男女混成の5人組、LILI LIMITが昨年10月に発表したファースト・アルバム『a.k.a』に続く新EP『LAST SUPPER EP』を完成させた。日本のポスト・ロック譲りの構築的なバンド・アンサンブルと、オーガニックなエレクトロニクスの融合は、アートワークへのこだわりも含めて非常にアーティスティックでありながら、〈自分たちの土俵はあくまでJ-Pop〉とするスタンスは、ある意味今の若手バンドらしい。しかし、まるでエッセイストのように日常の風景を巧みに切り取る牧野純平(ヴォーカル)の歌詞と、プロデューサー/エンジニア気質の強い土器大洋(ギター)のサウンドメイキングを軸とした楽曲からは、その他大勢のバンドとは明らかに一線を画す、新たなポピュラリティーの萌芽が確かに感じられる。

『LAST SUPPER EP』は、〈衣食住〉をコンセプトとしたEP3部作の〈食〉にあたる2作目。よりメンバー1人1人の顔が見える曲作りへと移行し、柏井日向、土岐彩加、葛西敏彦という3人の個性的なエンジニアを迎えて制作された本作は、バンドの持つポテンシャルの大きさを改めて示す一枚となったと言えるだろう。〈バンドがネクスト・ステージに行くことで、『a.k.a』の存在をもっと多くの人に知ってもらいたい〉という牧野に、LILI LIMITの現在地を訊いた。

LILI LIMIT LAST SUPPER EP キューン(2017)

 

道端でおじさんが歌っている鼻歌に見た〈アートの本質〉

――LILI LIMITのベーシックには〈バンドの生演奏とエレクトロニクスのオーガニックな融合〉があると思うのですが、その音楽性はどのように構築されたものなのでしょうか?

「メンバーが5人になったときに、〈シンセを入れたらどうか?〉という話になって、当時で言うと、ミューとかパッション・ピットとかの影響を受けつつ、自然な流れでそこが自分たちのアイデンティティーになっていった感じですね」

――ルーツとしては、ネイキッド・アンド・フェイマスの名前もよく挙げていますよね。

「そうですね。バンド・サウンドからどんどんエレクトロ寄りになっていく流れも含めて、ネイキッドにはすごく影響を受けていると思います。もともとはバンド・サウンドがメインだったから、ミューのタイトルがめちゃくちゃ長いアルバム(『No More Stories…』※)あたりの影響が大きかったんですけど、今はネイキッドの作品ごとにエレクトロ要素が増えていく感じに影響を受けていて、去年リリースしたアルバム(『Simple Forms』)もすごくよかったですね」

※ミューの2009年作。正式名要は『No More Stories Are Told Today, I'm Sorry They Washed Away // No More Stories, The World Is Grey, I'm Tired, Let's Wash Away』

ネイキッド&フェイマスの2016年作『Simple Forms』収録曲“Laid Low”
 

――でも、LILI LIMITはネイキッドみたいなスケール感のあるサウンドとはまたちょっと違いますよね。

「そこが難しいところというか、僕らはJ-RockというよりもJ-Popでやっていきたいと思っているバンドなので、スケール感が出ちゃうと、洋楽的なサウンドに走っちゃうと思うんです。そこのバランスは常に考えているんですけど、この先もっと僕らのことを認知してくれる人が増えたら、(スケールの大きなサウンドも)やっていきたいとは思っています」

――ホールやアリーナ、フェスのメイン・ステージとかに立つようになったら、それに見合うスケール感のサウンドもやってみたいと。

「自分たちにはそっちのほうが似合うんじゃないかとも思うんです。ただ、今はどちらかというと室内で、天井低目みたいなところでやることが多くて、そういう規模感でありながら、ちょっと先が見えるような音を目指していますね」

――では、ここ一年くらいで影響を受けたアーティストはいますか?

「ホントに最近の話ですけど、アルト・ジェイの新作(『Relaxer』)が良くて(笑)。もともと彼らのクリエイティヴな部分には、アートワークや映像も含めて影響を受けていたんですけど、今後はより影響されそうな気がしています。彼らはコンセプトを考えるのにすごく時間をかけているんじゃないかな。日本のアーティストは〈わかりやすくしないと伝わらないんじゃないか〉という意識が強い気がするけれど、自分たちはそうではなく、アルト・ジェイみたいにちゃんとしたコンセプトを基にした活動をしたいと思っています。あとは写真家の(ウォルフガング・)ティルマンスが音楽活動をし出していて、その音もカッコよかった……」

アルト・ジェイの2017年作『Relaxer収録曲』“3WW”
ウォルフガング・ティルマンスの2016年のシングル–“Make It Up As You Go Along”
 

――海外への憧れがありつつ、それをいかにJ-Popのシーンに落とし込んで活動するのかを常に考えていると。

「そうですね。でも、メジャー・デビューのタイミングあたりから、音楽を聴く量が減ったんです」

――それは意図的に?

「ですね。本質が見えにくくなっちゃうんじゃないかと思って。そのきっかけが、これ信じてもらえるかわかんないですけど、道端でおじさんが鼻歌を歌っていて、その鼻歌がめちゃくちゃ良かったんですよ。で、〈これが音楽の本質なんじゃないか〉と思ったんです。いろんなものを聴いたあとに出てくるものじゃなくて、鼻歌みたいに自然に出てくるものこそが自己表現であり、アートに繋がるんじゃないかって。なので、それからは外からの影響を受けるよりも、より自分を見つめ直すようになったんです」

――メジャー・デビューまではLILI LIMITというバンドの色を確立するためにもいろいろ聴いていたけど、今は自分の内側を見つめ直すフェイズに来ていると。

「ある程度知識がないと作れない音楽が評価されるのもわかるんですけど、カウンターというか、そうじゃない人が作る音楽があってもいいんじゃないかと思ったんですよね」

――昨年の10月に発表されたファースト・アルバム『a.k.a』を経て、今回のEPはどのようなコンセプトで制作に向かったのでしょうか?

「『a.k.a』は個人的にすごくいいアルバムができたと思っていて、自分の評価はめちゃめちゃ高いんですけど、まだ世の中に浸透させることができてないなと思っていて。そんななかで、スタッフも含めたチームで〈来年どうしよう?〉という話をしたときに、最近は主に土器が曲を作ることになっていたんですけど、メンバー全員が曲を作ってみようという話になってから、みんなで1~2か月で40曲くらい作り、そのなかから選ばれたのが今回の4曲なんです。一回メンバー全員の個性を知ってもらって、その先で、『a.k.a』という素晴らしいアルバムがあったと知ってもらえるような、そのきっかけになるEPを作りたいと思って」

『a.k.a』収録曲“A Short Film”
 

――大量の曲の中から、どのように収録曲を選んだんですか?

「表題曲に関しては、僕は客観的な視点や意見も含めて決めるべきだと思っているので、みんなで話し合ってまずはそれを決めました。あと“LIKE A HEPBURN”は4月に配信でリリースしようという話があったので、その2曲が先に決まっていて、あとはバランスを見ながら、3、4曲目を選んだ感じです」

――表題曲の“LAST SUPPER”は牧野くんの作曲で、さっき伝えてくれた鼻歌の話のように、自分の内側から出てくるものを大事に作られたわけですか?

「僕は今回全部で18曲くらい作って、毎日全然違う曲を作っているような感じだったんですけど、そのなかで、〈これいいかも〉と思ったやつをパソコンで具現化したという感じです。何もない状態でギターやパソコンと向き合って作ったとかではなく、感覚的な部分を信じて、ずっと頭の中で鳴っていたものを形にしたので、時間はかからなかったですね。作業は年末年始に実家でしたので、同郷の黒瀬(莉世/ベース)も呼んで、ベースやコーラスを入れてもらいながら形にしました」

――牧野くんって基本何を使って作曲をするんですか?

「基本はギターです。ギターのメイン・フレーズを決めて、それに対してどう鍵盤を入れるか、もしくはそのフレーズを鍵盤に任せるのかを考えています。僕、ギターめっちゃ好きだから、ギター発信のほうが、いい曲が生まれることが多い気がします。弾き語りでやってもいい曲がホントにいい曲だと思うから、一回ギター主導で全体を作ったものを、後から弾き語りで歌ってみたりもしますね」

――ちなみに、“LAST SUPPER”のベースって、ミュージック・ヴィデオだとエレベだけど……。

「(音源では)シンベです(笑)。もともとファンキーな感じだったんですけど、土器のアレンジとすり合わせるなかでエレクトロの要素をどのくらい入れるかを相談して、ドラムのパターンではなく、鍵盤の感じでその要素を出そうと思って」

――この曲のエンジニアは、the HIATUSやSHISHAMOなどの作品を手掛けてきた柏井日向さんですね。

「柏井さんのおかげでめっちゃいいものになったという手応えがあります。余談ですけど、シャムキャッツの新作(『Friends Again』)も柏井さんがやっていて、あのアルバムは写真も僕らと同じ伊丹(豪)さんが撮っているので、いろいろ被っているんですよね(笑)。伊丹さんファンだから、店頭でシャムキャッツと一緒に並んだらいいな」

――シャムキャッツ自体はもともと好きなんですか?

「はい、シャムキャッツやミツメはすごく好きです。夏目さんの歌詞は言葉の選び方や表現の仕方がすごいから、勉強になります」

シャムキャッツの2017年作『Friends Again』収録曲“Travel Agency”
 

 

めざすのは、〈わかりやすさ〉の背後に〈意味〉を匂わすポップ

――“LAST SUPPER”での柏井さんとの作業自体はどうでしたか?

「単純に、この曲のミックスを聴いたとき、〈ヤバッ〉って思いました。本質を見失わないうえで、感覚的にヤバイものを作りたかったんですけど、柏井さんのミックスを聴いた瞬間に、〈何も言うことねえな〉って。それが今回自分のなかで見えた答えというか、〈ここの音をもうちょっと下げてください〉とか、そういうシビアな作業をし過ぎると、リスナーから離れてしまうと思ったんですよね。柏井さんとは感覚的な部分を共有できて、おかげでいいものになったと思います」

――“LAST SUPPER”の歌詞のアイデアはどこから出てきたものなのでしょうか?

「今回のEPは〈食〉というコンセプトがあったんです。『LIVING ROOM EP』が〈住〉だったから、EP3部作で〈衣食住〉を揃えられたらなって」

――だから“LAST SUPPER”は「最後の晩餐」、“LIKE A HEPBURN”は「ティファニーで朝食を」がモチーフになっていると。

「先に“LIKE A HEPBURN”を書いて、そのあとに“LAST SUPPER”を書きました。途中でも話したように、今はバンドとして次のステージに行って、『a.k.a』をより多くの人に広める作業をしなきゃと思っているんですけど、変わっていくことに対しての恐怖心もすごくあって、純粋な部分がなくなっていくことにすごく怯えていたんです。なので、そういう純粋さと後々再会できたらいいなっていう、この曲はそんな気持ちで書きました。バンドが次のステージに向かうことと、昔の自分に出会うことって、矛盾しているんだけど、そういう人間らしい矛盾も含めて書けたらなって」

――それを実際に歌詞にすることで、変化することへの決意にもなりましたか?

「そうですね。この歌詞を書くときは、昔と今を照らし合わせながら書いたんですけど、昔はホントにただ〈やりたいこと〉ばっかりやっていたんですよね。でも、それが上手くいったり、いかなかったりするなかで、この歌詞を書くことで〈やらないといけないこと〉がより見えてきた気がします。自分がまた新たなステージに行くきっかけにもなったと思うので、5年後か、あるいは10年後か、もし自分が音楽をやらなくなっていたとしても、この曲はこれから先もきっと聴くんじゃないかな」

――一方、“LIKE A HEPBURN”と3曲目の“ERAION”は土器くんの作曲※ですね。

※作詞はいずれも牧野

「“LIKE A HEPBURN”はカジュアルなものというテーマがあったんですけど、4月に先行で配信リリースするから、ある意味表題曲に近いものなので、ちゃんとメッセージ性も入れたいと思って、歌詞はそのバランスを考えながら書きました。アレンジに関しては、メンバーみんなで詰めたんですけど、最初はもっと(曲の尺が)長かったから、ちょっと伝わりにくいんじゃないかと思って、マイナスの作業をやった感じです。個人的な感覚としては、“Kitchen”みたいなカジュアルさをめざしていたので、ドラムのパターンだったり、ギターやベースだったりでエレクトロっぽさを出そうと思って、そのあたりのバランスをわかってくれるエンジニアの土岐(彩香)※さんを含めて方向性を考えました。ライヴを想定した曲作りでもあったから、そのあたりも考えていたかな」

※サカナクションやCharaの作品などに参加

『a.k.a』収録曲“Kitchen”
 

――3曲目の“ERAION”は土器くんのプロデューサー/エンジニア気質が発揮された一曲になっていますね。

「今回、土器がバイノーラル・マイクを買ったんですよ。なので、ナイフとフォークのカシャカシャっていう音を採取して入れるとか、すごく実験的なことをやっています。エンジニアは(トクマルシューゴやD.A.N.の作品で知られる)葛西(敏彦)さんだったので、それでおもしろくなった部分もすごくありますね」

――今回のEPには3人のエンジニアさんが参加しているので、それぞれ聴き比べる楽しさもありますよね。葛西さんとの作業はどうでしたか?

「ミックスの作業とかエグかったです。土器が〈ここはちょっと……〉っていう部分を調整しつつ、葛西さんにも感覚的に自由にやっていただいたので、ワクワクしました」

――“ERAION”というタイトルの意味は?

「これは〈時代(=ERA)〉と〈ライオン〉を組み合わせた造語です。ライオンって、狩りをする生きものじゃないですか? 歌詞に出てくる〈盲目なライオン〉というのは、狩りができなくなったライオンのことで、今の社会で才能のある人が叩かれていることとリンクさせていて。でも、本当に才能がある人は自分の力で現状を抜け出せると思うから、最終的に〈盲目なライオンはまた叫んだ〉と締めているんです」

――ここまでの話を聞いてはっきりしたけど、最後の“STREET VIEW”は最初の3曲の内容が全部詰まった、コンセプチュアルな歌詞になっているわけですね。

「そうです。この曲で伏線を回収しています(笑)。EPとして何を言いたいかということと、あと『LIVING ROOM EP』と繋がっているんだということも言いたくて」

――この曲は作曲のクレジットがLILI LIMITになっていて、1人1人が作曲をするなかで、バンド全体でも作ってみようとなったわけですか?

「はい、セッションで作る曲があってもいいかなと思って、初めてこういう作り方をしました。いろいろやっていくなかで、ヒップホップ要素を取り入れたりもしたんですけど、もうちょっと肉体的というか、バンド感を出したいと思ったんですね。なので、それまで2、3曲作ったのを一回ナシにして、改めて志水(美日/Key)がピアノのコードを決めて、そこに楽器を乗せて、僕がメロディーを付けました。それぞれが影響を受けているアーティストがあらためて見えて、曲の作り方としていいなと思いましたね。今までは僕か土器のどっちかの色が出た曲しかなかったけど、そうじゃない部分も見えるEPになったんじゃないかと思います」

――今回は結果的に牧野くんと土器くんの曲が収録されたけど、今後は他のメンバーが作曲した曲も入ってくるかもしれないわけですね。終わりにもうひとつだけ訊くと、最初に〈日本はコンセプトをわかりやすくしないと伝わらない〉という話もありましたが、一面的な〈わかりやすさ〉にどう対抗するかって、今音楽だけじゃなく芸術全般にとってとても重要なことだと思うんですね。なので、その部分についてどう考えているのかをお伺いしたいです。

「わかりやすいものって、わかりやすくなればなるほど、わかりにくくなると思うんです。広告とかについて、すごくそう思うんですけど、ただ流行っているものをやってしまうと、〈あれのパクリか〉で終わってしまう。確かに、今って〈わかりやすい〉ものが喜ばれて、〈わかりにくい〉に辿り着く人が少ないと思うんですけど、〈この人はもっと奥深く考えているのかな?〉と思わせる、そういう匂いのある〈わかりやすさ〉を僕らが提示できたら、より音楽にも耳を傾けてくれるんじゃないかなと思うんです」

――ただ海外の流行りを真似するのではなく、あくまでJ-Popであり、間口が広いんだけど、でもちゃんと聴くと奥深い。LILI LIMITがそこを担ってくれることを期待しています。

「現代アートは、本質をめちゃめちゃ考えたうえで作られているものだから、意味がわからないものってそもそもないはずなんですよね。そこを考えない人からしたら〈意味がわからない〉で終わっちゃうのかもしれないけど、それこそインタビューを読むことで、〈こういう意味があったんだ〉とわかったときに僕はすごく喜びを感じるし、自分たちもそういう曲作りをしたい。ちゃんと意味があるものを作って、そこにちょっとしたわかりやすさを入れて、もうちょっと深くまで見てもらう。そういう流れというか、道を作ることができたらな、と思いますね」

 


Live Information
〈LILI LIMIT presents Archive〉

2017年9月2日(土)宮城・仙台enn 2nd
2017年9月8日(金)愛知 ・名古屋ell.FITS ALL
2017年9月10日(日)福岡DRUM SON
2017年9月16日(土)東京・渋谷 WWWX
2017年9月18日(月・祝)大阪・心斎橋Music Club JANUS
2017年10月1日(日)山口LIVE rise SHUNAN