沢田研二が9年ぶりに出演する舞台「ガウディ×ガウディ」が2026年3月14日(土)から東京と大阪で上演される。スペインの偉大な建築家・ガウディの物語を、劇作家・マキノノゾミがロック音楽劇として書き下ろしたもので、ジュリーと渡辺大知(黒猫CHELSEA)がW主演を務める。そんな話題作の開幕を前に、俳優としても時代を鮮やかに照らしてきたジュリーの演技の魅力を、デビュー初期から近年までの映像作品を通して振り返る。 *Mikiki編集部


 

和田嘉訓, ザ・タイガース 『ザ・タイガース 世界はボクらを待っている』 東宝(2007)

1968年に公開された、記念すべきザ・タイガース主演映画第1弾「ザ・タイガース 世界はボクらを待っている」。前年に封切られた「ドリフターズですよ!前進前進また前進」でグループの一員として銀幕デビューを果たしてはいるものの、演技はなく演奏シーンをメインとした〈ゲスト出演〉だったこともあり、同作が本格的なジュリーの映画デビュー作だろう。そして、なべおさみ、小松政夫、小沢昭一ら〈THE昭和芸能〉な共演者たちに交じって、まだまだ慣れない演技に挑戦するジュリーの姿は新鮮そのもの。物語終盤、“シーサイド・バウンド”のライブシーンにて、ジュリーが「映画館でご覧の皆さんも、ご一緒にお願いします」とカメラ目線で観客に向かって声援を呼びかける場面は、黒澤明監督が初期作「素晴らしき日曜日」で試みた〈第四の壁〉を壊していく演出にも通じる、映画的快楽を呼び起こさせる名シーンだ。 *スミダマ

 

長谷川和彦, 沢田研二 『太陽を盗んだ男』 アミューズソフトエンタテインメント(2006)

1月末にこの世を去った伝説の映画監督、長谷川和彦による日本映画史に燦然と輝く大傑作「太陽を盗んだ男」。本作でジュリーが演じたのは、自力で原子力爆弾を作り上げて日本政府を脅迫する中学校の理科教師・城戸だ。原子力発電所から盗み出したプルトニウムをアパートの自室に持ち込み、「鉄腕アトム」のテーマ曲を口ずさみながら原爆の製作に注力していく場面、部品は金物屋で調達したものを使っていたり、キッチンのオーブンを使って加工したプルトニウムを熱したりと、日常生活のすぐそばで原爆が作り上げられていく展開は今観ても強烈だ。悪戦苦闘を経て原爆を完成させ、ラジオから流れるボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの“Get Up, Stand Up”をバックに喜びの舞を披露する城戸を解放的に演じてみせるジュリーの姿は、本作の白眉だろう。その後、自身が被ばくしたことを認識するシーンや、菅原文太演じる山下警部と繰り広げる死闘の場面など、忘れえぬ熱演が次々と登場。ジュリーの役者人生における最高傑作のひとつであることは間違いない。 *スミダマ

 

深作欣二, 沢田研二 『魔界転生』 東映ビデオ(2026)

ジュリーが生首で登場するオープニングから薄気味悪さに満ちている。描かれているのは、島原の乱で惨殺されるも幕府への復讐を誓い、悪魔に魂を売って甦った天草四郎率いる〈魔界衆〉が、隻眼の剣豪・柳生十兵衛と繰り広げる壮絶な戦いの物語だ。原作は、山田風太郎が生んだ天下の奇書。名匠・深作欣二が四郎役に沢田研二、十兵衛役に千葉真一を起用し、強烈なエネルギーでもって情念や官能、暴力が渦巻く空前絶後の傑作オカルトSF時代劇へと結晶させた。〈エロイムエッサイム〉と呪文を唱えるジュリーの美しさと妖しさを纏った鮮烈な佇まい、荒唐無稽なキャラクターに生々しい息吹を与えるその演技は、阿久悠の歌の世界に身を投じる時と同質の色気を放っている。また、火傷しそうなほど血走った千葉真一、ジュリーと接吻する当時20歳の真田広之、醜怪さがトラウマ級の緒形拳、室田日出男、若山富三郎らによる殺陣は圧巻だ。CGではなく実際にセットに火を放って撮影されたクライマックスの江戸城大炎上シーンまで、息つく暇はない。 *鯖江夏生