Mikikiがいま観てほしいアーティストを揃えたライヴ・イヴェント〈Mikiki Pit〉。その第9回が7月13日に東京・下北沢GARAGEで開催されました。POLLYANNA、御多忙プピーピ、ジオラマラジオ、侍文化の4組を迎えたこの日の模様を、当日のライヴ写真とともにお伝えします。また本文中に楽曲PVやライヴ映像(当日のものではありません)へのリンクもありますので、ぜひそちらもお楽しみください。
POLLYANNA
この日の一番手はPOLLYANNA。ドラムス・ワタナベタカシ、キーボード・飯島快雪、ベース・斎藤モトキ、ギター・qurosawaの男子4人に続いてヴォーカル・伶菜が姿を現し、1曲目の“pantomime”からスタート。ウォーキング・ベースでジャジーな演奏に、伶菜の小悪魔的な歌声が乗るこの曲は、今年リリース予定のアルバムのタイトル曲だとか。飯島のクールなキーボード・ソロも炸裂し、客席の視線を一気に集めていく。2曲目はファースト・ミニ『CIRCLE』より、〈最新型渋谷系〉を体現する疾走オシャレ・ロック“Furniture and Moving”。〈スーパー・ギタリスト! qurosawa!〉と紹介されると、qurosawaがギター・ソロをクールにかき鳴らす。簡単な挨拶の後は、セカンド・ミニ『Breaking News』収録曲“いない・いない”と“らせん”へ。男子4人のテクニカルな演奏と切ないコード感が組み合わさり、〈これぞPOLLYANNAの真骨頂〉といった感じ。
MCでは伶菜が強い女をアピールをして笑いを取りながら、これまた新作に収録予定のミディアム・ナンバー“量子もつれとわたし”へ。そのまま最後には、〈POLLYANNAを作った10曲〉で後からバンドに加入したワタナベと伶菜の2人が選曲した“Wandering on the satellite”をパフォーマンス。実は久々の演奏だったというこの曲、リーダー飯島いわく、やはり記事の影響もあって今回のセットリストに組み込まれたとのこと。メロディメイカー・斎藤モトキの生み出す美メロと勢いのある美しい展開、そして色気も元気も振りまく伶菜のヴォーカルが印象的で、イヴェントの幕開けにふさわしい熱気と爽やかな風を客席へ送りこんでくれた。
SETLIST
1. pantomime
2. Furniture and Moving
3. いない・いない
4. らせん
5. 量子もつれとわたし
6. Wandering on the satellite
御多忙プピーピ
二番手は、自称〈しょうもない・下手・不安定の三拍子〉が揃った3ピース、御多忙プピーピ。ベース・ヴォーカルのハコ、ギター・まさし、ドラムス・下田の3人はサングラスを装着して登場する。荘厳な映画音楽と共に登場すると、下田が〈この辺りにエイリアンがいるらしい、ここで通報があった〉と語りながら寸劇スタート。観客は一気に異様な空気に引き込まれる。エイリアンが隠したウエポンを探すことになった3人が舞台上をウロウロすると、それぞれギター、ベース、ドラムス(型のウエポン)を発見。〈本部から通信が来ている。このウエポンが楽器になるだと!? 確認してみてくれ〉〈え!? 俺たちがライヴを!? いや、しかし……分かりました、命令なら仕方がない〉と言いながら、しぶしぶライヴをスタートさせる。しかしここで曲の出だしを間違えるという本物のハプニングが発生し、客席は笑いに包まれる。
まずは未発表曲“ローマでピングポング”から始まり、ファースト・デモ『取り急ぎご確認下さい』より“今日のおもちゃ”、未発表曲“シュレディンガー定食”と立て続けにパフォーマンス。〈余命2か月の人からメールだ/遺産もらえるから今すぐ登録だ〉や〈お店に入るまで/(定食の)価格設定わかりまふぇん〉といったシュールな歌詞やちょっと未熟な演奏に、最初はお口ポカーン状態だった観客たち。しかしだんだんと勝手が分かってきたようで、あどけないハコの歌声や、まさしの珍妙なギターリフが、次第にクセになってくる。
“だんご三兄弟”に乗せて歌われるメンバー紹介を経て、〈チャーリーシーンの名シーン/キアヌリーブス21〉といったしょうもない親父ギャグが連発される(けれど実は「名探偵コナン」がモチーフの)楽曲“ハワ親”と続くと、今度は突然、バンドの加入面接の寸劇がスタート。下田が面接官から特技を聞かれると、〈特技はクロスダンスです〉と語る。そこからワウ・ギターが炸裂するファンキーな新曲“クロスダンス”へ突入。間奏で下田が膝で手を交差させる高速クロスダンス(って名前だったんですね)を披露すると、会場から歓声と爆笑が沸き起こる。最後は某マンガの登場人物を歌った新曲“ブチャLOVEティ”、バンド結成についてコミカルに歌った“趣味はバンドと言いたくて”をパフォーマンスすると、ハコが〈この光を見たら今日の任務の記憶は消える〉と言い、レンズ付きフィルムで客席と一緒にパシャリ。〈任務完了! これより帰還する!〉と言い放ち、大きなインパクトを残して舞台を後にした。
SETLIST
1. ローマでピングポング
2. 今日のおもちゃ
3. シュレディンガー定食
4. ハワ親
5. クロスダンス
6. ブチャLOVEティ
7. 趣味はバンドと言いたくて
ジオラマラジオ
夜空に輝く星のような電球が輝くステージに登場したのはlen(ヴォーカル)とさかきばらみな(キーボード、ヴォーカル)の2人と、4人のサポート・メンバー。さかきばらとlenが切ない歌声を交互に聴かせる未発表曲“絵空模様”からライヴはスタートし、ダークでヘヴィーな雰囲気から一気に視界が広がる壮大なナンバー“さよならレディ・スターダスト”、甘酸っぱさを前面に押し出した未発表曲“orange”と続いては、独特の世界観を演出していく。
〈ジオラマラジオを作った10曲〉で映画「ゾンビ」および「ショーン・オブ・ザ・デッド」にインスパイアされたと明かしてくれた“Zombies!”では、気怠そうなlenのヴォーカルとローファイな演奏で、どこか懐かしいゾンビの世界へ。そのまま、さかきばらのほか、スティーブン・ビチャルバーグ(ベース)、Phill Kenta(ギター)、tel(ギター)、奥村大爆発(ドラムス)の4人のコーラスも重なっては、幻想的な夏の一日のようなサウンドを奏でる“telephone card”まで、5曲ノンストップでパフォーマンスを披露してくれた。
lenがイヴェント出演に対してどこか照れ臭そうに感謝の言葉を述べると、現状唯一のリリース・アイテムであるカセットテープ『ZOMBIE CASSETTE』に収録の“薄荷”へ。男女ヴォーカルの絶妙なハーモニーで爽やかな風を吹かせ、下北沢GARAGEを甘く切なくノスタルジー溢れる空間へと一変させたのであった。
SETLIST
1. 絵空模様
2. さよならレディ・スターダスト
3. orange
4. Zombies!
5. telephone card
6. 薄荷
侍文化
トリを務めるのは4ピース・YouTuberバンド、侍文化。全員が作務衣で登場すると、そのままテクニカルなギターと濱野祐輝の真っ直ぐなヴォーカルが光る“虚の蛻”、そして皮肉っぽいワタナベタカシのドラムヴォーカルが特徴的な“落伍者”と続く。大澤伸広のベース・ソロ、qurosawaのギター・ソロも交えつつ、濱野・ワタナベの2人が交互に歌い、のっけから4人でフルパワーを発揮。
MCではqurosawaが下北沢GARAGEでの思い出を語りながらエモい気分に。エモさはそのままに、美麗ファルセット&ひねくれ歌詞でワタナベの世界観が全開な〈幸せになれる曲〉“H.A.P.P.Y”へ突入。そのまま濱野がしゃがれ気味に歌うヘヴィーなロック“HNC”、コミカルさとカッコ良さを併せ持つ(けど歌詞は〈再生回数を稼ぎたいんだ〉な)“開戦前夜”へ続くと、フロアのテンションは最高潮。ワタナベのコーラスを客席に真似させるコール&レスポンスになり、ワタナベが美声に混じって〈わー……プピーピ〉とコールしては観客の爆笑を誘う。
MCでまたもや笑いを取りつつ、そのまま超ハイテンポなラスト・ナンバー“TENGU”へとなだれ込み。ワタナベは高速ドラムスを叩きながらのヴォーカルで息も切れ切れになりながら、あっという間の6曲を駆け抜けてステージを去って行くのであった。……が、拍手が鳴り止むことはなく、もともとやる予定のなかったアンコールに応えることに。〈何やる? 何やる?〉と言いながら、ワタナベは〈“Smoke On The Water”を小馬鹿にした〉という歌って踊れるナンバー“ZOO”を選曲。限りなくコミカルに、しかしキメるべきところはきちんとキメるパフォーマンスで、フロアーを再び熱狂させたのであった。
SETLIST
1. 虚の蛻
2. 落伍者
3. H.A.P.P.Y
4. HNC
5. 開戦前夜
6. TENGU
en. ZOO