
ギターを手に強い決意を歌声に乗せる
「ブギーポップは笑わない」のタイアップソング“Whiteout”“Sayonara”で豊かな歌声を披露する頃には、すでにライブは中盤パート。愛用しているCole Clarkのギターを手に、自身で作詞作曲をした“DAISY”を投下する。バンドサウンドと重なった柔らかな歌声は、エネルギーが増して音源とは違う印象を与えた。一方でフリーハンドからギターボーカルへスタイルが変わっても、表現力が衰えることはない。

「もっともっとみんな、青い炎を見せて」と煽り、ファーストアルバムのラストソングである“BLUE CYALUME”が導かれると、ブルーに煌めくサイリウムが会場を埋め尽くした。「私の人生 私が決めるの」という強い決意は歌声に乗り、フロアの隅々にまで広がっていく。

観客の熱気が最高潮になるのを見越していたのか、続いて誘われたのはコール&レスポンスで盛り上がる“ないものねだらせたもん勝ち”だ。ジャカジャカとギターをかき鳴らしながら、ボーイッシュな声色を響かせる安月名。「Wild & Free! Go my way!」の声がチェルシーホテルを満たすと、嬉しそうに口角をあげた。

5年の成熟を見せながらも愛されポンコツキャラ?
このまま全力疾走で駆け抜けていくのかと思われたが、「Re:ゼロから始める異世界生活」の後期エンディングテーマである“Stay Alive”のカバーでクールダウン。先ほどまでとは一変した、しっとりとした透き通る歌声を響かせていく。なかでもロングトーンは豊潤で、ただ声を伸ばしているだけではなく、たくさんの想いがギュッと濃縮されている。声が放たれるたびに、魔法の杖が一振りされて、想像していた情景がぶわっと広がっていくようだった。
“たたくおと”で「きっと未来はきれいだよ」と祈りをかけると、いよいよデビューソング“君にふれて”のお出ましだ。音が鳴り始めるとスイッチが入ったかのように曲の世界観に潜り込んでいく彼女だが、この曲を演奏しているときだけは、どこか等身大なオーラを放つ。5年間という年月をかけて、デビューソングやタイアップ曲という枠だけに収まらない、大切なファンを想う曲としても成熟してきたのだろう。「遠くに見えていた未来が こんなに近くに感じる」と紡ぐ声も変な飾り気がなく、彼女自身の言葉として伝わってきた。

早口言葉のようなフレーズが特徴的な“Shouting My Soul”をきっかけに、ついにライブはラストスパート。“はいてはすう”では歌い出しのタイミングがわからなくなり、もう1回仕切り直すハプニングもあったが、それすら愛されポンコツキャラたる安月名らしい。バンドメンバー紹介も、もう一度きちんとやり直し、タンバリンを揺らしながら笑顔をキラキラ輝かせる。

特大のシンガロングが巻き起こる“be perfect, plz!”、「僕らたしかに生きていく」と高らかに刻む“BEYOND”とパフォーマンスし、大団円のうちに本編の幕を下ろした。