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インタビュー

どーぷちゃん『BLINDNESS』三者三様の表現が紡ぐ〈ドラマチック・ラップミュージック〉とは?

 「ヒップホップのトラックは基本ループで単調なものが多いですけど、私たちはJ-Popのアプローチでラップをやっているのでトラックにも展開がたくさんあるし、なおかつメンバー各自がラップ、ポエトリー・リーディング、歌を担当していて、それぞれのやり方で感情を表現するので、一曲聴いただけで一本の映画を観た気持ちになれる。なので〈ドラマチック・ラップミュージック〉というテーマを掲げています」(沫)。

 自身の活動コンセプトについてそう説明するのは、今年4月にユニット名を一新して再スタートした3人組、どーぷちゃん。メンバーは、以前からソロでラップ活動を行い、PUNPEEやtofubeats、ZORNをフェイヴァリットに挙げる〈いこ〉、ミュージカルや舞台などで歌のスキルを磨いてきた〈tsuki〉、不可思議/wonderboyや狐火の楽曲に刺激を受けてポエトリー・リーディングを始めたという〈沫〉。バックボーンも表現方法もバラバラな3人だが、だからこそそれらが合わさると濃密なエモーションが生まれるのだろう。日々の生活でふと感じるやるせない思い、誰もが抱く割り切れない感情を汲み取って、ドラマティックな音楽に昇華してみせる――そんなスタイルを確立したのが、今回のファースト・フル・アルバム『BLINDNESS』だ。

どーぷちゃん 『BLINDNESS』 Doping!(2021)

 「以前に自主で出していたミニ・アルバム『GLARE』が〈私に光を与えて〉というテーマだったので、今回は逆に〈光を失っていく〉という意味合いの『BLINDNESS』をタイトルにしました。全体としても最初から最後まで流れで聴くことでストーリーが浮かび上がるような作品にしています」(沫)。

 その言葉通り、アルバムは大きく3つのブロックに分けて構成。前半は〈撃たれちまう前に引き金をひくよ〉と前のめりに口撃を仕掛ける“Verbal bullet”で始まり、クリエイティヴに対するもがきを描いたフューチャー・ファンク“ディピクト”、彼女たちにとって初の恋愛ソング“Fizzy Fizzy”といった新曲で多彩さをアピールする。

 「“Verbal bullet”は言葉を弾丸に例えた曲で、私の中では現代のSNSをイメージしています。いまはたった一言で相手を傷つけることも簡単なので、それから身を守るには自分も強い言葉で言い返すのが大切だと思っていて。この曲のラップがいちばん力強いし、口が悪いんですよね(笑)」(いこ)。

 「“Fizzy Fizzy”は夏の終わりをイメージした曲で、炭酸のプシュッていう音を恋に落ちる音に例えていて。炭酸ってどんどん抜けていくじゃないですか。それを恋が沸き上がって枯れていくのになぞらえて表現した、甘酸っぱい曲です」(tsuki)。

 さらに旧名時代の代表曲“DOPEISM”をアレンジしたインスト曲“dope is”を経ての中盤には、『GLARE』などに収録の既発曲をリマスタリング補正して固めることでユニットのこれまでの歩みを提示。そこからの終盤3曲はドラマ要素がより濃くなる。この世を去った友人に贈るために制作された“花の便り”は、〈ドラマチック・ラップミュージック〉というテーマが生まれる指針にもなった、再出発後に初めて作った曲だという。

 「毎年同じ時期に必ず咲く花が、忘れかけた頃に友人から届く便りっていうテーマの曲で。私が書いてる部分は全部実体験ですね。普段は絶対にこんなこと話さないですけど、でもそれをあえて曝け出して感情的にぶつけることで、共感してもらえたり、自分に重ねて没入してもらえるんじゃないかなと思って」(沫)。

 そして二胡の響きが哀愁を誘う“失明”では、あらゆる希望や未来に対して目を閉ざす、悲観的な心情を表現。配信版はこの曲で終幕を迎えるのだが、CDにはその後にネガポジ反転ヴァージョンとも言える鮮やかなエレクトロ・ポップ“ミラクルスコープ”を追加収録して、また別の結末を用意しているのが心憎い。

 「あまりにも終わりが暗すぎるので、真のエンディングとして作りました(笑)」(いこ)。

 「“失明”は何も見ようともしていなかったけど、この曲は逆に〈見ようと思えばいくらでも見えちゃうじゃん〉っていうことを書いてて。世界はそんなに悪くないよっていう終わり方をしているので、いまのこのご時世だからこそ聴いてほしいなって思いますね」(沫)。

 


どーぷちゃん
いこ、tsuki、沫の3人から成るフィメール・クルー。もともと韻ふめ!どーぷちゃん名義で活動をスタートし、2019年よりメンバー主導で活動する現在のトリオ編成となる。SNSを中心に投稿してきたカヴァー・コンテンツなどで注目を集め、2020年1月に自身のレーベルよりファーストEP『Doping!』をリリース。同年11月にセカンドEP『GLARE』を限定リリースし、ライヴ活動も積極的に展開していく。今年4月に〈ドラマチック・ラップミュージック〉をテーマに掲げて現名義へ改名。“stargaze”を皮切りに“NIGHT SURFER”“花の便り”とコンスタントな楽曲配信で話題を集めるなか、このたびファースト・フル・アルバム『BLINDNESS』(Doping!)をリリースしたばかり。

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