2021年3月29日に87年の生涯を閉じたピアニスト、遠山慶子さんの〈遺作〉と呼べるアルバムがリリース。〈草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル〉への最後の出演となった2019年8月のライブ録音でショパンの初期と後期のマズルカから13曲を演奏している(遠山さんの師であるコルトーの校訂楽譜を使用)。しなやかで清澄な佇まいの行間に宿る陰影、品格ある情感描出が光り、短い時間軸の1曲1曲の持つ音楽世界の奥行き、豊かさを伝える。とりわけ作品17-4、ラストの作品68-4の美の深淵は聴き手を揺さぶる。生々しくも耳に優しい音質で締め括りのみ拍手を入れた編集とともに作り手の真心を感じる。