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デュメイとインバル、ブラームス“ヴァイオリン協奏曲”の横綱相撲

 フランスのヴァイオリニストで指揮者、オーギュスタン・デュメイは2026年1月に喜寿(77歳)を祝った。シゲティ、シェリング、グリュミオーら20世紀の巨匠の薫陶を受け、コンクールを経ずに一線に躍り出た名手は1970年代からレコーディングでも世界市場に進出、ヴァイオリンの主要レパートリーは全部録音したと思われる中、ブラームスの“協奏曲ニ長調”を欠いていたのは七不思議に等しかった。同じ作曲家の“ヴァイオリンとピアノのためのソナタ”全3曲は1991年にピリス(DG)、2014年にロルティ(Onyx)と2度も録音しているのに……。長年の渇を癒すかのように現れた協奏曲の新譜は古巣のワーナー(旧EMI)に戻り、なんと長老エリアフ・インバル指揮のフィルハーモニア管弦楽団が共演している(2025年1月にロンドンでセッション録音)。

AUGUSTIN DUMAY 『ブラームス:ヴァイオリン協奏曲、ホルン三重奏曲』 Warner Classics/Erato(2026)

 管弦楽冒頭からいきなりインバルの巨匠芸が全開、デュメイのソロの入りのテンションはいやが上にもマックスだ。以後は強い確信とともにヴィルトゥオーゾ(名手)の至芸を繰り広げ、フレーズは自在に伸縮、静かな箇所ではゆっくり目に、しみじみと感情をこめる。

 インバルもキャリア初期の〈協奏曲指揮に長けた鬼才〉に立ち返り、絶妙の呼吸で合わせつつ、濃い情感をデュメイと共有する。第1楽章のカデンツァはヨアヒム。切り込みの鋭さから繊細な弱音の囁きまで、自由自在の語りくちだ。第2楽章はたっぷりと歌う半面、スリムな美音を生かして野暮ったくさせない。第3楽章では超個性的なフレージングも現れるが、大袈裟な振る舞いは避け、むしろ室内楽的な質感を重視している。全てにおいてソリストと指揮者が噛み合い、横綱相撲の味わいがある。

 カップリングは “ホルン三重奏曲”で25年10月、ベルリンのセッション。ダヴィド・ゲリエ(ホルン)、フランク・ブラレイ(ピアノ)はデュメイが広げる大きな〈傘〉の下で伸び伸びと奏で、息の合ったアンサンブルで第4楽章まで一気に聴かせる。