「ウィーンに六段の調 戸田極子とブラームス」ブラームスの目前で箏を演奏した女性を綿密に描く評伝

萩谷由喜子 『ウィーンに六段の調 戸田極子とブラームス』 中央公論新 (2021)
2021.09.17

幸田姉妹や田中希代子、諏訪根自子など女性演奏家の評伝を多く執筆してきた萩谷由喜子さんの最新刊は戸田極子。彼女は生粋の音楽家ではない。岩倉具視の娘として生まれ最後の大垣藩主戸田氏共と結婚、駐墺特命全権公使に任命された夫とともにウィーンに赴任、ブラームスの目前で箏を演奏したという女性である。彼女と彼女の周辺の女性留学生を綿密な取材と考証で描いていくが資料が少ないブラームスとの邂逅はほんの一瞬である。楽譜を見ながら耳を傾けていたというブラームスがどう反応したか定かではないが晩年の枯淡とした作風に何らかの寄与があったのではないかと思いたい。

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