メタラーのジャズピアニスト西山瞳さんによる連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。今回は話題を呼ぶドリーム・シアターの来日公演について。日本武道館でライブを見た西山さんがミュージシャン視点でライブレポートを綴ります。 *Mikiki編集部
2026年2月25日、日本武道館で開催された〈AN EVENING WITH DREAM THEATER 40TH ANNIVERSARY TOUR 2026〉へ行ってきました。
冷たい雨の降る中、マイク・ポートノイが復帰し、最強の布陣となった現在のドリーム・シアターを見るために集まった観客たちを前に、プログレッシブメタル絶対王者の圧巻のパフォーマンスが繰り広げられました。
途中に休憩を挟む、2部構成。
前半はメトロポリス・シリーズ、後半は最新アルバム『Parasomnia』を中心としたセットリストで、文字通り2本立て映画のよう。19時定刻に始まり、22時直前に終演する、精緻に構成された3時間でした。
〈プログレッシブメタル〉は、今や一大ジャンルとなり、それだけを取り上げたガイドブックも出版されていますが、いつまでもプログレメタルの代表格であるのが、ドリーム・シアター。
90年代にメタルを聴き始めた私にとって、ドリーム・シアターは、当時最先端の難しくて格好良い音楽でした。長すぎるイントロ、多すぎる展開、分厚すぎるアレンジ、全てが過剰で、難しいけれど決して難解ではない。
ジャンルは違いますが自分自身もプロミュージシャンとなり、NHORHMの取り組みも経てから観るドリーム・シアターのパフォーマンスは、懐古的な喜びもありつつ、ミュージシャン視点でとても考えることの多い、濃密すぎる3時間でした。
今回は、ミュージシャン目線での感想を中心にレポートします。

まず最初に、私も擦り切れるほど聴いた『Metropolis Pt. 2: Scenes From A Memory』で始まりましたが、現代のライブ演出で演奏されるメトロポリス。目に飛び込んでくるそのビジュアルで、テクノロジーがドリーム・シアターの世界観に追いついたんだと、感激しました。
そもそも、大きく煽ったり激しく動きながら盛り上げるバンドではなく、聴くこちらとしても拍子がころころ変わるので、体を揺らそうと思っても揺らせない局面も多い。
スクリーンに映し出される映像が楽曲のストーリーを推進し、ギターソロやキーボードソロの時も、それを後押しするように映像が前に進める。これがとても気持ち良く、ライブへの没入感を高めます。スクリーンの映像もとても綺麗なので、本当にドリーム〈シアター〉だなあと感激しました。
そして、音の抜けの良さ。
この点も、テクノロジーがドリーム・シアターの演奏スキルに追いついたんだと思ったんです。
ジョン・ペトルーシのギターの音色、歪んだ音色もクリーントーンもしっかりクリアに届き、日本武道館のような広くて本来ライブ目的で作られていない会場でも、微妙な音色の変化がしっかりわかる。
ジェイムズ・ラブリエの表現力、特にウィスパー気味で歌う微細な表現とそのエモーションも、余す所なく伝わるし、バスドラムの肉感の迫ってくる感じがまた凄まじく、ダイナミックに鳴るけれどしっかり締まっていて、聴き手の腹に音波=衝撃としてフィジカルに伝わり、タム類やその他の抜けも良い。勿論爆音だけれども、これだけ要素の多い音楽をしっかり交通整理して届けられる技術は、昔は無かったものです。
開始すぐに驚いたのはこの点で、2026年の今だから、この複雑で精緻な音楽がこのような大きな場所で爆音でも、本来の意図に近い形できれいに伝わるようになったのだろうなと、時の流れを感じました。