満を持してメジャー・デビューを飾るシンガーソングライター・美波。自らの心中を嘘偽りなく吐き出しながら、リスナーの心にも確かに刺さる曲と歌声を放ち続ける彼女のメジャー・デビュー作は、聴き逃し厳禁の一作に!
美波の生み出す楽曲は、共感を呼ぶ。
彼女の楽曲のいちばんの特徴は、その心の中に抱えた棘や、日々感じる生きづらさを隠さずに表現のテーブルに乗せていること。そのまっすぐさゆえ〈若さゆえの〉と取られることもあるが、実はそこに描かれている感情は老若男女誰もが抱え、もしかしたら生活のために日々無意識下に押し殺しているかもしれないものなのである。
そのいちばんの好例が、YouTube再生回数700万回を突破し、メジャー・デビュー作のカップリングにも収録される“ライラック”だろう。その序盤には、〈変わらなきゃ飽きましたって 変われば変わりましたよねって〉といった一節が存在する。
一見、身勝手な理想を押し付けられる息苦しさを素直に吐露したシンガーソングライターならではのフレーズのようではあるが、同じように他人の理想を演じて窮屈にして、生きづらさを感じながらも堪えている人はいったいこの世にどれほどいるだろうか。そしてそれを入り口に共感を覚え、救われたり勇気を得られる人がどれほどいることか――このように彼女の純粋な想いの吐露は、その純粋さゆえに数多くの人に〈勝手な共感〉を与え、その胸に突き刺さるのだ。
それはメジャー・デビュー曲“カワキヲアメク”でも変わらない。TVアニメ「ドメスティックな彼女」のOPテーマに起用されたこの曲は語りから入るギター・ロックで、〈愛〉を渇望しながらもお手軽な愛情は拒絶するような心理を描いたものだ。それは〈正しい〉観点からは歪んで見えて、でもどこかに存在していそうな関係の描かれる「ドメスティックな彼女」との相性も良好。〈思いもしない 軽い(おもい)言葉〉という特殊な表記も、曲中の想いを実に的確に表現している。そんな想いを包み隠さず紡いだ歌詞を、感情をむき出しにして歌う点も、彼女の魅力のひとつ。ときに声を荒らげるといった表現でも生ぬるいほどに尖りとざらつきを持たせたボーカルもまた、リスナーの心を震わせる。さらにメロディと言葉も絶妙に噛み合っており、聴く気持ちよさが存在している点も見逃せないポイントだ。
また、デビュー・シングルには前述の“ライラック”も含め、通常盤・アニメ盤合わせて計4曲ものカップリング曲を収録。どれもインディーズ時代から人気を集めてきた楽曲で、そこにも彼女の心の内が、音と言葉に乗せてぶちまけられている。果たして彼女は、メジャーシーンにおいてどれほどの共感を呼ぶのだろうか。その動向から、決して目を離してはならない!