密度の高い音色で旋律をたっぷりと歌う。これこそチェロに求められる音楽と思う。それはブラームス演奏に求められるものと合致する。クニャーゼフの演奏はこれらの点で大変理想的なもの。Mirareレーベルでの『チェロ・ソナタ集』の続編とも言える内容。加えて、クニャーゼフのライフワークのような、チェロ以外の器楽作品や歌をチェロに置き換えて奏でることが、“ヴィオラ・ソナタ”と歌曲“4つの厳粛な歌”の編曲演奏でも大成功だ。哀感たっぷりの晩年のブラームスの深い世界を味わうことができる。洗練された演奏技術や解釈による演奏が多い中、内面に沈み込む音楽は心からの感動をよび起こす。