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歌手として次のステージへ

そんなシンガーとしてのスタイルに変化の兆しが見えはじめるのは、10枚目のシングル“愛の轍”(1983年)あたりから。主演映画「彩り河」の主題歌となった“Believe In Love”(1984年)は、岩崎宏美“聖母たちのララバイ”で知られる木森敏之が作曲したマイナー調のミディアムバラードだったが、それまでにないアダルトな雰囲気が濃厚な仕上がりとなっており、あきらかに次のステージに足をかけたことが察知できる(アクションスターという肩書きをおろして臨んだ映画「麻雀放浪記」が高い評価を受け、ちょうど役者としてひと皮むけた時期でもある)。

まばゆい青春との別離。それは1986年に移籍したビクターのInvitationレーベル時代に入ってからいっそう加速していく。この頃の楽曲を聴いていると、テーマやアイディアをしっかり吟味しながら、シンガーとしていまやるべきことは何かを探っていかねば、そういった彼の自覚の深まりのようなものがひしひしと伝わってくる。

 

ブルース・スプリングスティーンや尾崎豊を思わせるロックンロール

ところで、年1枚のペースでリリースを重ねたInvitation期のオリジナルアルバムのフィジカルは、現在のところどれもプレミア化しているが、単に希少価値ってだけでなくちゃんと中身の充実ぶりに準じた評価が働いてのことだという事実はぜひ書いておきたい。というわけで、ここからはアルバム作品をメインに話を進めていこうと思うが、『movin’ out』(1986年)や『into the street』(1987年)などに顕著な傾向として、ロック調の楽曲ががぜん増えたことにまず着目したい。それまでにもロックサウンドにアプローチすることはあったものの、趣が異なるというか、もっと言うと吹いている〈風〉が違う。

例えば、世良公則が提供した“ざわめきの街”に流れているそれはあきらかに〈ストリート〉の風であり、歌詞に描かれるのも、都会の荒波に揉まれながらタフに生きる男像だったりする。サウンドの方向性はブルース・スプリングスティーンや尾崎豊が得意としたアーバンスタイルのロックンロールに近く、音楽活動に熱心だったころのビートたけしがめざしていたような〈TOKYOロック〉との共通項も見い出せよう。

また、ワイルド・イン・ザ・ストリートを地で行くスタイルに少し変化が現れるのが『So, I am…』(1988年)。ジャジーなレゲエチューン“シネマのように”や表題曲など、ソロデビュー時のスティングを思わせるモノクロームな音世界を追求する彼がおり、耽美な雰囲気を醸す場面も多々出現する。

さらに、その方向性を継承しつつ、ライトな感触と心地よい開放感が魅力の『Summer Dream』(1988年)もなかなかの好盤。ファンキーなギターカッティングが冴えるレゲエロック“KEEP YOUR WAY”、風味豊かなリゾートミュージック“STELLA”などは和モノリスナーからの支持も厚い。