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令和のいまが旬? ジェントルなボーカルも瀟洒なAOR名盤

そして掛け値なしにオススメできるのが『FADED TOWN』(1989年)。『SMAP 007~Gold Singer~』などSMAPの名作群で素晴らしい仕事を果たした岩田雅之がトータルプロデュースを手掛けた本作は、ダンサブルでメロウなナンバーがひしめき合うAOR名盤だ。

南佳孝が提供したニュージャックスウィング調の“孤独のいたずら”など当時の最先端を採り入れたサウンドメイクは、令和のいま聴くのが旬かもと思えるほどの新味がある。なかでも“Just Another Love”や“ブラインドの第2章”といったクワイエットストーム路線のミディアム~スロウ系が素晴らしい出来栄えとなっており、真田のジェントルなボーカルもめっぽう瀟洒。

この時期に発表された映画絡みの楽曲では、同じビクター所属の小泉今日子と共演した映画「快盗ルビイ」の挿入歌で、小泉とデュエットした“たとえばフォーエバー”(1988年)に注目したい。監督の和田誠がこよなく愛したMGMミュージカルへのオマージュに溢れた数々のシーンが鮮やかによみがえってくるレトロチックなナンバーだが、こういう洒落たセンスをなんら違和感なく表現できてしまうあたりも真田の真骨頂だと言える。

 

真田広之の人柄が滲み出るバラード

1990年代に入るとリリース数はガクンと減ってしまうのだが、来生えつこ&たかおコンビによるシングル“さりげない夜に”(1992年)のような佳曲があったりするので簡単にスルーできない。こちらは真田の人柄がじんわり滲み出るような味わい深いバラードとなっており、個人的には、真田広之とはどんな歌手なのか?と問われたらこの曲を差し出せばいいとつねづね思っている。

真田広之 『ゴールデン☆ベスト 真田広之』 ビクター(2010)

また、社会現象化した主演ドラマ「高校教師」の翌年にリリースされたBEGINとのコラボシングル“Paper Moon ~再会のテーマ~”(1994年)も、けっこうレアな存在だが、忘れがたい印象を残す素晴らしい1曲なのである。なお、この曲がいまのところ彼の最後の音楽作品となっている。

思いっきりカッコつけてみても照れくささが出てしまうからなのか、心根の真面目な部分がふと透けて見えてしまうケースがけっして少なくない。そんな部分も全部ひっくるめてシンガー・真田広之のことを愛しく思ってしまう次第なのだが、念願だったハリウッドでやっと天下が獲れたんだし、ここら辺でまたひさしぶりにマイクを握ってくれてもいいんじゃないかな?とか思うのだが、どんなものだろうか?

 


PROFILE:桑原シロー
1970年、三重県尾鷲市生まれ。音楽ライター。2000年代半ば、タワーレコードが発行するフリーペーパー「bounce」の編集業務に携わり、退社後、フリーランスの音楽ライターとして活動。雑誌/ウェブを中心に記事を執筆。インタビュー、ライナーノーツ執筆などを行なう。ロック、ジャズ、歌謡曲など幅広い音楽ジャンルに精通し、映画、芸能、お笑いの分野にも活動範囲を広げている。2014年から、日本のディープサウス、熊野在住の異能のギタリストのマネージャーも務めている。