ギタリスト、野村義男のライフワークであるウクレレのソロアルバム第3弾『Ukulele Slow Life 3』がリリースされた。ウクレレフリークであるヨッちゃんの新作は、なんとThe Good-Byeのデビュー40周年に合わせたThe Good-Byeの楽曲集。その選曲の妙や清々しい弾きっぷりを音楽ライターの桑原シローが評した。 *Mikiki編集部
ヤングなリスナーも驚かせたThe Good-Byeの名盤
タワレコ主導による〈The Good-Byeアルバム復刻計画〉は成功裡に終わったように思う。オリジナルアルバム9作に名ベスト『READY! STEADY!! THE GOOD-BYE!!!』、そして野村義男の初ソロアルバム『待たせてSorry』など彼らが挙げた素晴らしい成果を自身の耳で確認してみて、アイドルバンド/ロックバンドという二元論を用いて判断する行為がまったくもってナンセンスだと気づいただろうし、ビートルズやT・レックスやELOなどブリティッシュロックへのリスペクトや造詣の深さを最新型サウンドに昇華させた楽曲群の高いクオリティーに、特にヤングなリスナーたちは驚きをおぼえたことだろう。
良いメロ、良い音、良い男っぷりが詰まった名盤を改めて満喫しながら、9月からスタートする〈The Good-Bye 40th Anniversary Concert Tour〉にいまは照準を合わせているところ、という人も少なくないと思うが、この夏にはコレも登場するんだってことをしっかりとおぼえておいてもらいたい。
待ってました!のThe Good-Byeセルフカバー集
コレとは、ヨッちゃんこと野村義男のニューアルバム『Ukulele Slow Life 3』だ。2020年、コロナ禍のなかで生まれたこのシリーズ。サザンオールスターズの関口和之や高木ブー、荻野目洋子らが名を連ねる〈1933ウクレレオールスターズ〉の一員としても知られるヨッちゃんの尽きせぬウクレレ愛が炸裂したインスト作品集で、タイトルどおりにくつろぎの時間を提供する極楽音盤となっている。
自宅でひとりコツコツとレコーディングしたオリジナル書き下ろし曲が並ぶ第1弾、有名洋楽カバーがメインとなった第2弾に続く最新作は、待ってました!のかけ声が思わず飛び出してしまう、The Good-Byeセルフカバー集と相成った。
エバーグリーン感に涙腺が緩む
ラインナップを見てみると、“You惑-May惑”や“とLOVEるジェネレーション”といった有名シングル曲に加えて、ファーストアルバム『HELLO! THE GOOD-BYE』からの“愛 See Tight”や30年ぶりのアルバムリリースとなった2019年作『Special ThanX』の“「LOVE」”など、選曲は全キャリアを網羅したものとなっていて、傾向としてはメロディアスでポップ度の高いナンバーが多めといったところ。
そもそもウクレレスタイルがマッチするように目鼻立ちがしっかりしたメロディータイプ系をピックアップするのは当然だけれど、それにしてもThe Good-Byeの楽曲が元来備えているエバーグリーン感がこれほどに際立つ結果になるとはちょっと驚き。
例えば、スロウテンポにアレンジされた“のぞいて Feel Me,Touch Me”。ヤッチンこと曾我泰久のメロディーメイカーぶりが光るチャーミングなポップチューンがトワイライト仕様のバラード調に変身しているのだが、サザンオールスターズの王道ソングに通じるような風情のある眺めが広がっており、思いがけず涙腺が緩んでしまった。