(左から)釜瀬雄也、松田祐伴、松坂勇介
 

結成から実に7年。松田祐伴率いるCANVASがとうとうファースト・アルバム『Naissance』を完成させた。ベーシストとしてVeni Vidi Viciousなどもサポートしてきた松田をメイン・ソングライターに、2013年より活動をスタート。その後のメンバー脱退を経て、2017年にQUATTROのギタリストとして知られる松坂勇介が加わり、さらにはseasunsaltのギターを務める釜瀬雄也も正式加入。この3人を軸に、彼らを取り巻く名うての演奏家たちがサポートする形で、これまで音源化を待ち望まれていた楽曲が、ついに日の目を見ることになったのだ。

CANVASが鳴らすのは、たとえば初期ストロークスにも通じるような、極めてシンプルなロックンロール、ギター・ポップだ。楽曲によっては仄かに鳴っているシンセなど、ニューウェイヴ的な意匠も施されてはいるものの、総体としては非常にオーセンティックなギター・ミュージックであり、そのクリーントーンを基調とした手練なバンド・アンサンブルには、思わず舌を巻かずにいられない。待望のデビュー作にして、国内インディー・シーンにおけるクラシックとなりそうな風格を、この『Naissance』という作品はすでに放っている。

そんな『Naissance』のリリースにあてて、今回は松田と松坂の2人にインタビューを実施。結成から念願のリリースにいたるまでの変遷と、これからのCANVASについて、たっぷりと語ってもらった。

CANVAS 『Naissance』 FunLandRyCreation(2020)

 

ストロークス、ニュー・オーダー、スミス

――CANVAS結成は2013年とのことで。当初はどのようなサウンドを志向していたのですか?

松田祐伴(ヴォーカル/ギター)「やりたいことは今とあまり変わってなくて、当初から音数少なめでシンプルなサウンドにしたいなと思ってました。ただ、アレンジがブレがちだったというか。〈こういうアルバムが作りたい〉みたいなイメージはだいぶ前から浮かんでたんですけど、そのイメージを当時のメンバーにうまく伝えられなくて〈何がやりたいのか全然わからない〉と言われることもしばしばありました。今は松坂と僕がツーカーな感じなので、アレンジの大部分は彼に任せてます」

――これまでの在籍メンバーにはなかなか伝わらなかったイメージが、松坂さんには伝わったと。

松坂勇介(ギター)「相性が良かったんだと思います。プリプロの段階でアレンジを詰めるときも、こっちがやりたいようにやれば〈いいね〉と言ってもらえるので、僕もストレスなくやれてますね」

――何かしら特定のアーティストや楽曲をリファレンスとすることはあまりないんですか?

松田「もちろんそういうのも多少はありますし、松坂と僕は聴いてる音楽がわりと近いので、そこも大きかったと思います。たとえば今回のアルバムに入ってる“Somewhere”のギターなんかは、ちょっとスミスを意識してたり」

松坂「“Somewhere”って、たしか仮タイトルが〈ニュー・オーダー〉じゃなかったっけ?」

松田「ああ、そうだった!」

松坂「ニュー・オーダーみたいな雰囲気の曲にしたいねという話からはじまって、結局はまったく違うものになったっていう(笑)」

『Naissance』収録曲“Somewhere”
 

――お2人が共有しているフェイヴァリットというと、たとえばどういうバンドが挙げられますか?

松田「まずひとつ挙げるとしたら、やっぱりストロークスかな。あとはドラム・パターンとかでフェニックスを意識したこともありました」

松坂「ギターに関していうと、やっぱりスミスとか?」

松田「そうだね。今作にはストリングスを入れた曲もあるんですけど、そのあたりはホイットニーとかの要素もあるかもしれない」