初めは〈坂本龍一氏がお気に入りのレストランの為に制作したプレイリストに選出〉という紹介文に吸い寄せられたが、聴いてみたらそんな情報をすっかり忘れてしまう暖かいピアノの音色にうっとり。2016年に配信限定でリリースされた本作(今回初CD化)は、エイチ・ハントことハリー・ハントがタイトル通り父親のために演奏したピアノ・ソロ作品だ。気負いがなく、自由でリラックスした素朴な演奏は、彼の人柄を映し出すような朴訥とした味わいに加え、鍵盤を弾く音やハリーの息遣い、周りの物音まで収められることで、あたかも目の前で演奏しているような錯覚を起こし、グッと距離感を縮めて懐に入ってくる。