ラスベガス拠点のマルチ・プラチナ・バンドは20周年を突破してなお止まる気配なし! 怒涛の勢いで迫る『Legacy』はその魅力の本質を明快に表現した決定的な一枚だ!
アメリカを代表するメタル・バンドの一角を担う存在と、ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ(以下5FDP)を紹介しても異論はないはずだ。近作は必ずアルバム・チャート上位に送り込み、海外のメタル系フェスでは大文字で名前が載る看板バンドとして君臨し続けている。2005年にラスベガスで結成された5FDPは、2020年よりベター・ノイズに所属。今年の8月からは〈20周年ワールド・ツアー〉を開始して現在は北米を巡回中である。そんな彼らから約4年ぶりのオリジナル・アルバムとなる通算10作目『Legacy』が届いた。

昨年は結成20周年を祝した再録ベスト『Best Of Volume 1』と『Best Of Volume 2』を立て続けにリリース、後者ではBABYMETALを迎えた“The End”を収録し、米ビルボードの〈メインストリーム・ロック・エアプレイ〉チャートで1位を奪取した。同曲については〈2015年に海外のフェスで5FDPと共演していたので、もしかしたらその時のことを覚えていてくださったのかなと嬉しく思いました〉とSU-METALが公式でコメントを出している。なお、筆者はその翌年に〈Chicago Open Air 2016〉というフェスで両者のライヴを目撃している。その際に5FDPはパワフルかつグルーヴィーな演奏を武器にしながら、ライヴの定番であるフリーのカヴァー“Bad Company”で大合唱を起こし、ラスト曲“The Bleeding”では小さな女の子をステージに上げて歌わせる一幕もあり、ハートフルな余韻を残す押し引きに長けたショウに魅せられてしまった。
彼らの音楽性はニュー・メタル/グルーヴ・メタルに属するものだが、ブリティッシュ・ロックの影響下にあるブルージーな香りも漂わせ、ヘヴィネスとメロディアスの両面を備えた点が大きな魅力に繋がっている。残念ながら日本では〈KNOTFEST JAPAN 2014〉出演以降の来日がない状態が続き、バンドの真の凄味が伝わりきっていない気がするのだ。観客を焚きつけ、歌わせ、ほろりと感動させる懐の深いパフォーマンスは一見の価値ありと言いたい。
そうした溝を埋めるためにも今回の新作は最適で、5FDPらしさが濃縮還元された内容となっている。前作『AfterLife』(2022年)と比べて、ほぼ3分台とコンパクトな楽曲が並び、トータル約36分という収録時間を含めてテンポよく聴き進められる。表題の〈Legacy〉には伝統、遺産、次の時代に受け継がれていくもの、という意味がある。2枚の再録ベストで自身の音楽を総括したことにより、バンドが培ってきた長所や美点を再確認すると同時に、それを持って新しい時代を切り拓こうとする気概が本作には詰まっているのだ。
アルバムに先駆けてカットされたファースト・シングル“Eye Of The Storm”は、ビルボードの〈メインストリーム・ロック〉チャートで通算18回目の1位という記録を樹立。同曲はアイヴァン・ムーディー(ヴォーカル)の男臭い歌メロから始まり、ガッツ漲るヘヴィーなリフを基調にしたシグネチャー・サウンドで真っ向勝負。曲の後半にはハードロック調の泣きのギターを挿入し、ライヴでも爆発力を発揮するアンセム曲と言えそう。
他にも強力なナンバーが目白押しだ。オープニングを飾る表題曲では鐘の音をイントロに配した問答無用のグルーヴ・メタルを振りかざし、続く“De Oppresso Liber”はサビで壮大な歌メロを響かせ、その上で女性コーラスとハンドクラップのアレンジが活きたスタジアム仕様のメタル・チューン。さらに“Nails In The Coffin”は荘厳なシンセを導入したドラマティックな曲調で、時代を跨ぐ普遍的なナンバーに仕上げている。他方、“In Time”と“Everybody Lies”はいずれもアコギを使用したバラードで、ブルース/カントリーを昇華したメロディーの美しさが際立つ曲調も用意。総じてライヴで即戦力になりうる楽曲ばかりを収めた本作は、古参ファンから5FDP入門者まで虜にする決定版的な一枚と自信をもってお薦めしたい。
ファイヴ・フィンガー・デス・パンチの2025年の新録ベスト盤。
左から、『Best Of Volume 1』『Best Of Volume 2』(共にBetter Noise)
ファイヴ・フィンガー・デス・パンチのベター・ノイズでの作品。
左から、2020年作『F8』、2022年作『AfterLife』(共にBetter Noise)