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インタビュー

Akiko Togo『SUN』ソウルフルな実力派シンガーソングライターが時代に向き合った新作を語る

 自然体で芯のある歌声を響かせるシンガー・ソングライター、Akiko Togoが前作から2年を経て届けたニュー・アルバムは、『SUN』という名の通り、聴く者を暖かな陽光で照らしてくれる。

 「アルバム・タイトルの〈SUN〉には、聴いてくださる方の心にあかりを灯せるようなものになったらいいなという想いが込めてあります。コロナ禍で世界中が徐々に暗くトーンダウンしていくなかで、少しずつこのタイトルに辿り着いたんです」。

Akiko Togo 『SUN』 Akiko Togo/Village Again(2021)

 レコーディングを始めた2020年の夏はアーティストに限らず人々が生活様式の変容を強いられていた時期。奄美大島に居を構える彼女はレコーディング環境のない離島を発ち、スタジオに缶詰めになって作業を進めなければならなかった。当初1週間の予定だった日程は最終的に40日にも及んだという。

 「曲はレコーディング前に用意していたんですが、期間中に予想していなかった曲が生まれてきたりしたこともあって、思いがけず長期間になっちゃいましたね」。

 じっくり自身の音楽と向き合ったレコーディングを終え、アルバム・リリースまでの1年間で4曲のシングルを順に配信。ブルージーなイントロとパワフルな歌唱が印象的な“Fallin’ in love again”、力強いソウル・ナンバー“Movin’ on”、英詞を織り交ぜたアップテンポな“Sunshine”、〈降り止まない雨はないのだから〉とメッセージを込めたアルバムのオープニング曲“あたらしい歌”といった先行カットを含む全11曲は実にヴァラエティーに富んでいる。その成果は、長年タッグを組むプロデューサーの前田和彦(Crystal Kay、清水翔太ほか)が彼女の魅力を最大限に引き出していることも大きいのだろう。

 「次から次へとインスピレーションが湧いてくるタイプじゃないので、ひとつのフレーズやアイデアを前田さんやスタッフとキャッチボールしながら徐々に膨らませて曲にしていくんです」。

 デビュー作『Home Sweet Home~ただいま~』(2013年)の頃と比べると格段に肩の力が抜け、より自然体で等身大の姿が露わになってきた、そんな印象の本作。本人もそこは自覚しているようで、自身の成長をこう表現する。

 「力を抜いてバットを振って、遠くに打球を飛ばすイメージですね。なぜ野球に例えたかはわからないんですけど(笑)」。

 持ち味である美しいピアノの調べとナイロン弦ギターの柔らかな響きが胸を打つ“Music”には、〈三月の雨〉という歌詞の一節からもわかるように、ある人物への特別な想いが込められているそうだ。

 「レコーディングの1年ほど前に大好きなジョアン・ジルベルトが他界されたり、レコーディング期間中に島の友人が亡くなってしまったこともあって、そうした方々に捧げた追悼の曲です」。

 アルバム後半には英語詞にチャレンジした“Hot”、スティーヴィー・ワンダーの名曲に着想を得た先述の“Sunshine”など、アップテンポな楽曲が並ぶ。

 「“Sunshine”はメロディーだけの原型が出来ていたものをライヴで披露しながらブラッシュアップして形作っていきました。もともとは全部日本語の歌詞を当てていたんですが、スタッフから英語詞も合うんじゃないかって言われて。ライヴではお客さんも一緒にリフの部分を歌ってもらいたいですね」。

 そして、ピアノの弾き語りで歌い上げる“Spring is here”と8分にも及ぶ壮大な“光”という聴き応えのあるバラード2曲でアルバムは幕を閉じる。

 「勢いで楽しく歌えるアップテンポな曲よりもバラードのほうが実は苦手なんです。静かな曲だとどうしても気持ちが入り過ぎてしまって、あとから聴いたら重くなっていることが多くて、今回も満足のいくまで何度か録り直しました」。

 こうした状況だからこそ人々の心に寄り添えるような彼女の音楽が必要とされている。本作リリース後には小さな会場に限ってのツアーで全国を回る予定だ。バンド編成でのセットも興味深いが、シンプルなピアノの弾き語りでこそ真価を発揮する力強い歌声をぜひ存分に味わってほしい。

 


PROFILE: Akiko Togo
81年生まれ、鹿児島は喜界島出身のシンガー・ソングライター。4歳の頃から教会で歌とピアノを習い、ジャズやソウルに親しんで育つ。2000年代に入ってから神戸を拠点にライヴ活動を本格化させ、東郷晶子として2013年にファースト・アルバム『Home Sweet Home ~ただいま~』をリリース。2016年より東京に拠点を移してシングル“月ノ銀貨”を発表し、以降も2017年の『Friends』、2019年のミニ・アルバム『Voices』とコンスタントに作品を重ねていく。2020年にはDJ Mitsu the Beatsの“Moon & Sun”に客演。今年に入って“Fallin’ in love again”“Movin’ on”などの先行配信曲がヒットし、このたびニュー・アルバム『SUN』(Akiko Togo/Village Again)をリリースしたばかり。

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