漫画家・芸術家の楳図かずおが死去した。88歳だった。
一般財団法人UMEZZが小学館を通じて発表したところによれば、楳図は10月28日に胃がんのため亡くなったという。葬儀はすでに関係者のみで執り行われたそうだ。
楳図かずおは1936年、和歌山県高野山に生まれ、奈良県で育つ。小学4年生から漫画を描き始め、高校3年生の時に「別世界」、「森の兄妹」(水谷武子との共作)をトモブック社から出版しデビューした。
1966年、少女漫画誌「週刊少女フレンド」に連載した「へび少女」などがヒット。1972年からは「週刊少年サンデー」にて「漂流教室」の連載をスタートさせ、それまでの恐怖漫画のテイストに加え、SF的なストーリーによって大きな話題を集めた。「漂流教室」などの作品が高く評価され、1975年には第20回小学館漫画賞を受賞した。
1975年には作詞、作曲、歌唱、ジャケットまですべてを楳図が担当したソロアルバム『闇のアルバム』をリリース。同作は幾度となくアナログ盤などでリイシューされたほか、36年後の2011年には続編とも言える『闇のアルバム2』も発表された。
1976年、「まことちゃん」の連載を「週刊少年サンデー」にて開始。ホラー漫画から一転、ギャグを豊富に盛り込んだ同作からは〈グワシ〉という楳図の代名詞とも言えるポーズも誕生した。
このほか「おろち」「洗礼」「わたしは真悟」「神の左手悪魔の右手」「14歳」といった数多くのヒット作を生み出す。また、楳図の作品の多くはドラマや映画など映像化され、その都度大きな注目を集めた。
2018年、「わたしは真悟」がフランスのアングレーム国際漫画祭において遺産賞を受賞。また同年度には文化庁長官表彰も受賞した。
2022年より開催された〈楳図かずお大美術展〉の中で、27年ぶりの新作「ZOKU-SHINGO 小さなロボットシンゴ美術館」を発表して話題に。同作を通じて、2023年には第27回手塚治虫文化賞特別賞を受賞した。
楳図の活動は漫画家や歌手だけにとどまらず、タレント、映画監督など様々なジャンルでも活躍した。
なお、楳図の訃報を受けて中川翔子、伊藤潤二、近田春夫、綾辻行人などが追悼コメントを発表している。
恐怖漫画/ホラー漫画を一躍メジャーなものとし、一度見たら忘れないインパクト抜群の画や奇抜なストーリーは、時代を超えて多くの人々の脳裏に焼き付いている。全身全霊で創作への情熱を表現し続けた楳図かずお、この先も彼から影響を受けたクリエイターが数多く登場するはずだ。