さまざまなフィールドで活躍する人気ボカロPが腕を振るった、絢爛豪華な魔法が次々と飛び出す魅惑のミュージアムにようこそ!

 クレモンティーヌとのコラボ曲“魔法使いのショコラティエ -Le Chocolatier Enchante-”の制作、声優ユニット・Sweetyのプロデュース、アーケード・ゲーム「beatmania IIDX 20 tricoro」への楽曲提供、さらにサンリオの人気キャラクター〈シナモロール〉関連のアルバム『Cinnamon Trip!!』の全曲書き下ろし——ボカロ系プロデューサーの枠を越え、活動の幅を広げ続けているOSTER projectが、ニュー・アルバム『Attractive Museum』をリリースした。「目標はいろんなジャンルの音楽、いろんな雰囲気の楽曲を作れるクリエイター。特にここ2〜3年はそのことを意識して曲を作っていました」という彼女。ボーカロイドを起用したオリジナル・アルバムの第3弾となる本作にも、アイドル風の可愛らしいポップスから、ボサノヴァ、ハード・ロックまで、極めて幅広い音楽性が反映されている。

 「タイトルの『Attractive Museum』は〈魅惑の博物館〉という意味なんですが、いろいろな種類の作品が展示されているイメージなんですよね。まとまりがない……ではなくて(笑)、ヴァラエティーに富んだ一枚にしたいな、と。もともと私は〈歌モノが作りたい〉と思ってボーカロイドを採り入れたんですね。ボーカロイドの声が可愛かったから、最初の頃はそういう(可愛い)曲が中心だったんですけど、そのイメージが定着してくると〈もっと違う音楽もできるということを示したい〉と思うようになって。(ニコニコ動画の)コメントで〈この人、いろいろ作れるんだな〉とか〈今回はこういう感じできたか〉みたいなことを言われると嬉しいですね」。

OSTER project 『Attractive Museum』 Subcul-rise(2014)

 〈童謡 × 渋谷系〉という雰囲気のポップ・チューン“おおかみなんかこわくないッ!”、サーフ・ロック系のサウンドを採り入れた“サマーアイドル”、中世ヨーロッパを舞台にしたRPGを想起させる“ドロッセルの剣”、和楽器入りのロックとシンフォニックなアレンジが融合した“狐ノ嫁入リ ”など、ジャンルの壁を軽々と越える楽曲が並ぶ本作。特に注目すべきは、20分を超えるミュージカル・テイストの楽曲“Music Wizard of OZ”だろう。ドラマティックな物語性を含んだメロディー、複数のボーカロイドにそれぞれのキャラクターを演じさせる構成からは、彼女の豊かなクリエイティヴィティーが伝わってくる。

 「昔からミュージカルやディズニー映画の音楽が好きだったし、“Alice in Musicland”(2011年に発表された初のミュージカル仕立ての楽曲)の続編をやりたいという気持ちも強かったんですよね。前作よりもしっかりストーリーが伝わる曲にしたいと思っていたから、どうしても尺が長くなってしまって(笑)。テーマは〈音楽は人の心を動かす魔法〉。私自身、音楽を通して大切なものに気付いたり、良い影響を受けたことが、現在に繋がってると思うんですよね。音楽をやってなかったら、いまはニートだったかもしれないなって」。

 根本にあるルーツはゲーム・ミュージック。さらにジャズ〜フュージョンや、渋谷系と呼ばれるアーティストの作品に親しむなど、さまざまな音楽を通過し、ボーカロイド・シーンで知名度を上げたOSTER project。その万華鏡的な音楽観は『Attractive Museum』によってさらなる高みに達したようだ。

 「いろんなことにチャレンジしてきたし、〈修業のまとめ〉みたいな感覚もありますね(笑)。今年はシンガーの方への楽曲提供も増えそうだし、インストの曲もバンバン作りたいと思っていて。ひとつひとつのジャンルを深めながら、自分の目標に向かって進んでいきたいですね」。

 

▼関連作品

左から、Sweetyの2012年のシングル“UNLUCKY GIRL!!”(ユニバーサル)、2013年のサントラ『beatmania IIDX 20 tricoro ORIGINAL SOUNDTRACK Vol.1』(KONAMI)、〈シナモロール〉のキャラクター・ソングを集めた2012年のアルバム『Cinnamon Trip!!』(dmARTS)

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 ここではOSTER projectの作品をおさらい! 初音ミクのソフト登場から間もない2007年9月に“恋スルVOC@LOID”をニコニコ動画で公開して注目を集めた彼女は、2008年に同曲を含む初のボカロ作品集『みくのかんづめ』(MOER)を発表。2009年には自主制作によるインスト集を『ねこのかんづめプレミアム』(Groove note)として復刻しました。2010年は、初音ミクのコンサート〈ミクの日感謝祭〉への出演が話題となるなか、ボカロ・アルバム第2弾『Cinnamon Philosophy』(5pb.)をリリース。2011年にはOSTER "BIGBAND" project名義の作品『GOSSIP CATS』(BALLOOM)で全編生録音のビッグバンド・サウンドに挑戦します。そして2012年、初のベスト盤『OSTERさんのベスト』(dmARTS)でそれまでの活動をまとめました。 *bounce編集部
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