ワーナーミュージックの洋楽名盤シリーズ〈FOREVER YOUNG〉と連動した定番リイシュー作品を紹介する連載! 今回はドナルド・フェイゲンと後期スティーリー・ダン、クリストファー・クロス、マイケル・マクドナルドらAOR系統の作品をご紹介!

 洋楽名盤をリイシューするワーナーミュージック発の〈フォーエヴァー・ヤング〉シリーズからタイムレスな定番タイトルを紹介していく連載。今回は5月14日に登場する第7弾より、広い意味で(日本で言うところの)AOR系統と括られるような名盤揃いのラインナップを合計23タイトル紹介します。

 まずは日本ではAORの代表格と目されることも多いドナルド・フェイゲン。そのソロ作4枚が一気に登場するほか、彼とウォルター・ベッカーが組んだドナルド・フェイゲンの再結成後の3タイトルも併せてリイシューされます。また、ジャズを導入したアルバム・オリエンテッドな作風を聴かせるリッキー・リー・ジョーンズの3作品、繊細なスムース・ジャズを聴かせる名匠マイケル・フランクスの2作品も、広い意味でのAORとしてラインナップされています。

 そして、近年ではヨット・ロック文脈でも評価されるクリストファー・クロスの2作品、ラーセン・フェイトン・バンドの2作、ドゥービー・ブラザーズ系ではマイケル・マクドナルドの2枚とパトリック・シモンズのソロ作、さらにキャロル・ベイヤー・セイガー、デヴィッド・パック、ロビー・デュプリー、ヴェイパー・トレイルズ……そんな多種多様な名盤たちを改めて紹介していきましょう!

 

DONALD FAGEN 『The Nightfly』 Warner Bros./ワーナー(1982)

スティーリー・ダン活動停止の翌年に届けたソロ・デビュー作。プロデューサーのゲイリー・カッツやエンジニアのロジャー・ニコルズらスタジオに集った布陣はグループ時代と大きく変わらず。当時としては珍しいデジタル録音への取り組みも緻密な完璧主義に拍車をかけた。代表的な名曲“I.G.Y. (What A Beautiful World)”を筆頭に知的なジャズ・ロックが並び、全米11位を記録。

 

DONALD FAGEN 『Kamakiriad』 Reprise/ワーナー(1993)

カマキリ型のハイテク車に乗る未来を描いた、11年ぶりのセカンド・アルバム。引き続き多くの演奏陣が名を連ねているが、ウォルター・ベッカーがプロデュース/演奏で参加したこともあり、スティーリー・ダンの色が濃くなっている。“Florida Room”はこの年フェイゲンと結婚したリビー・タイタスとの共作。全米10位を記録し、グラミーの〈年間最優秀アルバム〉にノミネートもされた。

 

DONALD FAGEN 『Morph The Cat』 Reprise/ワーナー(2006)

ソロ3部作の完結編という位置付けで登場した、セルフ・プロデュースによるサード・アルバム。若者目線で作られた『The Nightfly』、中年の視点による『Kamakiriad』に対し、今作は老人の視点で〈終焉〉をテーマに描かれているそう。御大ヒュー・マクラッケン(ギター)をはじめ、フレディ・ワシントン(ベース)やキース・カーロック(ドラムス)らスティーリー・ダンでも演奏する敏腕が参加。

 

DONALD FAGEN 『Sunken Condos』 Reprise/ワーナー(2012)

現時点での最新オリジナル作となる4作目。トゥルース&ソウル〜ダップトーン系のマイケル・レオンハートが共同プロデュースを務め、ジョン・ヘリントン(ギター)らスティーリー・ダンのライヴ・メンバーたちも集まって、円熟味と軽さが緻密に入り交じったコンテンポラリーなヨット・ロックを心地良く聴かせる。アイザック・ヘイズ“Out Of The Ghetto”のカヴァーも収録。

 

STEELY DAN 『Alive In America』 Giant/ワーナー(1995)

『Kamakiriad』を経由して再結成を果たしたコンビが15年ぶりの新作として発表し、この体制では最初で最後となった公式ライヴ盤。93〜94年に行ったツアーの模様を収め、“Reelin’ In the Years”や“Kid Charlemagne”、もちろん“Peg”、さらに“Third World Man”などが満遍なく選ばれたベスト盤的な構成も嬉しい。ウォルター・ベッカーの94年作から“Book Of Liars”も披露。

 

STEELY DAN 『Two Against Nature』 Giant/ワーナー(2000)

80年の『Gaucho』以来、実に20年ぶりのスタジオ作品となった通算8作目。初めてフェイゲンとベッカーの共同プロデュースという形を取り、それぞれに成功を収めてきた両名ならではの洗練と成熟が往時のジャズ・ロック作法をよりコンテンポラリーな親しみやすさへと導いている。待望感もあって全米6位まで上昇し、グラミーでは〈年間最優秀アルバム〉を含む4部門に輝いた。

 

STEELY DAN 『Everything Must Go』 Reprise/ワーナー(2003)

貫禄の全米9位を記録した9作目。マクラッケンやヘリントン、カーロックらツアー・メンバーとのバンド演奏をそのままライヴ形式でアナログ録音するという、彼らにしては異例の生々しさを意識したプロセスで制作された。ベッカーが初めてリード歌唱を担った“Slang Of Ages”も収録。2017年にベッカーが逝去したため、結果的にコンビでは最後のアルバムとなった。

 

RICKIE LEE JONES 『Rickie Lee Jones』 Warner Bros./ワーナー(1979)

〈浪漫〉という邦題もノーマン・シーフ撮影のジャケも実にハマっている。ローラ・ニーロも引き合いに出されるほどの歌の佇まいと表現力、トラディショナルなポップスやジャズを取り込んだ洒脱な音世界で一躍ブレイクを果たした才人の、全米3位を獲得したファースト・アルバム。ここから“Chuck E.’s In Love”が全米4位の大ヒットを記録し、翌年のグラミーでは最優秀新人賞を受賞した。