70年代初頭、チック・コリア、アンソニー・ブラクストンたちと並んでヴィトウスも混沌としたポスト・コルトレーンの時代を進んでいた。そして、その当時の先見性、前衛性を未だに崩さないのは見事だ。先に発売されたECM盤のライヴ・ヴァージョンという説明では表現しきれない、どちらにも転んでしまう危うい世界が展開する。2010年代にこれほどの不確実感を送ってくるミュージシャンは少ない。40年間のジャズの歩みを思い起こさせてくれる。ライヴだけに演奏そのものは、不満が残る方もいるかもしれないが、その不満がジャズの源泉かもしれない。雑誌のコラボ企画として注目だ。