少女の自我の目覚めを、微分音のメロディで鮮やかに描く。
ジャズ・シーンに新たなムーヴメントを巻き起こしているイスラエル出身のアーティストたち。その中で、インドの伝統音楽の方法論で、独特のジャズをプレイしているオデッド・ツールが、ECMからの3枚目のアルバムをリリースした。彼がニュー・アルバムに込めた思いを訊いた。
「『マイ・プロフェット』は、ECMでの前作『イザベラ』に続いて、私の妻を描いた作品だ。このアルバムでは、彼女の幼少期から、自我に目覚め、現在の彼女に成長するまでを、音楽で表現した。“Child You”は彼女が4、5歳の時の可愛らしい写真にインスパイアされて書いた。“Last Bike Ride In Paris”は、ブラジル出身の彼女が、パリに留学していた1年間の経験を描いている。この体験が、今の彼女の人格を築くのに、大きな影響を及ぼした。“My Prophet”は、まさに今の私にとっての、彼女の存在を意味する。彼女は、私にとって賢い預言者のような存在で、いつも大切なことを思い出させてくれる」。
本作は、フランスで録音された。もちろんECMの総帥、マンフレート・アイヒャーが、スタジオでプロデュースを行う。
「このアルバムでは、ソフトなサウンドの前2作よりも、激しいプレイや、ダイナミック・レンジの広い演奏をしたかったから、それぞれのプレイヤーがブースに入って、ヘッドフォンでモニターしながら録音ができる、フランスのスタジオを選んだ。マンフレートと私は、今までのレコーディングで、確固たる信頼関係を築くことができた。彼は、私のヴィジョンを高く評価して尊重してくれる。そして、彼の世界一鋭い音楽耳で、あらゆるディテイルを把握して、的確なアドヴァイスを与えてくれ、美しいサウンドを完成させてくれた。本当に感謝している」とツールは、レコーディング・セッションを振り返った。
12音階をさらに細かくした、インドの伝統音楽で使われる微分音を駆使して、流麗なメロディ・ラインをプレイするオデッド・ツール。
「全ての音のインターヴァルが、数学的に答えが出るインドの伝統音楽を、ジャズのセッティングに導入して、微分音による緊張感を用いて、自らの音楽を創造したい」と、ツールは話す。
ニュー・アルバムの欧米ツアーに乗り出すツールだが、インタヴューの最後に、「ぜひ日本で、この音楽を皆様に聴いていただきたい」と語った。近い将来に実現することを、期待したい。