映画と新仕様のアナログ盤を機に振り返る、2025年のオアシス

 思い出しても、2025年はオアシスの年だった。いや、その狂騒は前年から始まっていたといえよう。2024年8月27日、初作『Definitely Maybe』の30周年記念盤が発表される数日前に、〈銃声が静まり、星が一列に並んだ。長い待ち時間は終わりだ。TV放映されることはないから、ぜひ観にきてくれ〉とのステイトメント、そしてギャラガー兄弟が並んだ新しい写真と共に再結成を発表。2009年の解散以降、長く絶縁状態とされてきた二人の和解は世界中のリスナーを歓喜させた。

 

街を歩けばoasisに当たる

 まず発表されたのは2025年7月からのUK/アイルランド公演で、その後に北米、オーストラリア、南米へと規模を拡大。11月には日本と韓国の公演も発表されたが、すでに日本国内でのトピックは目白押しだった。10月に伝説のネブワース公演における初日のパフォーマンスが日本限定で劇場公開され、11月にはデビュー30周年を記念した展覧会〈リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展〉が六本木で開幕。時期を同じくして全シングルを網羅した7インチ・コレクション『Complete 7inch Singles Collection Box』が日本独自企画としてリリースされるなど、オアシス熱は日に日に高まっていた。

 そして2025年7月4日、カーディフでの公演を皮切りに〈Oasis Live ’25〉がついに開幕。ソロ活動を通じてカリスマティックな歌声を取り戻していたリアム、新ドラマーとして加わったジョーイ・ワロンカーを含むバンドのソリッドな演奏による驚異的なステージングに称賛が集まった。そしてツアー開幕直後のチャート・アクションも見逃せない。同年6月に15周年記念リマスター盤がリリースされていたベスト・アルバム『Time Flies... 1994-2009』は15年ぶりに全英1位へ返り咲き、同時に『(What’s The Story) Morning Glory?』が2位、『Definitely Maybe』も4位へ浮上。なお、そのあと10月に登場した『(What’s The Story) Morning Glory?』の30周年記念盤も全英2位を記録している。

 ここ日本でもオアシス・フィーヴァーが続いた。2025年6月に“Don’t Look Back In Anger”がTVドラマ「しあわせな結婚」の主題歌として起用され、9月には件の〈ネブワース〉の公演2日目が劇場公開。リアム関連の映像作品も上映が相次いだ。さらに、 渋谷MIYASHITA PARKの公式ポップアップ・ストアを中心に、多くのコラボ・アイテムやツアー・グッズがさまざまな店頭を彩るようになる。街を歩けば〈oasis〉に当たる――昨年の秋にはそんな光景が珍しくなくなっていた。

 

復活の舞台裏

 そして10月25日と26日、ついに東京ドームでの来日公演を迎える。ツアーを通じて固定された23曲のセットに、オーディエンスも大合唱で呼応。会場に充満していたのは熱狂と、それ以上に〈この瞬間を一緒に楽しもう〉という友愛のムードだった。手を取り合ってステージに登場したリアムとノエルはその象徴のようで、分断や対立が進む時代において、このリユニオンは人と人が繋がることの素敵さを再認識させてくれたように感じたのだった。

 ツアーはその後もオーストラリア、南米へと続き、11月23日のブラジル・サンパウロ公演で全日程を見事に完遂。5大陸で200万人以上を動員した巨大な復活劇は幕を閉じた。なお、ツアー中には“Slide Away”など5曲の公式ライヴ音源を配信。さらに2026年のチャリティ・コンピ『HELP(2)』には、ウェンブリー最終公演から“Acquiesce”が収録された。

 これからのオアシスの活動については、2027年の大規模な公演などさまざまな噂が飛び交っているものの、現時点で正式な発表はない。そんななか、この秋に届くのが、9月11日より2週間限定で劇場公開されるドキュメンタリー映画「オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー」だ。リハーサルやバックステージの模様、20年以上ぶりとなる兄弟揃ってのインタヴューなどが収められているという本作は、ロック史上に残るカムバックの裏側を知るための格好のドキュメントになっていることだろう。

 さらに映画公開に合わせ、スタジオ・アルバム7作と『The Masterplan』の計8タイトルが新仕様の日本語帯付き輸入盤LPとして登場。9月4日以降に順次入荷される予定とのことだが、正式なリリース日や価格、仕様などの詳細はソニー・ミュージックのオアシス日本公式ページで随時発表される。映画とアナログ盤で、〈オアシスの年〉をルック・バックしようではないか。

 


MOVIE INFORMATION
「オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー」

バンド・メンバー:リアム・ギャラガー、ノエル・ギャラガー、ポール“ボーンヘッド”アーサーズ、ゲム・アーチャー、アンディ・ベル、ジョーイ・ワロンカー、クリスチャン・マッデン
企画:スティーヴン・ナイト
監督:ディラン・サザン、ウィル・ラヴレース
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
2026年9月11日(金)~2週間限定公開
https://www.disney.co.jp/movie/oasis

 

〈Oasis Live ’25〉のセットリストを肴に8枚のアルバムを嗜もう!!

OASIS 『Definitely Maybe』 Creation/ソニー(1994)

発表当時に英国史上最速セールスを記録したファースト・アルバム。“Live Forever”や“Rock ’N’ Roll Star”といった代表曲を筆頭に〈Live ’25〉では6曲が披露された。少し意外なレパートリーだったのが彼らのディスコグラフィーのなかでも特にパンキッシュな“Bring It On Down”。2024年にリアムが行った本作の30周年ツアーにおける好感触を経ての抜擢だったのだろう。

 

OASIS 『(What’s The Story) Morning Glory?』 Creation/ソニー(1995)

昨年にリリース30周年を迎えた2作目は、全世界で2,200万枚以上のセールスを誇る怪物盤だ。“Hello”で幕を開け、“Champagne Supernova”でフィナーレを迎える再結成ライヴの構成は本作と同じで、計8曲と大半の収録曲が演奏されていた。また、寄り添う存在を歌った名曲“Wonderwall”が先日の〈W杯〉にてイングランド代表のアンセムになったことも記憶に新しい。

 

OASIS 『Be Here Now』 Creation/ソニー(1997)

いまだ評価の分かれる3作目だが、〈Live ’25〉では“D’You Know What I Mean?”と“Stand By Me”を披露。特にスマートな演奏でラッドな魅力を際立たせた前者は、ライヴ後半のキックスターターとして機能していた。そのほかの収録曲がセットに入る可能性は今後も高くない気がしつつ、ブライトフルな“I Hope, I Think, I Know”は現在のバンドのコンディションで聴いてみたい。

 

OASIS 『The Masterplan』 Creation/ソニー(1998)

初期3作期のシングルB面曲を集めたコンピは、これほどの楽曲をカップリングに回せた当時のオアシスのとんでもなさを物語る。〈Live ’25〉でも本作から5曲を演奏。オーディエンスがスマホのライトを掲げ星空を作り出した“Talk Tonight”、少年期の夢が色褪せていく歌詞と重なるマンチェスターの風景がスクリーンを彩った“Fade Away”など、ライヴを思い出しながら楽しみたい。

 

OASIS 『Standing On The Shoulder Of Giants』 Big Brother/ソニー(2000)

聴衆の期待感を煽りまくったオープニング映像に被せられたロッキン・ブレイクビーツなインスト“Fuckin’ In The Bushes”から始まるサイケ志向の4作目。昨年のセットリストには入らなかったものの、実はリアムもノエルも時期によっては収録曲をソロで取り上げている。特にループ感の強い佳曲“Go Let It Out”あたりはジョーイ・ワロンカーのドラミングと合いそうだが、いかに。

 

OASIS 『Heathen Chemistry』 Big Brother/ソニー(2002)

ライヴ中盤のノエル歌唱タイムで選ばれたエモーショナルなバラード“Little By Little”を収録した5作目。前作の完成後に加入し、今回のリユニオンにも参加したゲム・アーチャーとアンディ・ベルが初めて制作に加わった作品で、“Songbird”“She Is Love”などフォーキーな良曲も多い。なかでも喪失と再会を歌う“Stop Crying Your Heart Out”は〈Live ’25〉で聴きたかった。

 

OASIS 『Don’t Believe The Truth』 Big Brother/ソニー(2005)

〈Live ’25〉では、この6作目以降の2作からは演奏されなかったが、ストンプ・ビートで突き進む“Lyla”は特に日本のファンからのリクエストが多かった印象。オアシス流ライドといった趣もあるアンディ・ベル作曲の“Keep The Dream Alive”など隠れた名曲もありつつ、今後のセットリストに加わるとすれば、ノエルが歌うプリミティヴなガレージ・ロック“Mucky Fingers”あたりだろうか。

 

OASIS 『Dig Out Your Soul』 Big Brother/ソニー(2008)

クラウトロック的な推進力で新境地を示した収録曲“The Shock Of The Lightning”は、解散直前のライヴ・バンガーだっただけに再演を期待したいが、やはりこの7作目はちょっと不思議な立ち位置だ。いま改めて聴くと、リアムは感傷をくすぐるバラード、ノエルはサイケデリックなダンス・ミュージックと、それぞれがソロで深めていく志向の萌芽こそが印象深い。