ライヴ会場は私のパワースポット!

 宝塚退団から20年を経て、個人事務所を設立したり、同時にファンクラブを発足させたり。さらに昨年シングル『檀れい・シングス・ディズニー』でソロデビューしたことで、これまでの女優という肩書きにシンガーが加わった。そんな新たな挑戦を重ねている檀れいが11月13日に初めてビルボードライブ横浜のステージに立つ。

 「先日下見に行ってきたのですが、以前出演させていただいたコットンクラブに比べて、倍以上の広さがあるので、どうしましょうと(笑)。私にとってライヴの空間は、パワースポットなんですね。観客のみなさんが私の味方という風に思えて、今日は一緒に盛り上がるよ、このひとときを一緒に楽しく過ごしましょうという気持ちになれるんです。

 長く舞台に立ってきて思うのは、ステージって、ステージの上に立つ者だけが作るものではなくて、その時に来てくださったお客さまと一緒に作り上げていくもの。それがやっぱり楽しい! 今日のお客さまは、緊張しているなとか、こちらが引っ張られるくらい興奮しているな、盛り上げてくれているななど、いろいろあるんです。そのなかで、ともに楽しい時間を過ごすことができたらいいなと思っているので、ライヴ会場は、私のパワースポットなんです」

 そのように魅せられているパワースポットで、どんなパフォーマンスを考えているのか。デビューした昨年はディズニーを歌い、一昨年のコットンクラブは、大正ロマンがテーマだった。

 「オリジナル曲を持っていないので、いつも何を歌うか悩みます。今回の前半は、〈時間旅行〉をテーマに60年代~80年代の歌謡曲を歌おうと思っています。私が子供の頃は、テレビをつけたら歌番組か、プロ野球の中継という時代に育ち、アイドルから演歌までいろいろなジャンルの素敵な歌をいっぱい聴いてきました。大好きな歌手の歌を覚えたくて、テレビの前にラジカセを近づかせて録音していたら、遠くから〈ご飯よ~〉とか、〈早くお風呂にはいりなさ~い〉という声がして、録音がダメになったなんてこともありました。音楽へのワクワク感がすごくあった時代、私のお客さまは年齢の幅が広いので、私と同じように人生を重ねてきた人たちにも楽しんでいただきたいし、当時を知らない若い人にはこんな素敵な歌があったんだと感じてもらいたいので、前半は、時間旅行がテーマです」

 とは言っても60年代~80年代の30年間に生まれた歌は、膨大にある。そのなかからどのように選曲するのか。何をポイントに昭和の歌を歌おうと思っているのだろうか。

 「あの時代の作詞家たちの短い言葉で、ひとつの物語を完結させていく歌詞は、言葉選びのセンスを含めてすごく素敵。そして、その言葉がメロディとともにスーッと心に入ってくるんですよね。

 普段演じる仕事をしていると、脚本によっては一語一句に意味があるから、そのまま言ってくださいという方もいるので、演じるなかで言葉の大切さ、その言葉が持つ意味に惹かれるところがあります。なので歌を通して〈日本語の美しさ〉を伝えたいという思いがあります。ただ、ライヴなので、観客のみなさんが一緒に歌いたくなるというのも大切なので、選曲は、悩みます」

 セットリストは、当日のお楽しみにしておきたいところだけれど、前半の時間旅行のなかでキーポイントとなる曲を特別に教えてもらった。

 「テレサ・テンさんの“時の流れに身をまかせ”です。子供の頃、アイドルの歌を夢中で聴く一方で、テレサ・テンさんが大好きだったんですね。あの歌声! かわいらしくて、鈴を転がすような美しさもあって、とても魅力的でした。時代もあってか、他の曲は、耐え忍ぶ女性の心を歌ったものが多くて、〈待つ身でいいんです〉みたいな歌ではなく、今回は“時の流れに身をまかせ”を歌う予定にしています」

 さて、ここまで前半のテーマについてうかがってきたが、後半は、どんな構成になるのか。音楽監督を務めるのはNHKの「うたコン」の若き指揮者としても知られている岩城直也と聞いている。

 「後半は、大好きな映画音楽やディズニーの名曲を歌います。ディズニーの歌は、それぞれに世界観があるので、歌の中の人物だったり、歌の情景を表現しながら歌いたいと思っています。歌の世界の中にフッと入っていくように……。

 大切に思う曲は、いろいろあるのですが、今回音楽監督をお願いした岩城直也さんとセットリストを決める際に、彼と初めて出会ったNHKの番組『うたコン』で歌ったのが“リフレクション”(映画『ムーラン』主題歌)だったので、この曲の檀れいヴァージョンの日本語版をまず歌いたいと思いました。それと“夢はひそかに”(映画『シンデレラ』主題歌)です。今年3月に独立して、自分の思い描くカタチで、これからもっとどんなことができるのだろうかと思うところがあって、未来に向けての思い、願いをこめて、“夢はひそかに”で後半は始める予定です」

 後半は、“夢はひそかに”で始まるが、前半最後の曲と〈夢〉でつながっているなど、仕掛けがあったりする。彼女自身がこういう演出を考えるのを楽しんでいるように見える。

 また、ディズニー以外の映画音楽も、時代を超えて見渡せば、とんでもない数の名曲がのこされているジャンル。ここもまた選曲に悩みそうだ。

 「オードリー・ヘップバーンさんが学生の頃から大好きなので、以前にも歌ったことがある“ムーン・リバー”を、と思っているのですが、歌うのが本当に難しい。メロディがとってもシンプルな歌なので、全ての粗が出やすくて、ごまかすことができない歌です(笑)」

 と、ここまでライヴのお話を聞いてきて、そもそもというところで、宝塚時代は月組と星組トップ娘役で人気を博し、その歌声は、透明感があって可憐で、当然ながら、歌でストーリーを表現する歌唱力も持ち合わせている。退団後にミュージカルや音楽界で活躍している宝塚出身者は大勢いる。これまでにもっと早く歌うチャンスだってあったはずだ。

 それなのに本格的な音楽活動は、ここ数年のこと。2023年公開のディズニー100周年記念作品「ウィッシュ」のアマヤ王妃役で日本語版声優を務めてから、それと前後してライヴで歌うようになったり、ソロデビューも果たしたりしている。

 「映画『武士の一分』で映像の世界にデビューさせていただいて、同じ演じるでも舞台と映像の違いをすごく感じまして、そこから映像を中心に脇目も振らずにやってきました。歌を歌うことは大好きだし、嫌いじゃないんですけれど、私より素晴らしい人がいっぱいいると思って生きているので……。

 宝塚時代にヴォイストレーニングを東京公演中に2回ほど受けたことがありまして。その先生が子供の頃に好きだったヴォーカルグループの女性の方でした。その時に〈あなたはCDを出したいとか思わないの?〉と聞かれたのですが、すぐにありませんと答えた記憶があります。欲がなかったんですね」

 子供の頃、そのヴォーカルグループが地元にやってきた時、宿泊先で出待ちをしたことがあるそうだ。ビルボードライブ横浜ではその彼らの大ヒット曲も歌う予定だという。

 そんな知られざる檀れいの想い出を含む歌、また、彼女自身の華やかな女優のイメージだけではない、お茶目なキャラなど、さまざまな角度から楽しめる貴重な一夜になるだろう。

 


檀れい(Rei Dan)
日本の俳優。元宝塚歌劇団月組・星組トップ娘役。2006年、山田洋次監督作品「武士の一分」のヒロイン三村加世役でスクリーンデビュー。第30回日本アカデミー賞優秀主演女優賞及び新人俳優賞など数々の賞を受賞。〈エンターテイメントを通してHAPPYを届けていく〉という信念のもと、近年ではドラマ、映画、舞台のみならず、ライブ活動やCDリリースなど歌手活動にも力を入れている。
オフィシャルサイト https://dan-rei.com/
オフィシャルファンクラブ〈Sun-Ray〉https://sun-ray-fanclub.com/

 


寄稿者プロフィール
服部のり子(はっとり・のりこ)

音楽ライター。洋楽を中心に執筆し、TOKYO FM/FM大阪の番組「ジャー・パンファンと音楽の潮流」などで番組構成を担当。また、JAL国際線機内オーディオ洋楽、ジャズ番組の企画/選曲を担当。

 


LIVE INFORMATION
檀れい Premium night at Billboard Live

2026年11月13日(金)神奈川・横浜 Billboard Live YOKOHAMA
1st Stage 開場/開演:16:30/17:30
2nd Stage 開場/開演:19:30/20:30
https://www.billboard-live.com/yokohama/show?event_id=ev-21632