自らのレーベルを立ち上げた攻めの一作!
イスラエルの名門校テルマ・イェリンからニュースクール大学を経て、ニューヨークのジャズ・シーンで活躍を続けるギタリスト、ギラッド・ヘクセルマン。昨年自らのレーベルHexophonic Musicを立ち上げて『Ask for Chaos』をリリースした。本作にはそれぞれメンバーもサウンドも異なるトリオの演奏が収められていた。アコースティックのgHex TrioとエレクリックのZuper Octaveだ。gHex Trioとして来日したヘクセルマンにこの二つの取り組みを中心に話を訊いた。「制作にあたって、二つのプロジェクトは同時進行だった。どちらもミュージシャンとしての自分の存在には欠かせないものだったからね」
gHex Trioはニュースクールの同期でもあるリック・ロザトのベースとLAのジャズ・シーンから登場した新鋭ジョナサン・ピンソンのドラムで編成される。「リックはベースに求めるものをすべて持ち合わせている。大きくて太いサウンドで、僕が違うハーモニーに移ってもすぐ付いてきてくれる。ソロのメロディとハーモニーに冒険心があるんだ。低い周波数帯をキープし、上の帯域でガチャガチャ弾くのではなくて、ベースとしての役割を果たしている。ジョナサンはドラマーに求めるクオリティ、テクニックに優れているのと、好奇心がとても強いことだね。ステージでも常に周りとの繋がりを感じさせるプレイをするんだ」
一方、Zuper Octaveはアーロン・パークスのエレクリック・ピアノやシンセ、クシュ・アバディのドラムで録音された。「アーロンは最高のピアニストの一人。彼の影響で僕の演奏も変わっていくんだ。一緒にやれてすごく嬉しいよ。繊細で常に全体を見ている。クシュはグルーヴィで太い音を出し、全てを併せ持つドラマーだ」
ニューヨークで成功を収めたヘクセルマンだが、常に新しい試みにチャレンジしたいという。「いろんな音楽を聴いて育ってきた。ジャズはもちろん、ポピュラー音楽も。だから音のパレットを僕はいっぱい持っているが、美しいメロディを聴きたい、そこから何かを感じたいという気持ちがすべての根底にはあるんだ。複雑だからいい、シンプルだからいいということではなくて、聴いた時に何かを感じさせてくれるものを求めている」
レコード・オンリーでのリリースで注目される新興ジャズ・レーベルNewvelle Recordsから、Zuper Octave名義でドラムにケンドリック・スコットを招いてライヴ録音された『Eyes Of The World』のリリースが控えている。ヘクセルマンが求める「何か」をレコードで聴けることを楽しみに待ちたい。