
いったい何故がどうしたのだ
――そうおっしゃらずに(笑)。1曲ずつ解説してもらっていいですか。1曲目“いったい何故がどうしたのだ”は、バカボンのパパがモデルでしょうか。
古田「これは2020年末頃に、安齋さんと僕が何故か〈バカ田大学〉(〈DOMMUNE UNIVERSITY『バカ田大学』実写版〉)の講師に招待されて、その時に僕はミュージシャンだから、曲で何か伝えられたらいいなあと思って、この曲を作って持ってったんです。バカボンのパパが言いそうなことを歌詞にして。でも漫画で言ってたことが多いんで、これを作詞と言っていいんだかどうだか(笑)」
安齋「赤塚不二夫さんの娘さんの赤塚りえ子さん、フジオ・プロの社長さんがものすごい喜んでくれて。
その後フジオ・プロの建物が移転でなくなっちゃうんで、そこを自由に使って展覧会※をやった時、この曲が展覧会場で1日中流れてたの。普通だったら音を絞るじゃない? でも絞られないぐらい曲がよかった(笑)。コロナ禍で、〈何故がどうしたんだ〉って(曲を)入れたかったんだよ」
古田「2曲目“アニマンマンねお”は元がChokobabyz(安齋・古田・佐川秀文のバンド)の曲。佐川くんがローリング・ストーンズを真似して作ったから、それをちょっと変えて現代的にしてみました」
安齋「アニマンマンは僕の思ったヒーロー。まあ、アンパンマンですね(笑)。
佐川くんは雑誌『宝島』の編集を辞めた後、僕と伊島くんがやってる事務所に居候してたの。ある時酔っ払って〈キース(・リチャーズ)みてえなギターが弾きてえ!〉って言って、これができた」
古田「今回入れたのでは、他に“道路マン(21号)”“地下鉄ゴーゴーぶるーす”“石~佐川平野”がChokobabyzの曲だね」
――道路や地下鉄、石までを擬人化するという。ストーンズなので石だったんでしょうか?
安齋「なんかそういうブームだったんだね(笑)。
でも“道路マン”はChokobabyz最大のヒット曲。PVもあるし、けっこうヘビーローテーションでかかったの。でも今回は古田くんが歌ってる。すごくいいんですよ。俺が歌うとあざとくなっちゃうけど、古田くんはそれがないんだな」
古田「仮歌で歌ったのを、安齋さんが〈これがいいんだよ〉って。僕、いろんなバンドでコーラスつけるじゃないですか。コーラスって本人にちょっと似せながら歌った方がハモるんだよね。それを長年やってるせいか、自然に安齋さんぽく歌っちゃったみたい。
“しんシンプル”はChokobabyzの“シンプル”って曲ですが、安齋さんが監督した映画『変態だ』(2016年)で僕が音楽監督をやらせてもらって、映画に出てくる〈レッドツベルクリン〉というバンドのテーマというのを作ったんだけど、それだけで終わっちゃうのがやだなと思って、そのフレーズも入れてみたんです」
忌野清志郎への対抗心
――“スペースほや”の原曲“ホャホャラー”は、NHK「みんなのうた」で放送された曲なんですね。バンド名は、安齋肇とフーレンズ。NHKから話が来たんですか?
安齋「来たのはね、アニメーションの絵の仕事だったの。その頃忌野清志郎さんが『みんなのうた』の“ブーアの森へ”(2002年)で、曲を書いて歌も歌ってアニメの絵も描いてるのをやってたんですよ。〈ああいうのやりたいなー〉って言ってみたら〈無理です、あれは清志郎さんだからやれたんです〉って言われてムカッとして〈じゃ曲作って来ますよ!〉って、公園で鼻歌で歌ったのを古田くんに渡して曲にしてもらった」
古田「すごかったんですよ、カセットテープでモニョモニョ歌ってて、〈このメロディーはどこなんだろう?〉って想像しながら僕は聴くわけ(笑)。それにコードをつけて。大変だった」
安齋「おかげで、見事に絵を描いて詞も書いて、曲を作って歌うところまで漕ぎ着けたの!」
古田「それで清志郎さんと並んだと思ったら、大間違いだよ(笑)。
“愛のレガエにゃん”もフーレンズの曲なんだけど、ライブで何度やってもうまくいかない。曲が変だからかな? でも、こういう風にやりたかったんです、っていう正解を今回やってみました。ちょっと歌詞を変えて、安齋さんにウチの飼い猫のミルクの気持ちになっていただいて」
安齋「可愛い曲になったよね。困難な曲だったから、ニャアニャア言ってるとホッとするんだよね。おじいちゃんが赤ちゃんに〈なんとかでちゅよ~〉とか言ってる感じ(笑)」