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トランス・ジャンルをキーに自由奔放に舞う、新たなヴェロニカ・スウィフト

 ヴェロニカ・スウィフトが、さまざまなスタイルの音楽を、〈トランス・ジャンル〉というキー・ワードで横断した、新作をリリースした。自らの名前をタイトルに冠した『ヴェロニカ・スウィフト』は、「今の私の音楽が、すべて盛り込まれた初めてのレコード」と、自信をのぞかせている。

VERONICA SWIFT 『Veronica Swift』 Mack Avenue/キングインターナショナル(2023)

 ヴェロニカは、著名なジャズ・ミュージシャンの両親のもとに生まれ、幼い頃から天才少女ジャズ・シンガーとして名を馳せた。学生時代にさまざまなタイプの音楽を演奏していたが、メジャー・デビューして以降、ジャズ以外の音楽をプレイするのが困難な状況にいたという。そして、コロナ・パンデミックに見舞われる。「自主隔離期間中の2020年に27歳になり、私はこのままでいいのかと深く考え、自分自身のバランスを取り戻すことの必要性を感じた。そして2021年に、ニューヨークを離れてロサンジェルスに移り、バンドも解散し再出発を図りました」と、ヴェロニカは語る。

 ロサンジェルスでは、12歳の頃から、大ファンだったパンク・デュオ、ドレスデン・ドールスのブライアン・ヴィグリオーネ(ドラムス)と出逢った。「ロックをベースにしながら、エルヴィン・ジョーンズ(ドラムス)、トニー・ウィリアムス(ドラムス)の影響を受けているブライアンと、ジャズのバックグラウンドを持ちながら、フレディー・マーキュリー(ヴォーカル)、ジャニス・ジョプリン(ヴォーカル)を愛する私は、すぐに意気投合しコラボレーションを始めました。私が、さまざまなアイディアを出すと、彼がそれにフォーカスを絞ってくれて、オーガナイズして完成させてくれる素晴らしいプロデューサーであり、卓越したプレイヤーです」。

 クラッシックの引用、「世界一好きなバンド」と語るクイーンのカヴァー、ブロードウェイ・ソング・ブック、ゴスペル、エリントン、ジプシー・ジャズ、インダストリアル・ロックと、音楽曼荼羅のようなラインナップが揃った。アレンジも、ビッグバンド、JBスタイルのファンクから、ゴージャスなオーケストラ、ギターの伴奏のみのデュエットと、起伏に富んでいる。「この多彩なスタイルの11曲は、続く曲が必ず共通の音楽的要素をふくみ連続性を持たせて、トランス・ジャンルというコンセプトが明確に見えるように制作しました」と、ヴェロニカは語る。

 すべての束縛から解き放たれ、音楽ジャンルを自由に横断するヴェロニカ・スウィフト。その先には、まだ見ぬ地平が、拡がっている。