宿命から生涯をかけるチャレンジとなったシンフォニック・コンサート――10年の集大成がここに!
玉置浩二がbillboard classicsシンフォニック・コンサートを始めた2015年、「自己流でやっている自分と、音楽を学んできたクラシックのみなさんとの共演は、運命的な出会いから始まり、宿命と思えるように変わってきた」と語っていたが、宿命はライフワークとなり、2025年もすでにツアーが始まっている。本作は、「billboard classics 玉置浩二 LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2024 ”Pastorale”」ツアーの最終公演である6月1、2日に大阪・万博記念公園で行われたコンサートの模様を収録した映像+CDのパッケージ作品になる。

玉置浩二 『billboard classics 玉置浩二 LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2024 “Pastorale” 万博記念公園』 コロムビア(2025)
共演は、指揮者・栁澤寿男とバルカン室内管弦楽団、そして大阪交響楽団。初夏の野外会場は、黄昏の空が美しく、芝生席に座る観客の姿も見える。そんなのどかな光景に囲まれるなか、オーケストラによる前奏曲、ベートーヴェン作曲“交響曲第6番「田園」第5楽章”から始まり、玉置浩二がバルカン室内管弦楽団を設立した栁澤寿男の想いにインスパイアされて作曲した“歓喜の歌”が演奏される。そこから玉置浩二の登場となり、“ボードビリアン~哀しみの道化師~”を歌い始める。10年間におよぶオーケストラとの歩みは、彼の音楽観に変化をもたらし、billboard classicsに関わる指揮者の誰もが「歌が進化した」と口にする。卓越した歌唱力、声量、表現力を誇る歌は、観客を圧倒するのに十分だけれど、つづく“ホームレス”の〈人が生まれると書いて、人生というならば~♪〉という歌詞が心に刺さる。
これは、以前に記事で読んだものだけれど、栁澤寿男は、玉置浩二のアンサンブルする能力の高さを絶賛しつつ、歌詞が心に刺さって涙が止まらなくなったと語っていた。その想いは、演奏が終わった後の表情から伝わってくる。玉置浩二とのアイコンタクトは、お互いにリスペクトし合っていることがわかるものだけれど、それも曲が進むにつれて、固い握手に変わり、ハグする姿が見られる。その信頼関係で結ばれた絆も見どころのひとつだ。
第1部は、絢香とコラボした“Beautiful World”から“あこがれ”、“MR.LONELY~All I Do~サーチライト(メドレー)”、“Friend”と続いていく。どの歌も歌詞がまっすぐ心に響き、悲しみも含めて人生を讃える歌に自分の人生が愛おしくさえ思えてくる。彼の歌には共鳴できる歓びがある。
第2部は、バルカン室内管弦楽団が演奏するV. ベチリ作曲の“スピリット・オブ・トラディションより「ダンス」”から始まる。コソボ出身のベチリがバルカン半島のさまざまな民族音楽の要素を取り入れて作曲したエキゾチックな舞曲で、トゥパンという打楽器が目を引く。続く外山雄三作曲の“管弦楽のためのラプソディ”では大阪交響楽団とバルカン室内管弦楽団が、“あんたがたどこさ”や“ソーラン節”など日本の歌をモチーフにした作品を普段オーケストラでは演奏しない拍子木やチャンチキ、鈴などを奏でながら演奏する。さながらエールの交換といったオープニングだ。
そこから玉置浩二が“SACRED LOVE”、“いかないで”と歌い、“ワインレッドの心~じれったい~悲しみにさよなら”のメドレーに続くが、1部も含めてメドレーのアレンジが秀逸。このなかで、“悲しみにさよなら”では歌詞を〈愛を世界のために~♪〉と変えてひと際力強く熱唱する彼に客席から大きな拍手が沸き起こる。2月に沖縄からスタートした2024年のツアーは、〈愛と平和〉をテーマに掲げていた。