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セッションやコンテンポラリーなビッグバンドで鍛錬を積んだ大学時代

――出身校の東京大学ではジャズ研に所属するいっぽうで、慶應義塾大学ライトミュージックソサエティにも参加したり、高田馬場のジャズスポット・イントロのジャムセッションでホストを務めたり……。

「そうですね。ジャムセッションの経験に関しては、最初は錦糸町のJ-Flowで、その後がイントロでした」

――イントロには早稲田大学の学生がいっぱい来る印象があります。ジャズ好きのいろんな大学生が集まってくる渦の中に、布施さんもいらっしゃったわけですね。

「そうですね。学生の頃の友人との会話を思い返すと、自分がどう演奏するかはもちろん、どういう音楽を聴いているか、どういうミュージシャンがかっこいいかという話題がよくありました。CDはもちろん、当時からYouTubeで本当に最近の演奏動画を見ることができたので、それをお互いに共有したり。また、大学によってジャズ研で流行っているミュージシャンが違うので、そういうところで新しいミュージシャンを知ったりもしました」

――慶應のライトで〈ヤマノ・ビッグバンド・ジャズ・コンテスト〉に出演なさったときは、どんな演奏だったのでしょうか?

「ライトはずっと〈コンテンポラリーなもの、最新のものをやろう〉という方向性のバンドです。私は大学4年生のときに、自分から入りたいと思ってオーディションを受けました。私が出場したときは、レミー・ル・ブーフに新しい曲を書いてもらい、加藤真亜沙さんにも彼女の曲“After The Rain”のビッグバンドアレンジをお願いして、その2曲を演奏しました」

――東大にも素晴らしい先輩がいらっしゃって、ピアニストの若井優也さんのお名前はCDのブックレットのスペシャルサンクスにも記載されていますね。

「若井さんはいつまでもいろんなことへの興味を少年のように持ち続けている方だと思います。ミュージカルにもクラシックの作曲家にも詳しいですし、数学、プログラミング、ルービックキューブ、囲碁などへの情熱もすごいです。若井さんのご自宅にうかがうときは、数学談義を1時間、音楽談義を1時間という感じです」

 

音の対話から新たな発想が生まれる高橋陸、中村海斗とのトリオ

――新作『Thus Have I Heard』についてうかがいたいのですが、一目見て引きずり込まれるのがジャケット写真です。布施さんご自身の撮影であるとのことですね。

「写真には中学生の頃から興味がありました。私は鉄道も好きで、休みの日に鉄道写真を撮りに出かけていましたが、そのうち鉄道だけじゃなくて、風景や植物を撮るのも楽しくなっていったんです」

――こんなに美しく、粒というか〈しずく〉が揃っている瞬間をとらえるのは本当に難しいと思います。

「いろいろ撮った中で、偶然いいものが見つかった感じです。この写真はとても気に入っています」

――高橋陸さん、中村海斗さんとのトリオを2020年末に結成したきっかけは何ですか?

「中村海斗くんが地元の群馬県太田市から東京に出てくるタイミングが、2020年のコロナ禍の最中ぐらいでした。彼が東京で初めておこなったリーダーライブのベースが須川崇志さんで、ピアノが私だったんです。場所は下北沢のNo Room For Squaresでした。そのメンバーで2回ほど演奏して、3回目に海斗くんが呼んでくれたときのベースが高橋陸くんで、そのときにこの3人で初めて一緒に演奏しました。だから、最初にこのメンバーを選んだのは海斗くんなんです。最初に熊谷のSPACE1497で演奏したときに、ちょっとずつお互いを探り合いながら新しい発想が対話から自然に出てくる感じを受けたので、私がリーダーになったときも2人にお声がけしたという感じです。

陸くんは何事にも新鮮な気持ちで音楽に向き合っていると思います。先入観とか形式で音楽をやるのではなく、その場その場で自分が出したいと思った音だけを出しているように感じられます。演奏中の表情も豊かで、刺激をもらいますね。音色が美しく、ベースアンプやPAのセッティングも入念です。

海斗くんは小さい頃にオーケストラでビオラを弾いたりトランペットを吹いたりした経験もあるようです。バルトークが大好きだとも言っていて、作曲家としても素晴らしいと思います。彼は近現代までの西洋クラシック音楽の積み重ねを頭の中にかなり持っていると思います。ビバップとか、ブルースとか、そういうものに収まらないクラシック音楽の感じがスパイスとして入っていて、その感覚が作曲や演奏からも感じられるような気がします。私がいろんなハーモニーや調性に行ったときに、それを抱擁してくれるような感覚で合わせてくれます」