Photo of Robert Frank by Lisa Rinzler, copyright Assemblage Films LLC

音楽ファンにとっても見逃せない! ハル・ウィルナーがプロデュースする映像作家のドキュメンタリー

 全米各地を回り、アメリカ文明の裏側(影)を写し出した『The Americans』(58年)で、20世紀の写真史に金字塔を打ち立てたロバート・フランク。『Dont' Blink ロバート・フランクの写した時代』は、今年93歳になるこの映像作家の軌跡を追ったドキュメンタリーだ。監督のローラ・イスラエルは、90年代をロバートの映像作品の編集者として過ごした。それだけに『Don't Blink』には、この“生きる伝説”の素顔も写し出されていて、すこぶる面白い。

 「ロバートにこの映画の話を最初に持ちかけた時は、断られました。ところが、翌日になったら、“来週から始めよう”と彼の方から言ってきました。映画を観てお分かりのようにロバートは偏屈な人ですが(笑)、私は彼の毒を含んだユーモアが大好きです。撮影を進めるうちに、彼はやっとここにきて、自分の人生や作品のことを語っておこうと思うようになったのだなと私は感じました。この映画は、まさにこのタイミングでしか作れなかったのです」

Photo of Robert Frank by Lisa Rinzler, copyright Assemblage Films LLC

 『Don't Blink』には、驚くべき逸話がたくさん含まれている。たとえばロバートは『The Americans』の版権を信頼していた弁護士に奪われ、それを長い年月をかけてやっと取り戻したという。

 「ロバートのような著名な写真家でさえ、こんな目に遭うということを若いアーティストたちに知らせるためにも、あえてこの話は入れておくべきだと思いました。ロバートが写真から映画に転向したことにも、この事実は影響を及ぼしたと私は思ってます。ロバートは、元の部屋(写真)から別の部屋(映画)に行って、しばらくしてから戻ってきた。でも元の部屋は、以前とは違う。このようにロバートの生き様と彼の作品は、切っても切り離せないものです」

 音楽プロデューサーは、ロバートの初の長編映画『キャンディ・マウンテン』(87年)にも関わったハル・ウィルナー。彼の尽力もあって、『Don't Blink』は音楽ファンにも見逃せない作品に仕上がっている。

Photo of Robert Frank and June Leaf by Robert Frank, copyright Robert Frank

 「ロバートの写真が訴えかけてくるものに負けない音楽を付けると、最初から決めていました。だから50年代のニューヨークのシーンには、あえてヴェルヴェット・アンダーグラウンドの曲を使いました」 

 ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは、60年代に結成された。ただし、ロバートが55~56年にニューヨークで撮影した3人のゲイと思しき人々の写真がある。この写真は、ヴェルヴェッツの音世界そのものだ。

 「その通りですね。私があえてヴェルヴェット・アンダーグラウンドの音楽を使ったのは、彼らの音楽は50年代のニューヨークの荒々しさや格好良さを表現していると思ったからです。“この映画はまず音楽が素晴らしい。僕の写真をより生き生きとしたものにしてくれている”とロバートも褒めてくれました」

 


映画『Don’t Blink ロバート・フランクの写した時代』
監督:ローラ・イスラエル
音楽プロデューサー:ハル・ウィルナー
撮影:リサ・リンズラー/エド・ラックマン
編集:アレックス・ビンガム
参加アーティスト:ヴェルヴェット・アンダーグラウンド/ローリング・ストーンズ/トム・ウェイツ/パティ・スミス/ヨ・ラ・テンゴ/ミイコンズ/ニュー・オーダー/チャールズ・ミンガス/ボブ・ディラン/ザ・キルズ/ナタリー・マクスター/ジョセフ・アーサー/ジョニー・サンダース/ザ・ホワイト・ストライプス
配給:テレビマンユニオン (2015年 アメリカ・フランス 82分)
◎4/29(土・祝)よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー!
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