〈好きなものは好きと言う〉をテーマに、ポップでやんちゃでカラフルなラップを通して日々の徒然を吹き飛ばす、〈オールド〉かつ〈ニュー〉な感覚を備えたユニット、おーるどにゅーすぺーぱー(以下、るどにゅ)。RHYMEBERRY解散を経てSONOTA名義でソロ活動を行ってきた〈そのた〉と、シンガー・ソングライターの〈えりい〉から成る、2020年に結成されたばかりのフレッシュな2MCだ。

  「もともとソロ活動と並行してヒップホップのクルー的な活動もやりたくて、仲間を探していたときに、えりいが出演しているライヴをたまたま観たら、歌が上手いのはもちろんMCがめちゃくちゃおもしろくて、ひときわ目立っていたんです(笑)。それで一緒にやりたいなと思って、すぐに声をかけました」(そのた)。

 「私はずっと一人で弾き語りをやっていたんですけど、少しモチベーションが下がっていた時期でもあったので、声をかけてもらえたことがすごく嬉しくて。ユニットを組むことも自分にとってプラスになると思ったし、(そのたが)可愛かったので、誘われた瞬間に〈やります!〉って返事しました(笑)」(えりい)。

 清水翔太をきっかけにR&Bやヒップホップにハマり、tofubeatsやPUNPEE、唾奇といった「ちょっとチルい感じ」の日本語ラップが特に好きだというそのた、もともとDREAMS COME TRUE好きな親の影響で「子どもの頃から吉田美和さんが神みたいな感じで育ってきました」と語るえりい。その互いの趣味と感性、そして二人の纏うふんわりした空気感が混ざり合ったのが、このたび完成した初ミニ・アルバム『スクーーープ!!』と言えるだろう。

おーるどにゅーすぺーぱー 『スクーーープ!!』 Doping!(2021)

 「これから新しいことが始まる、どんな未来が待ってるんだろう?っていうワクワクした気持ち」(そのた)を、上京してきた女の子の心情に重ねた“はじめまして東京”は、煌びやかなシンセ・トラックにギターが合わさる〈下北沢っぽさ〉をイメージしたというナンバー。メロウなエレクトロ・ハウス調の“OFF!”では、〈ねぇ、すべてやめちゃえばどう?〉というフックのキャッチーな歌メロに加え、仕事や学校などの面倒事から全力で目を逸らす、可愛らしくも痛快なパンチラインの数々が耳を惹く。

 「〈一身上の都合で1000連休していいかな?〉とか、私たちの歌詞には普段は言わないようなぶっ飛んだ内容が多くて(笑)。世の中には〈がんばれ!〉っていう曲も多いですけど、私たちは〈逃げてもいいじゃん〉っていうスタンスなんです。私自身もありえないほどマイペースな人間なので」(そのた)。

 「私もめんどくさいことからはすぐ逃げたくなる派なんですけど(笑)、現実的には逃げられないからこそ〈逃げてもいい〉って歌で表現していて。誰かからそう言われることで気持ちが楽になることもあるし、この曲は元気づけてるわけじゃないけど……いや、元気づけてるのかな?」(えりい)。

 さらに「ひたすら〈宇宙に行ったらしたいことは?〉っていう話をしながら書きました(笑)」(えりい)と話す“宇宙征服計画”、チルなムードたっぷりにお風呂タイムを楽しむ“Bubble”、ライヴでの盛り上がりを意識したというハウシーな音楽讃歌“オトガナリダス”など、彼女たちの多彩なサウンドと自作のリリックに通底するのは、淀んだ日常を忘れさせてくれる妄想交じりの緩いエスケーピズム。相対的な価値観に捉われることなく、自分自身の〈好き〉という感情に従って生きるのが、るどにゅ流のスタイルなのだ。

 「こんなご時世なので気分が落ち込むことも多いと思うんですけど、散歩や買い物をしに外に出たときに、ふと聴いたらハッピーで明るい気持ちになれるような音楽をやっていきたいし、街で〈イマっぽい音楽って何?〉と聞かれた時にるどにゅの名前が挙がるようになりたいです」(そのた)。

 


おーるどにゅーすぺーぱー
えりい、そのた(写真左より)から成るラップ・ユニット。RHYMEBERRYの元メンバーでSONOTA名義でソロ活動してきたそのたらによって、2020年初頭に結成。韻ふめ!どーぷちゃんの主宰するDoping! Recordsに所属し、3月にプレ・デビューのパフォーマンスを行う。その後、10代から弾き語りシンガーとして活動してきたえりいが加入し、9月より正式に現体制での活動をスタート。ライヴ・パフォーマンスなどを経て、12月にファースト・シングル“はじめまして東京”を配信リリースして話題を集める。今年に入って、1月に“Bubble”を配信してMV公開。SONOTAのソロEP『indoor』に続き、このたびファースト・ミニ・アルバム『スクーーープ!!』(Doping!)をリリースしたばかり。