
進行方向別通行区分/古都の夕べの田中の影響
――しかしそんな音楽の作り方、聞いたことないですよ。
下田「(笑)。まさしはメロディーが作れないし、俺は伴奏がわからないし、ハコさんはアイデアが出ないけどハコさん抜きじゃ曲にならないし」
ハコ「下田さんはあんまり歌が上手じゃないから、私が聞き取って修正したり、調整したりしてあげてて。だから誰一人欠けても曲が出来ないんですよ。私が一人で作った曲もあるけど、滅多に出来ないし、絶対暗くなるし……。下田さんはキャッチーが過ぎて、たまにメロディーが童謡みたいになっちゃうよね」
――それはよくわかります。いまでも童謡っぽいところは残ってます。
下田「それも狙ってないけど……俺が作りたいのは童謡じゃない、ロックだ(笑)!」
――でも、普通のミュージシャンなら〈洋楽の誰々の影響で〉とかがあるけど、それもほとんどなさそうで。
下田「あるとすれば進行(進行方向別通行区分)とかかな」
――進行の田中さん節。相対性理論とかの真部節ではなく。
下田「田中節でしょうね、俺が好きなのは」
――で、すごいのがその田中さんのバンド(古都の夕べ)にいまハコさんが在籍してるっていうことですよね。
下田「御多忙を結成した5年前だったら信じられなかったよね」
ハコ「そうだね(笑)」
――下田氏はハコさんに〈今日の田中さんはどうだった?〉とか訊かないんですか?
下田「それはたまに訊くけど、興味があるのは作品であって、その人自体ではないから」
ハコ「男に興味ないし(笑)」
下田「俺の憧れだから話さなくてもいいし。でもすごい人ですよ」
ハコ「頭の回転が速いし、何でも知ってるし、ライブのまんまの人です」
――あと、今作を聴いてて思うのが、実はいちばん常識人っぽいまさし氏がけっこう変な音を出しているじゃないですか。マルチエフェクターに入ってはいるけど普通の人は絶対使わないおもちゃみたいな音色を使ってたりとか。
まさし「(笑)」
ハコ「時々まさしが出す音に笑っちゃうもんね」
下田「あるある」
まさし「このバンドに入るまで別のバンドをやっていて、その頃はずっとバッキングをやってたんです。自分のギターの始まりも、ゆずのコピーだし、コードしか弾けない。だからリフとかフレーズとかが一切わからなかったんです。でも御多忙をやるって時に下田さんが〈サビで普通のバッキングはつまらない〉って言ったんですね(笑)」
下田「うん、そう思ってた」
まさし「でも何も考えられないんだよな……って思って試行錯誤した結果がいまのスタイルで」
ハコ「変な音を出すとか?」
まさし「そう。どうやったら個性が出るのかと思って、でも王道のフレーズは弾けないし、スケールも1・2種しか知らないし」
下田「俺に言われて?」
まさし「そう。でもやってたら自分もおもしろくなってきちゃって」
――普通のコードを弾くだけのギターは、御多忙的にはおもしろくないということ?
下田「俺はあんまり好きじゃない。せっかくやるなら自分の好きなものに近いものになるといいなと思って」
――好きなものっていうのは?
下田「……進行ですよね」
――結局、進行(笑)。
下田「俺がずっと尊敬してる大好きなバンドは、進行方向別通行区分と、たまですね」
ハコ「たまいいね」
まさし「いいね」
――Mikikiの〈御多忙プピーピを作った10曲〉という記事でも、たまを選んでいて。
下田「そうそう。その2つはずっと変わらないリスペクトです。たまのギターはあんまりバッキングっていう感じじゃないですよね。進行での真部さんのギターも普通のバッキングと違うし」
まさし「まあ、そんなすごいことはできないんですけどね(笑)」
下田「元々そういうオーダーがあったっていうだけです(笑)」
まさし「でもそういうのができないから、変な音を出してたんですよ。そしたら二人がおもしろいって言うし、言われると僕も〈あ、いいんだ〉って思って、どんどんそっちにシフトしていったんだと思います」
下田「あとさ、HINTOをよく聴いてたよね」
ハコ「聴いてた~」
下田「あのギターが相当ヤバくて。歌メロとは別にギターのメロディーもあって、何回聴いてもおもしろいんですよね」
ハコ「HINTOの影響は大きいかもしれないね、忘れてたけど」
まさし「たしかに意識してたね」
下田「昔はギターのフレーズも歌って考えてたんだけど、最近はまさしがちゃんと考えてきてくれるんで、まさに成長ですよね。昔は〈マジで何も浮かばないな〉みたいな時も多くて」
まさし「最初の頃は苦戦してましたね。知識もないし、どうすりゃいいの?って」
ハコ「だって曲が変なんだもん、私たちもわからないよ(笑)」

クロスロードスタジオとM部さん
――ベースのほうはどうオーダーしてるんですか?
下田「ベースは100%ハコさんに丸投げです」
ハコ「でも、つまらないって言われる時もあるよね」
まさし「ベースに対する下田さんのオーダーがいちばんふわっとしてるよね。〈もっと動いて〉とか」
下田「知識がないからさ」
ハコ「もともと私もルート弾きが好きじゃなくって、でも歌も歌わなきゃいけないからどうしようってなって、弾けるのを弾いてるかな」
まさし「歌いながらよく弾けるよね」
ハコ「ベースが好きなんですよ。だからもともとヴォーカルを入れたかったんです」
――でもあのハコさん独特の歌声を使わないのも勿体ないとも思います。
下田「結局あと1人いても4人用のネタなんて思いつかないし」
――結局寸劇のこと(笑)。今作を作るのに関わったのは、3人と井上さん(レコーディング・エンジニア)だけですか?
ハコ「あと酒井さん」
――俺はレコーディングをちょっと覗いただけで何もしてないけど。井上さんには何か言われました?
下田「今回は何も言われなかったよね。初めてレコーディングした時は、“趣味はバンド~”にすごくいろいろ言ってくれて。でも、井上さんは俺らみたいな音楽について何も知らない人に対して、あえて指示とか出さないようにしてくれてるみたいで。だって井上さんが指示出しちゃうとそれになっちゃうから。〈おかしいですか?〉って聞いても〈おかしいかどうかを決めるのはお前だ〉って言ってくれますね。でも、〈合ってるか合ってないかで言えば合ってないけど〉とも言われた(笑)」
――井上さんも本当はいろいろ言いたいんじゃ(笑)。じゃあそれは後ほどご本人に聞いておきますね。
下田「あと井上さんが某M部さんに我々の音を聴かせてくれたみたいで、いいと言ってくれたとかくれてないとか。それがウチのバンドの活動のピークですね」
まさし「でもさ、ハコちゃんはM部さんと対バンしてるじゃん。古都の夕べとS団行動で」
ハコ「でもそんなこと聞けないよ(笑)! 私、対バンの人と仲良くなれないし」
下田「ハコさんもほぼ一般人ですから。ミュージシャンじゃない(笑)」
――じゃあ最後に。今後、御多忙の音楽が広まってほしいっていう気持ちはありますか?
下田「そりゃありますよ、バンドをやってる以上は。いろんな人に聴いてもらえたら嬉しい。けどそのための努力とかはそんなにしてない(笑)」
まさし「怠惰(笑)」
ハコ「売れたい、か……。何も気にしてないや」
――中長期の目標があって、いろいろ達成できたわけで、いまの目標はありますか?
下田「最近の目標なんてない気がする……」
――いま作ろう!
ハコ「……辞めない」
下田「そうだよな」
まさし「続ける」
ハコ「解散しない」
――それはいちファンからすればいちばんありがたいことです。
下田「ハコさんはともかく、俺もまさしも誰ももらってくれないし(笑)」
まさし「このバンドがなかったら確実にバンドやってないし(笑)」
――じゃあ長く続けてくださいね!
レコーディング・エンジニア井上勇司さん(クロスロードスタジオ)からのお言葉
これからも仲良く、ゆっくりじっくりバンドである事を楽しんで下さい。
仮にめちゃ売れて通帳に振り込まれた金額に驚いても決して揉めないで下さい。揉めるくらいならクロスロードスタジオで引き受けます。
LIVE INFORMATION
GARAGE年末イベント AD再騰就任シリーズ2019FINAL "さよなら2019 さよならAD"
2019年12月30日(月)東京・下北沢GARAGE
出演:
【AD再騰就任シリーズstage】
ADBANDTHENX/バスクのスポーツ/OOPS! PIG PALE ALE INC./御多忙プピーピ/seijishukyoproyakyu/エンヤコーラーズ
【fr.BASE”TABLE&DESK”stage】
AD再騰二三夫/ベントラーカオル/イケダトモユキ/Nomi(バスクのスポーツ)/ティンカーベル初野/前田徹/らすてぃー(茶封筒)
【Opening Anime Song DJ】
DJ Nyanpassed-Lab.
開場/開演:12:00/13:00
料金:2,500円(ドリンク代別500円)