パレスチナ系イスラエル人の巨匠エリア・スレイマンの10年ぶりの新作。映画監督エリア・スリマンが新作映画の企画を売り込む為、ナザレからパリ、ニューヨークへと旅するロードムービー。過去作がパレスチナに世界の縮図を提示したならば、本作は世界をパレスチナの縮図として提示した、とはスレイマンの弁。この非常に〈政治的〉な映画は、一方で人や物が動くことを見る原初的な喜びにもあふれている。シンメトリーな画面構成を基調としたジャック・タチを彷彿とさせるコントの連なりでもあるのだ。中でもニューヨークの通行人全員が銃やバズーカ砲を携帯しているシュールな図が最高!