ロッテルダム・フィル首席フルート奏者、オレシュのデビュー盤にあたる魅力的なコンセプトアルバム。自然と現代に生きる人間との繋ぎ直しを主題に、フルートという楽器の象徴的特性をも活かした選曲と、秀逸なまでに意図を具現化するオレシュの技量に敬服。自然との交通を仲介するいにしえの楽器として、時にはテクネーの表象としてのエレクトロニクスやミニマルをまとい、諸作品は鮮やかな対照を示す。2022年に死去したジョージ・クラムの音響探究をオレシュは精緻に表現し、ライヒのミニマル逸品“ヴァーモント・カウンターポイント”では12の声部を重ね、爽快な風を空間に薫らせる。触媒としての武満作品の役割も絶妙!