70年代日本のジャズの〈喜びの日々〉を映し出すレーベル〈Days of Delight〉
Days of Delight Quintet 『1969』 Days of Delight(2019)
1970年代の日本のジャズの時代精神とは何だったのか。〈実体験世代〉も少数派となってきた半世紀前のジャズシーンを俯瞰して再構成する〈Days of Delight〉レーベル・プロデューサーの平野暁臣氏によるユニークなプロジェクト第三弾。70年代日本のジャズへのリスペクトを表現するコンピレーション『Days of Delight Compilation Album -共振-』では主に70年代後半の日本コロムビア音源から若き日の向井滋春、日野皓正、渡辺香津美、杉本喜代志、森山威男らのベストプレイが見事に配置されている。そして新作『1969』では塩田哲嗣(ベース)を軸に曽根麻央(トランペット)、太田剣(アルト・サックス)、吉岡秀晃(ピアノ)、大坂昌彦(ドラムス)のスペシャルユニット〈Days of Delight Quintet〉が今日的視点での展開を行う。圧倒的な熱量と心地よい良い律動感を持った8曲にはストレートアヘッドな音楽が鳴り響いている。各々の自己のリーダーアルバムでも聴けないほどの突き抜けた演奏ばかりになっていることに驚くが、それはプロデューサーから与えられた課題が明快だった結果だろう。70年代の 〈喜びの日々〉は確かに現在に再生されて美しいオマージュともなっている。これら二作を座標軸の両極に並べて、あとは一刀両断に過去と現在の複雑な二重構造をバッサリ直裁に形象化しているのだ。
同じ頃、エレクトリック・マイルスも初期フュージョンもフリージャズやECMすらも日本のシーンに反映していた。ピットインで、ジャズ喫茶でこれらが混在して鳴り響いていた時代は誰もが〈ジャズの行方〉に迷っていた混迷期とも言える時代であったはずだ。そんな時代のシーンから〈ストレートアヘッドなジャズ〉を掬い取って痛快に〈キュレート〉してみせる。切れ味の潔さはたしかに岡本太郎のそれに通じるものを感じる。結論はシンプルであるがゆえ心に深く響く。