タワーレコード新宿店~渋谷店の洋楽ロック/ポップス担当として、長年にわたり数々の企画やバイイングを行ってきた北爪啓之さんによる連載〈聴いたことのない旧譜は新譜〉。そのタイトル通り、本連載では旧譜と称されてしまった作品を現在の耳で新譜として紹介していきます。

第3回は、浜田省吾が在籍したバンドAIDOのデビューアルバム『AIDO』を大特集。本日5月1日で『AIDO』のリリースから50年を迎えるにあたり、北爪さんによるアルバム全曲解説をお送りします。 *Mikiki編集部

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同学年で類似点が多い浜田省吾と山下達郎

山下達郎のプロキャリアの出発点がシュガー・ベイブというバンドだったことはよく知られているが、浜田省吾(以下、敬意を込めて浜田でも省吾でもなく浜省)もまたそのキャリアをAIDOというバンドからスタートしていることはあまり知られていないように思える。

シュガー・ベイブの唯一のアルバム『SONGS』は1975年4月25日にリリースされたが、AIDOのデビューアルバム『AIDO』は同年5月1日に発売されている。つまり2組はちょうど1週間違いの同期であり、山下と浜省はともに今年でデビュー50周年を迎えたということでもある。

AIDO 『愛奴』 CBS/ソニー(1975)

シュガー・ベイブ 『SONGS』 ナイアガラ/ワーナー(1975)

彼らの共通点はそればかりか、同学年で同い年、音楽活動の最初はドラマーでのちにシンガーへと転向、バンドを辞めてソロデビューを果たしたのも同じ1976年、そしてソロでも不遇の時期が続き、ブレイクするのは80年代を迎えてからなど、重なる部分がことのほか多い。それゆえお互いに強いシンパシーとリスペクトがあるようで、対談やコメント、互いのライブ観覧など交流も少なくないようである。

2人がソロ活動で表現している音楽は異なるが、活動初期のシュガー・ベイブとAIDOはともに60~70年代のアメリカンポップスやソウルを下敷きにしていることもあり、音楽性は思いのほか遠くはない。山下が1994年に行った〈TATSURO YAMASHITA Sings SUGAR BABE〉のライブでAIDOの代表曲“二人の夏”をカバー、翌年にはシングルのカップリングとしてCD化していることをご存じの方も多いだろう。

AIDOのアルバムが完成したとき浜省はその出来映えに自信をもったが、その後シュガー・ベイブの『SONGS』を聴いて愕然としたというエピソードが残されている。その心中を察せないわけでもないが、それでもファンとしてはAIDOの魅力を全力で喧伝したいのである。『SONGS』のリリース50周年で各所が賑わうなか、当連載では『AIDO』のリリース50周年を記念してアルバム全曲解説を試みたい。