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ブルース・スプリングスティーンの音楽が人生を変えた
80年代のイギリスを舞台に実話をもとにした青春グラフィティ

 人の数だけ運命の出会いがある。たった一曲の音楽が人生を変えてしまう、ということは、音楽好きなら誰もが経験したことがあるだろう。「カセットテープ・ダイアリーズ」は、若者達がカセットテープをウォークマンに入れて聴いていた80年代のイギリスを舞台にした運命の出会いの物語だ。1987年、イギリスの街、ルートンで暮らすパキスタン系移民の高校生、ジャベドは詩とロックが大好き。近所に住む幼馴染みの親友、マットがやっているバンドに歌詞を提供していが、社会的な問題を盛り込んだ歌詞は、シンセ・ポップに夢中なマットからはあまり評判がよくない。ラヴソングを書くために恋人を作れとマットに言われるが、ジャベドにはそんな自信はなかった。なにしろ、学校でアジア系移民の生徒は少なく、日常的に人種差別の嫌がらせも受けていた。一方、しつけの厳しい父親があれこれ指図する家庭にも居場所はなかった。父親はジャベドの文学に対する興味に理解を示さず、ユダヤ人を見習って金を稼げるようになれと頭ごなしに命令する。息が詰まるような日々を送るなか、もうひとりの移民の生徒、ループスから「この腐った世界で真実に導く男だ」とブルース・スプリングスティーンのカセットテープを渡される。それがジャベドにとって運命の出会いだった。