遺伝子レヴェルでの影響源をプロデューサーに迎えたニュー・シングル。新たなトライに満ちた2曲から浮かび上がるのは、自身では気付いていなかったバンドの可能性だ!
「自分たちが知らない自分たちの可能性を知りたかった」(風弥~Kazami~、ドラムス/ピアノ)と、かねてより新たな制作方法にトライすることを考えていたDaizyStripper。その方法のひとつとして、彼らはメジャーで2枚目となるニュー・シングル“4GET ME NOT”で初めてサウンド・プロデューサーを招聘した。全員一致で決まったその人物は、L'Arc-en-CielのギタリストのKenである。
「なおとまゆはKenさんがキッカケでギターを始めたし、僕もKenさんのアレンジをものすごく分析していたから、このバンドはKenさんの影響を遺伝子レヴェルで受けていて。そういうバンドがこれまで積み上げてきたものにKenさん節が入ることでもっとカッコイイものを作れるんじゃないか、という根拠のある直感からプロデュースをお願いしました」(風弥)。
楽曲を制作する前、Kenは彼らのライヴへ足を運んで感じたことを話し、メンバーたちはこの10年間の活動と、これからどう活動していきたいのかをじっくりと話し合ったそうだ。
「日本のロック・シーンの頂点にずっといる方なのに、俺らといるときは高校の2個上の先輩みたいな感じで話してくださるんですよ。俺らのスタッフに対しても、気を遣わないように常に考えてくださっていて。ギタリストとしてはもちろん、そこにもすごく感動しました。すごい人だなって」(なお)。
そうして曲作りへ突入。その段階でKenから出てきた言葉はこんなものだった――〈今後、世の中に5曲しか残せません。どんな曲を書きますか?〉。
「でも、僕らの悪い癖が出ちゃって、2曲の枠に30曲ぐらい持っていったんです(苦笑)。そこからまず5曲ずつセレクトしたんですけど、自分たちの選んだ5曲と、Kenさんの選んだ5曲が1曲も被ってなかったんですよ。〈これだ!〉と思いました。これこそ自分たちが知らない自分たちの可能性だ!って」(風弥)。
今回収録している2曲は、その〈自分たちが知らない自分たちの可能性〉――Kenがセレクトした5曲から選抜されたものだ。“4GET ME NOT”は、幻想的かつシリアスな空気に満ちたミディアム・ナンバー。イントロをはじめ、各所で現れる緊張感のあるストリングスが、〈あと5曲しか残すことのできない状況で、世間にどうインパクトを与えるか〉を考えて風弥が導き出した回答=「一度聴いたら絶対に忘れないモチーフ」を体現している。
「そのワンモチーフだけで最後までいく曲を作ったんですけど、それだけじゃなくて、AメロもBメロもサビも全部同じコード進行にしようという話になって。今までやってなかったことだからかなり悩んだんですけど、実際に作ってみると、ひとつひとつの音の意味とか、重要さがすごくわかりました」(風弥)。
「ギターも、初心に立ち返って鳴らし方から教えてもらったんですけど、どんどん自分の音が良くなっていくのがわかるんですよ。長いこと一緒にやっているエンジニアさんも、〈今まででいちばん良い音を鳴らしてる〉って言ってくれて」(なお)。
また、歌詞には深い喪失感のなかで離れてしまった相手を思う言葉が綴られているが、夕霧(ヴォーカル)としては「ラグジュアリーで煌びやかな景色」をイメージしたと話す。
「景色が見えなかったらボツだし、見えすぎてもボツっていう、その絶妙なラインがすごく難しくて。これまでの歌詞のなかで、いちばん時間がかかりました。そのなかで、Kenさんはいろんなことを提案してくださったんですけど、〈僕はこう思うけど、これが正解ではないからね〉って何度も言ってくださるんですよ。そうやってやり取りを重ねていくのは楽しかったし、確実にステップアップできたと思います」(夕霧)。
「自分たちの固定概念を壊して、いろんな道を作ってもらえた感覚がありますね。Kenさんとのやり取りを話すと本が一冊書けそうなぐらい、本当に濃密な時間でした」(Rei、ベース)。
もう一曲の“ラビットファンタジーパレード”は、「キャッチーでありながら実はマニアック」(風弥)というKen特有のコード進行を駆使したもの。オーケストラルな意匠でセクションごとに大きく曲調が変わっていく展開は、Reiいわく「まさに一冊の絵本」。バンドのこれまでの歩みのなかで生まれた喜怒哀楽を音で表現している。
「オーケストラとの兼ね合いを考えて、ギターをほとんど入れなかったんですよ。見せ場のギター・ソロもしっかり入り込んで弾くんだけど、音色は普通ならソロで使うものではなく、曲の雰囲気に合わせたものにしたりして。そうやって曲全体を広く見て判断することを学べたのはすごく大きかったです」(まゆ)。
メンバー全員が嬉々としてKenから受けた刺激や学びの大きさを話してくれた今回の取材。彼らはすでに新たな曲を書いているとのことだが、さらなる進化への第一歩として、まずはこの“4GET ME NOT”を堪能したい。