(左から)古田たかし、安齋肇

ANZAiFURUTAがファーストアルバム『う~ゆばりあ』を2023年9月6日(水)にリリースする。イラストレーターやアートディレクター、そして元ソラミミストとして知られる安齋肇。73年、15歳の時にカルメン・マキ & OZでプロデビューし、数々の著名アーティストたちのドラマーを務めてきた古田たかし。これまでにChokobabyz(チョコベビーズ)やフーレンズとして活動を共にしてきた2人が、新たなユニットのANZAiFURUTAを結成した。ロック愛とユーモアがたっぷり詰め込まれた彼らの初作について、音楽ライターの今井智子が2人にインタビューした。 *Mikiki編集部

ANZAiFURUTA 『う~ゆばりあ』 Turfull Studio Label(2023)

 

すごいドラマーが何でギターを弾いてるの?

――お二人の出会いはどんなことだったんですか?

安齋肇「僕がフリーになったばかりの時、仕事もなかったんで伊島薫っていうカメラマンがね、何かやったほうがいいってカセットマガジン『TRA』に漫画描けって紹介してくれたの。そしたら音も必要だって言われて、その時は仕事で知り合った印刷屋さんを集めてブルースバンドをやったの。古田くんと会ったのは、その後の『TRA』のマンガ特集〈TRA漫画〉というのでね」

――その頃、古田さんは何をやってたんですか? 15歳からプロのドラマーとして活動を始めて、最初に参加したカルメン・マキ & OZを始め原田真二さんなどすごい人たちのドラムを務めていましたね。

古田たかし「その頃は佐野元春さんのザ・ハートランドとか、もうやってたかな。ショコラータもやってた。でも安齋さんと会ったその時は、ドラムじゃなくてギターでしたけどね」

安齋「竹中直人っていうすごい縦横無尽にいろんなことをする人の、バックのギターを一生懸命落ち着いてやっていたんで、この人えらいなあと思って。

で、僕が別件の仕事で、やっぱり音源が欲しいっていう時に、古田くんに頼んだんです。それが一番最初に一緒にやったやつで、東洋化成のプロモーション用のピクチャーレコード。僕の仕事は、ピクチャーレコードの壁掛け用カレンダーを作るっていうのだったんだけど、レコードと言ってるのに音源が入ってないのにムカッと来て、音源を作りたいって言って。それで古田くんにお願いしたの」

古田「共通の知り合いがいて、繋いでくれたんだよね。ドラムとサックスとトロンボーンという編成で即興で作ったんだけど、安齋さんは作詞とシャウト。僕が途中でギターを足したっていう薄い音源なんだけど面白かったんだよね」

安齋「古田くんは最初はギターの人だと思っていたら、周りが〈すごいドラマーなんだよ〉って言うから〈じゃ何でギター弾いてんの?〉って(笑)。でもお願いしたらやってくれたんで」

 

亡くなった香代ちゃんのために曲を書いた

――『うーゆばりあ』はお二人の活動の総集編的選曲になっていますが、これはどんなことから始まったんでしょう。

安齋「作品を作ろうと思ったのは、古田くんが曲をくれたんですよ。それは僕の奥さんの香代子さんが亡くなった後で、〈香代ちゃんのために曲を書いたから〉って送ってくれたんです」

古田「それが今回の最後に入っている“おもひで”という曲なんですけど、いてもたってもいられなかったんですよ。入院してることとかを知らずに亡くなったと知ったんで、本当にもうショックで。自分がどうしようもないぐらいの感じになっちゃって。曲を作ることで自分を浄化させるというか、させてもらっちゃいました。身勝手だけど、自分を何とかするために」

安齋「感動しますよ。彼女(の絵)を描いて送ってくれる人とかは何人かいたの。でもまさか曲をもらえると思わなかったし、めちゃめちゃ感動したけど、その曲をどうしたらいいかと。自分のテーマソング? 子守唄? お墓に聴かせるとか? そういうことでは対処できなさそうだった。

それで、長いこと一緒にいろんな曲を作ってもらったりしてたんで、それをまとめてもらったらどうかなと、古田くんに相談したんですよ。ちょうどコロナ禍でライブができなかったから、時間はあるかなと思って」

古田「そう、ツアーとかがなくなってたから時間はいっぱいあったので、気になる曲とか、これはやったら面白そうだなというのをセルフカバーして。楽器は全部自分でやって、トラックができたら安齋さんに歌入れに来てもらって」

安齋「全部古田くん一人で作ってるから、足掛け2年以上かかってるんじゃないかな。僕は2日ぐらい歌を歌いに行っただけだから、この作品では全く発言する権利がないんですよ」