不運が重なり身一つとなったヒロインが1か月後には子持ちの裕福な医者と結婚。本作は、そんな〈シンデレラストーリー〉が脆くも崩れ去って思いもよらぬ結末を迎える〈家族は地獄〉系映画。ヒロインが抱く〈よき母親像〉というロールモデルが、その生真面目な性格ゆえ却ってヒロインを追い詰めていくのがミソで、そのヒロイン役を実生活でも 「異常なレベルの真面目さ」(渡部監督)の土屋太凰に演じさせるというキャスティングの妙(悪意)がすごい! 自主製作「かしこい狗は、吠えずに笑う」が話題となった渡部亮平の作家性がメジャー・フィールドでも通用することを証明したブラック・コメディの怪作だ。