塩田哲嗣が設立した新レーベルSteelpan Recordsが始動!

 アメリカでベーシスト、レコーディング・エンジニア、プロデューサーとして活動し、ボストンの名門バークリー音楽大学ではプロデュースとエンジニアリングを専攻、リーダー・プロジェクトであるSFKUaNK!!での活動でも知られる塩田哲嗣が、自らレーベルSteelpan Recordsを設立した。“スティールパン”といっても、カリブ音楽が中心という意味ではない。CDよりも高音質なハイレゾ音源の普及をめざす塩田は、24bit96kHzの音源を物理メディアとして販売するために、手のひらサイズのお洒落な缶にUSBメモリを収めたパッケージを思いついたが、その缶からスティールパンを連想したという。また、スティールパンという楽器は、奴隷としてトリニダード・トバゴに連れてこられて、打楽器以外の楽器の演奏を禁じられたアフリカ人が、廃棄されたドラム缶を利用してメロディを演奏できる“打楽器”を作ったのが起源である。つまりスティールパンは、どうしても音楽をやりたいという強い想いが創意工夫を生むことを象徴する楽器で、その精神に倣うという意味もこのレーベル名にはこめられている。

左から、ベイ・シュー、Airi

 第1弾は、11月20日に発売されたニューヨーク在住の中国人ジャズ・シンガー、ベイ・シューの『Gravity』である。過去に発表した2枚のリーダー作も高く評価されたが、11年ぶりとなる本作ではピーター・マーティン(p)にルーベン・ロジャーズ(b)、ユリシス・オーウェン・ジュニア(dr)という鉄壁のトリオをバックに迎え、カーペンターズやクリストファー・クロス、尾崎豊など、幅広いレパートリーをしっとりとした洒脱なアレンジで堪能できる。また、12月18日には第2弾として、ユニークな声を持つシンガーで、DJとしても活動するAiri(アイリ)のデビュー作となるミニアルバム『Airi Is Her Name』が発売される。もちろんどちらの作品も録音はハイレゾで、ヴォーカルの質感の高さにはハッとさせられる。Steelpan Recordsの今後のリリースにも期待したい。