石の建物、萌える緑、色鮮やかな花々に囲まれ、鳥のさえずりも聞こえる中で奏でられる表情豊かなギターの調べ。観て聴いて、再生回数も大人気、魅力たっぷりの演奏動画を文字通り彷彿とさせてくれる。若きホイッティンガムがヨーロッパを旅するように束ねた19世紀のギター音楽から生まれる、めくるめくばかりのさまざまな風景やイメージの何と愉しく、快いことだろう。冒頭のタレガの銘品“アラビア風奇想曲”や“アルハンブラの思い出”はもう薄暮から夜へ向かう頃か。選曲がとてもよく、ゆるやかな時間の流れがアルバム全体に大きく息づいている。自分にとっての隠れた宝石を見つけるのも聴く者だけに許される喜びだ。