが、Ayaseはオファーがあるまで宇野の存在を知らなかったそう。しかし、楽曲の制作にあたって、宇野が80代半ばに発表して100万部を超える大ベストセラーとなった自伝「生きて行く私」を読み、その生き方、考え方に大きな感銘を受けたといい、「自分の創作人生、音楽人生において、先生との出会いは間違いなく一つの分岐点になるだろうと確信するほど素敵な出会いに恵まれた」と明かしている。

宇野千代 『新装版 生きて行く私(上)』 毎日新聞出版(2026)
宇野千代 『新装版 生きて行く私(下)』 毎日新聞出版(2026)

そして、宇野千代を敬愛する作家の綿矢りさが、楽曲の原作となる小説「桜(はな)の命は不滅なり」を書き下ろした。心から好きだと言える仕事に就きながらも不安や悩みを抱く主人公が、高校生の時に出会った「薄墨の桜」や「生きて行く私」といった宇野の作品に励まされ、前を向いて歩き出していく姿が爽やかに描かれている。Ayaseはその主人公の姿に自分が重なったと語っている。

 

宇野千代が愛し続けた〈桜〉と響き合う

原作小説を得て、ドラマの台本を読み、さらに宇野の生家など岩国のゆかりの地を訪ねてその空気を全身に感じたというAyaseが、その後一気に歌詞を書き上げて完成させたのが今回の新曲“咲き誇れ”だ。〈夢中で生きることが、生きていく目的。〉など宇野が残した名言を彷彿とさせるその歌詞には、幾度となく困難に見舞われながらも、〈いつだって今が最高!〉と超ポジティブに生き抜いた宇野千代という人生の達人の眼差しが宿っている。そして、「ただ力強さで押すということではなくて、軽やかにスキップしながら楽しく歩んでいっている宇野千代先生、葉野珠をイメージしながら歌った」というボーカルのikuraから放たれる〈希望〉の塊のような歌声が、楽曲に突き抜けるような爽快感とエネルギーを与えている。

また、楽曲の力強さは、YOASOBIが行った新たな試みによるところも大きいだろう。今回初めてオーケストラレコーディングを実施し、そのアレンジは作曲家の波立裕矢、演奏は音楽家の坂東祐大が主宰するEnsemble FOVEが務め、坂東は録音のディレクションも担当した。さらに、コーラスとクラップ、ストンプには、アコースティックセッションユニット〈ぷらそにか〉の現・旧メンバーが参加している。そうした生音が重なり合うことで生まれる躍動感と壮大さ、華やかさは、宇野が生涯にわたってこよなく愛した〈桜〉のダイナミックな美しさと散ってもまた咲き誇るその逞しい生命力、そして、枠にとらわれず、自分らしく自由に生き抜いた宇野千代と主人公・葉野珠の姿と一つのイメージを織りなすように晴れ晴れと響き渡っている。

 

自分を圧倒的に肯定するパワーに溢れた歌

宇野千代は毎日鏡の中の自分に「きれいだ」と言っていたというエピソードが残されているが、〈私よ咲き誇れもっと〉と高らかに歌い上げるこの曲には、そんなふうに自分を圧倒的に肯定するパワーが溢れている。だからこそ、懸命に生きていても心が削られるようなこの時代に、この歌が朝の光のように日常へ解き放たれることの大きさを思わずにいられない。そして、「ブギウギ」を手掛けた櫻井剛による脚本で描かれる人間ドラマはこれからより切実さを増していくに違いないが、たくさんの恋をし、傷つき、それを創作の糧にしながら、激動の人生を駆け抜けていく葉野珠がいつか咲き誇る日を、今は心待ちにしたいと思う。

 


RELEASE INFORMATION
YOASOBI “咲き誇れ”

リリース日:2026年10月14日(水)配信
作詞・作曲・編曲:Ayase
歌唱:ikura
配信:https://orcd.co/sakihokore
原作小説:「桜(はな)の命は不滅なり」(綿矢りさ著) 

 

TV INFORMATION
ブラッサム
作:櫻井剛、小松與志子
音楽:fox capture plan
主題歌:YOASOBI “咲き誇れ”
語り:三條雅幸アナウンサー(NHK大阪放送局)
出演:石橋静河、加賀まりこ、松たか子、国仲涼子、渡部篤郎/染谷将太/井浦新、遠藤憲一/尾野真千子 ほか
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
プロデューサー:大野陽平
演出:盆子原誠、中泉慧、佐藤玲衣、田中陽児、小林直毅、野田雄介

連続テレビ小説「ブラッサム」 主題歌ができるまで
放送予定:2026年11月3日(火)午前8時15分~8時45分(総合テレビ・全国放送) 
出演:石橋静河、YOASOBI
VTR出演(50音順):UDA、奥山大史、瀧本幹也、辻󠄀本知彦、fox capture plan、綿矢りさ
ナレーション:国仲涼子
※NHK ONEで同時・見逃し配信(放送後1週間)があります

「ブラッサム」公式サイト:https://www.nhk.jp/g/ts/R769G71XJ6/