フージーズの、という枕詞はまだ必要だろうか。スーパー・プロデューサー/MC、ワイクリフ・ジョン。カリブ文化の要〈Carnival〉をタイトルに冠したのは、97年のソロ・デビュー作、2007年の〈Vol.II〉、そしてピッタリ10年後の本作で3度目。副題が〈あるレフジーの転落と再起〉。〈転落〉は2010年以降の迷走を指す。資格がないのに故郷ハイチの大統領に立候補しかけて恥をかき、ハイチ大地震のチャリティーでは脱税疑惑。それらをくぐり抜けて出てきたサウンドは突き抜け、リリックは自虐気味。多彩なゲストの中で有名なのはエミリー・サンデーとコメディアンのDL・ヒューリーくらいだが、逆にプロデューサーとしての真価が際立った。持ち味の華やかなサウンドに渋みが加わり、終わらないカーニヴァルに招かれたみたい。ランチマネー・ルイスとの“What Happened To Love”、アフロビートの“Fela Kuti”など踊れる曲で盛り上がった後、ラストのゴスペル調〈カルチャーがあるから生き延びられた(意訳)〉で泣かされる。