
古都の夕べではベース・ヴォーカルを担当し、過去にはthe chef cooks meでコーラスを務めたこともある紅一点のハコ(ベース・ヴォーカル)と、バンドを組んでからドラムスを始めた下田、バンド結成当初にギターを売ろうとしていたまさし。御多忙プピーピの3人は、ミュージシャンというより限りなく一般人に近い(とは本人たちの弁)。けれど、CD-Rでリリースされた初作『取り急ぎご確認下さい』における音楽理論をまるで無視した楽曲と、寸劇を交えた彼らのライブ・パフォーマンスは、ごくごく一部の物好きには引っかかるものがあり、Mikikiではレビューで取り上げ、ライブ・イベント〈Mikiki Pit Vol.9〉にも招聘。その結果、〈Mikiki Pit〉ではオーディエンスだけでなく出演者までもが驚きと爆笑の渦に包まれた。
そんな3人が10曲入り(※)のファースト・アルバム『パフェはジャリ』を、ライブ会場の物販限定で12月30日(月)にリリース。近くストリーミングでの配信や通販も予定されているという。(※10曲のうち3曲が『取り急ぎご確認下さい』からの再録、1曲は新録、残りの6曲は新曲) 素人同然の3人が生み出す音楽が、なぜごくごく一部の人には病みつきになってしまうのか、3人に話を訊いた。
そしてインタビューの最後には、『パフェはジャリ』をレコーディングしたエンジニア、井上勇司氏(クロスロードスタジオ)から3人への激励のメッセージも掲載する。

あなたはパフェの食感について考えたことがありますか?
――〈Mikiki Pit Vol.9〉、出演していただきありがとうございました。
下田「いいイベントでしたよね、みんないいバンドで。いままで出たライブのなかでいちばん良かった」
――前作(『取り急ぎご確認下さい』)の内容が衝撃的で、ライブを観たらもっと衝撃的だったので絶対に出てもらいたくって。前作はどれくらい売れました?
下田「200枚行ってないくらいですね。CD-Rで遂次焼いてたから在庫もないし」
ハコ「今回新作が出るので生産は終了しました」
――前作の5曲のうち4曲は今作にも入ってるわけだしね。今作も、この独特の脱力したジャケはハコさん画で。
ハコ「私、何かをやれって言われるとできなくなっちゃうんですけど、下田さんに今日こそは描いてって言われて。飲み会帰りの深夜にね」
下田「このCDを売る予定の年末のライブがいよいよ迫ってきてるからね。ハコさんの絵の世界観いいでしょ」
――たしかに(笑)。タイトルの『パフェはジャリ』というのは?
ハコ「今作にも収録されている“クロスダンス”っていう曲があるんですけど、もともと“パフェはジャリ”っていう曲になる予定だったんですよ。酒井さん(インタビュアー)、パフェの食感で大事にしているものってあります?」
――え、パフェの食感!? 考えたこともなかったです。
下田「パフェはジャリジャリ感が楽しめるのが大事だよねって」
まさし「ほら、下のほうにコーンフレークが入ってて、ジャリジャリしてるじゃないですか」
――え、あれ無くてもいいなあ!
下田「うわあ~……一定数いる〈ジャリ要らない派〉だ!」
ハコ「私と下田さんは〈パフェジャリ派〉で、まさしは何も感じてない人」
――ジャリって食感、そんなに大事!? コーンフレークじゃなくてスポンジだけでもいいんじゃ。
下田「もうそれパフェである必要ないじゃない」
ハコ「みたいな話から“パフェはジャリ”という曲を作ろうとしてたんですよ」
下田「その日、三軒茶屋のクロスロードスタジオでレコーディングをする予定で、向かってる途中に、エンジニアの井上さんの体調が悪くなってレコーディングが中止になっちゃって。喫茶店に入ってパフェ食べててね」
ハコ「〈ところでまさしはパフェどんなのが好きだい?〉とか言ってて(笑)。〈パフェはジャリだよね〉〈じゃあそんな曲作ろっか〉ってなって、公園でパソコンに打ち込んで、出来た曲がなぜか“クロスダンス”(笑)」
一同「(爆笑)」
ハコ「で、その言葉を使わなかったから、アルバム名にしようってなってね。だからジャケットもパフェのグラスの絵なんです」

まさし「この子は何を持ってるの?」
ハコ「レジ袋。ネギが出てるんだよ」
――なんでパフェにネギ(笑)。
ハコ「よくわからない」
下田「我々も説明できないんですよ(笑)。でも、これがハコさんの絵の良さなんだよ。酒井さんは〈ニュルニュル派〉?」
――俺は〈パフェはニュル〉だな~。
一同「(爆笑)」
ハコ「まあ、それぞれ思い思いの食感でいいんですよ。ジャリじゃなきゃダメな訳じゃないので。ただ、私は〈パフェはゴリ〉でも〈パフェはガリ〉でもいいから食感が欲しくて」
――ソフトクリームって先端がいちばんおいしい気がしない? ケーキだったらいちばんとんがってる先端のところ。だからパフェも最初のニュルが大事。ハコさんたちは食べ応えが大事なんですね。
下田「パフェのいいところって、すべての食材が細いグラスに入ってて、だんだんグチャグチャになりながら食べる感じだと思っていて。クリームとアイスと別の味のアイスとチョコの棒とかがグチャグチャになって、ひとつのうまいものに変化していく。その時にジャリッと感があると無いとじゃ全然食べ応えが違うんですよ」
まさし「食感のアクセントね」
――まさし氏もそれは必要なんだ。要らない派じゃなくて。
まさし「要る要らないより、言葉がすごくいいなと思って。『パフェはジャリ』って半濁音と濁音が入ってるし。〈御多忙プピーピ〉もそうじゃない(笑)。語呂もいいし、言葉としておもしろいからいいなと思って」
下田・ハコ「ああ~」
――なるほどね、食べ応えか……。だからアルバムも食べ応えを大事にしてる、と。
下田「関係ないっす(笑)」
ハコ「それはまったく考えてなかったですね(笑)」
まさし「(爆笑)」
――でも、そういう価値観が3人で共有できるのはいいなって思います。
下田「いやいや、みんな〈パフェはジャリ〉派だよ。酒井さんがレアケース」
――俺は〈パフェはフニャ〉!
下田「〈ニュル〉じゃないの?」
――あ、〈パフェはニュル〉だ(笑)!
一同「(爆笑)」

演奏が下手だから、おもしろい寸劇を
――それではバンド結成の話から簡単に聞かせてください。
ハコ「私は高2からベースを始めたんですけど、田舎だから身の回りで一緒にバンドをやる人がいないし、東京に出てきても忙しくて余裕がないし。その頃に下田さんと出会って、その後に転職もしたから、ようやく余裕ができてきてバンド組みたいなってまた思い始めたんです。で、下田さんの大学の後輩のまさしがギターやってたって聞いたから、まず、まさしと組むことにして。でも当初は歌うつもりもなくって、ヴォーカルとドラムスがいないなってことで。でも人見知りだから知らない人を入れるのは嫌だったし、気は進まないけど楽器をやったことがない下田さんにドラムスをお願いしよっか、ってなったんです。ヴォーカルはいつか入れるつもりだったけど、だんだん3人で固まってきちゃって、いまに至るという」
――まさし氏は下田氏の何の後輩?
下田「大学の委員会ですね。これもバンドに通ずるところで、俺とまさしは学園祭実行委員会の企画担当をやっていて、ミスコンをやったり、ビンゴ大会を企画したり。そこで俺もまさしも相当おもしろネタみたいなやつを考えていて」
まさし「なかでもビンゴ大会がいちばんおもしろかったんですけど、ビンゴそのものじゃなくて、必ず演出みたいなものを入れて、それがおもしろかったんです。そういう演出とか企画が、ライブの時の寸劇に活きていて」
ハコ「この話、初めて聞く人には伝わるかな~」
――ライブでは必ず凝った寸劇を入れてるしね。最初から曲のほかに寸劇もやろうとしてたんですか?
ハコ「それが違うんですよね。第1回ライブの時はあまりに演奏が下手だから、これじゃお客さんがかわいそうだと思って、ライブ以外でおもしろいことをしようっていうネガティヴな気持ちで寸劇をやってたんです。演奏が素人すぎるし、私たちの方向性として、いいバンドを目指すのは無謀だったし。で、ライブをする度に、〈また寸劇をおもしろくしたい〉ってそっちがメインになってきちゃって」
まさし「ビンゴ大会のノリで、おもしろネタを考えるほうが楽しくってね」
ハコ「私はそれがおもしろいかどうか判定するだけ(笑)」
まさし「でもハコちゃんもすごくアイデア出てくるよね」
ハコ「出てきたっけ……」
下田「ハコさんは多才なんですよ。声もおもしろいし、着眼点もおもしろい。結局ハコさんがいちばんおもしろくなっちゃう」

これからバンドをやる人必見! 音楽の作り方
――で、曲の話にはいつなるの(笑)!?
下田「そりゃそうですよ! 俺たちバンドですよ!」
まさし「ネタの話ばっかりで」
下田「実は結成していちばん最初のバンド会議の時に立てた中長期の目標があって、オリジナル曲を1曲作るということ。とにかく1曲できるようになる。だってその時はドラムスを叩いたことないヤツがいたんですよ? で、次の目標がライブをすること」
ハコ「え、そんなのあったっけ?」
――中長期っていうか、短期で達成できそうな目標だけど(笑)
下田「いや、それが1年以上かかったんですよ。2014年の8月2日に結成して、1年以上経った2015年の11月に初ライブでした」
まさし「当時の自分たちからしたら長期でしたね」
ハコ「全然覚えてない……ヤバい」
下田「で、最終的な目標は、友達の岡山ガールズコレクションというバンドと対バンすることだったんですけど、解散しちゃって(笑)。じゃあ別の目標を、と思って、ユッカちゃんってバンドと対バンしたいと思ってたのに、それも解散しちゃって」
――好きなバンドは目標に挙げないほうがよさそう……(笑)。で、最初に出来た曲は何だったんですか?
下田「“趣味はバンドと言いたくて”かな」
ハコ「あれ最初だっけ」
――歌詞の通り、バンドの結成秘話が1曲目の曲になったんですね。
下田「最初はバンド名の候補が〈趣味はバンドと言いたくて〉だったんですよ。でも〈それって曲っぽくない?〉って話になって、まさしがギター・リフを考えてきて」
まさし「歌メロも何もなかったけど、リフと全体的な流れだけを考えて」
――で、バンド名のほうは〈御多忙プピーピ〉になって。それはなぜ?
下田「その時にあった候補のひとつで、打ち合わせが何度もリスケになったから〈御多忙〉で」
まさし「一度〈御多忙パーティー〉になりかけませんでした?」
下田「なったなった」
まさし「〈御多忙パーティー〉になったんだけど、下田さんが〈ウチらパーティー感ないよね〉って話をして、なぜか知らないけど〈プピーピ〉になったんですよ(笑)」
ハコ「〈プピーピ〉はたしか下田さんが好きな発音だった気がする。〈変な言葉が俺は好きだ〉とか言い出して作った言葉」
まさし「ネットで検索したら出てこなくてね、それは意識した。本当に何でもない言葉です」
――で、そこから1曲目が出来て。メロディーはどうやって作ったんですか?
下田「メロディー大会をやるんです。作ってきてくれた演奏だけの打ち込みに、3人がカラオケみたいにして歌メロを考えて。誰のが一番よかったか投票して」
ハコ「誰のになったんだっけ?」
下田「俺のだよ(笑)!」
ハコ「ふ~ん、良かったじゃん」
まさし「おめでとう(笑)!」
下田「5年越しに言われた(笑)。その時すでに歌詞もあって、歌ってたね」
ハコ「私は下田さんが持ってくる歌詞にケチをつけることが多いよね。言葉回しが気持ち悪いから」
まさし「まあ自分が歌うからね」
下田「そうそう、ケチをつけられる」

御多忙プピーピは令和日本のシャッグスだ
――でもそうやって1曲出来たら目標その1が達成になるわけで。それで、2曲3曲と作っていった?
下田「けっこう並行して作ったよね」
まさし「あの頃は同時進行で曲を作ってました」
――以前、メロディーは下田氏がお風呂で鼻歌を歌って作るって聞いたんですけど。
ハコ「曲作りにはパターンがいくつかあって、〈下田お風呂鼻歌系〉の曲は、風呂場でiPhoneのボイスメモで録音して、みんなに披露して、音の調整を私がする。それ以外のパターンだと、まさしが作ってきたギター・リフから曲を組み立てていく時と、私ががっつり打ち込んでくるパターンがあります」
――じゃあ曲によって作詞作曲する人が違うんですね。一人が作っているようにしか思えなかった。
ハコ「違いますね。スタジオに入ってみんなで編集していくうちに、空気が御多忙っぽくなっていくんですよね」
下田「いつも作り立ての時は〈いままでの御多忙になかった曲だな〉とか言っておきながら(笑)」
ハコ「みんなでつついてるうちにいつもの感じになっちゃう(笑)」
――バンドやるにあたって作詞作曲方法とかは勉強しました?
下田「誰もしてないね」
ハコ「してない上に、みんな音感があんまりよろしくなくて(笑)」
下田「二人(下田とまさし)とも歌がへたっぴで、音のことはよくわからないんですよ」
ハコ「完全に不協和音なのに、何が変なのかもよくわからないしね」
――それがあの独特の雰囲気を生んでるのか! じゃあ、何をもって正解とするんでしょう?
下田「ハコさんの正解が正解。アイデアは俺とまさしも出すけど、調整して、最終的に判断するのはハコさん」
――ハコさんにとっての正しい、正しくないはどうジャッジする?
ハコ「わからないです、感覚です。私は感覚でしか喋れなくって」
――なんでそういうことを聞いたかと言うと、実は聴いてて〈ここは音楽理論的におかしいんじゃないの!?〉ってところもたくさんあって。
ハコ「正直私にもあるよ、あるけどこれ以上言ったらよくないなと思って進めちゃう。“ハワ親”とか〈なんでまさし、このギターなんだ! でももういいや……〉ってなる」
――でも、それを直してないところがいいと思っていて。
3人「なるほどね~」
下田「それは俺らがいいと思ってるところじゃないけど(笑)。俺とまさしは気付いてない」
まさし「でもハコちゃんが直してくれたら良くなったねってわかるよ(笑)」
ハコ「そういうポイントが多すぎるんだよね」
――だから教則本とかで勉強しないでほしいなって思います。
下田「しないでしょうね(笑)」
――でも、勉強しないでねとか言いながら、その一方で今作を聴いてて〈成長したな~〉とも思って。
下田・まさし「(爆笑)」
ハコ「わかる~。別名、成長を楽しむバンドなんで正解です(笑)」
下田「本当最初の頃からはすごく成長したと思う」
――シャッグスって知ってます? お父さんが3人の娘にバンドを組ませて、演奏も下手だしリズムもよれよれなんだけど、〈これこそロックンロールだ〉って評価する人もいるっていうバンド。それに通ずるものがあるなと思って。
下田「(笑)。なるほどね」
――音楽やってる人って、みんな歌も演奏も上手くて当たり前だけど、〈上手さ〉っていい音楽の最低条件じゃないんだなって思いました。
下田「いや、最低条件ですよ」
まさし「(笑)」
――あれ、こっちの感覚がバカになってる?
下田「だって俺らも上手くまくなりたいですもん」
――もちろん成長はしてほしいんだけど、あんまり上手くなりすぎないでほしい!

変な歌詞はどうやって生まれる?
――また歌詞の世界観もおかしくて。誰しも最初は英語をローマ字読みしちゃう現象を歌った“ローマでピングポング”とか、どんな内容の食べ物がいくらで出てくるのかわからない日替わり定食を〈シュレディンガーの猫〉とかけた“シュレディンガー定食”とか。あの歌詞はどうやって出来てるんですか?
下田「ほぼほぼ俺の世界観ですよ、あの歌詞は」
――ああいうのっていつ思い付くんですか?
下田「メロディーを考える時に、先にどういうテーマにしよっかなあって考えたり、メロディーを先に思い付いてたら、ここにどういう言葉が当てはまるかなって思ったり。例えば“ピングポング”はいつか曲にしようってずっと思ってたことなんですよ。ハコさんと散歩してる時に香港料理の看板を見て、〈俺、今度ホングコングみたいな歌詞作りたいんだよね〉って言ったら〈いいじゃん〉って言ってくれて」
ハコ「へえ~(記憶にない)」
まさし「この曲は本当に歌詞おもしろいよね」
下田「“クロスダンス”は人のライブを観に行って。アメイジング・エンリケだっけ」
ハコ「ああ、アメイジング・フォー・エンリケね(※)」
(※正しくはエイミング・フォー・エンリケ)
下田「それがすごいおもしろくって、観ている途中で、〈もし自分がここに立ったとして何をやったらおもしろいかな〉って思って、クロスダンス(※)をやったらウケるかなって思ったんですよね。それで、曲の途中で踊りをやろうって決めたんですよ」
(※クロスダンスは下田氏の造語。手を膝に当てて交互に動かすこのダンスが彼は得意)
――ドラマーなのに前に出てきて踊るっていう(笑)。じゃあ歌詞は日常的に考えてることとか、疑問とかが多いんですね。
下田「そうですよ。歌詞なんてやっぱり馬鹿馬鹿しいくらいがいいと思うし、そんなこだわんなくていいじゃんって思ってます(笑)」
――普通のラヴソングに共感したりは?
下田「しない……ことはないけど、恥ずかしくない?とは思う(笑)」
――ラヴソング作ってる側からしたら〈クロスダンスなんて恥ずかしくないの?〉だと思うけど(笑)
まさし「(爆笑)」
下田「恥ずかしさのツボがね、違うんだろうな」
まさし「下田さんの書く歌詞は下田さんそのまんまなんですよ。だから逆にいま新鮮。俺とハコちゃんは下田さんに慣れちゃってるから、そういうことに疑問も覚えなくなってて」
ハコ「そうそう!」
まさし「下田さんがクロスダンスを歌詞のテーマに持ってきた時に、普通は〈そこ歌詞にするか!〉って疑問を感じるでしょうけど、俺とハコちゃんは感覚が麻痺ってるからすぐ採用したよね」
ハコ「あ、そうなのか」
まさし「そういうツボが3人で合ってるからいいんだろうね」
――そういう世界観って何に影響を受けたんですか?
下田「少年ジャンプですね。〈努力・友情・勝利〉。自分の正義の価値観はそこで全部出来たから」
――クロスダンスと全然関係ないじゃん(笑)。
全員「(爆笑)」
――もっと不条理マンガとかなら話が通じるのに。まあでも今作には「ジョジョ」の曲(※)もあるもんね。
(※「ジョジョの奇妙な冒険」第5部に登場するキャラクター、ブチャラティへの愛を歌った“ブチャLOVEティ”が本作に収録されている)

進行方向別通行区分/古都の夕べの田中の影響
――しかしそんな音楽の作り方、聞いたことないですよ。
下田「(笑)。まさしはメロディーが作れないし、俺は伴奏がわからないし、ハコさんはアイデアが出ないけどハコさん抜きじゃ曲にならないし」
ハコ「下田さんはあんまり歌が上手じゃないから、私が聞き取って修正したり、調整したりしてあげてて。だから誰一人欠けても曲が出来ないんですよ。私が一人で作った曲もあるけど、滅多に出来ないし、絶対暗くなるし……。下田さんはキャッチーが過ぎて、たまにメロディーが童謡みたいになっちゃうよね」
――それはよくわかります。いまでも童謡っぽいところは残ってます。
下田「それも狙ってないけど……俺が作りたいのは童謡じゃない、ロックだ(笑)!」
――でも、普通のミュージシャンなら〈洋楽の誰々の影響で〉とかがあるけど、それもほとんどなさそうで。
下田「あるとすれば進行(進行方向別通行区分)とかかな」
――進行の田中さん節。相対性理論とかの真部節ではなく。
下田「田中節でしょうね、俺が好きなのは」
――で、すごいのがその田中さんのバンド(古都の夕べ)にいまハコさんが在籍してるっていうことですよね。
下田「御多忙を結成した5年前だったら信じられなかったよね」
ハコ「そうだね(笑)」
――下田氏はハコさんに〈今日の田中さんはどうだった?〉とか訊かないんですか?
下田「それはたまに訊くけど、興味があるのは作品であって、その人自体ではないから」
ハコ「男に興味ないし(笑)」
下田「俺の憧れだから話さなくてもいいし。でもすごい人ですよ」
ハコ「頭の回転が速いし、何でも知ってるし、ライブのまんまの人です」
――あと、今作を聴いてて思うのが、実はいちばん常識人っぽいまさし氏がけっこう変な音を出しているじゃないですか。マルチエフェクターに入ってはいるけど普通の人は絶対使わないおもちゃみたいな音色を使ってたりとか。
まさし「(笑)」
ハコ「時々まさしが出す音に笑っちゃうもんね」
下田「あるある」
まさし「このバンドに入るまで別のバンドをやっていて、その頃はずっとバッキングをやってたんです。自分のギターの始まりも、ゆずのコピーだし、コードしか弾けない。だからリフとかフレーズとかが一切わからなかったんです。でも御多忙をやるって時に下田さんが〈サビで普通のバッキングはつまらない〉って言ったんですね(笑)」
下田「うん、そう思ってた」
まさし「でも何も考えられないんだよな……って思って試行錯誤した結果がいまのスタイルで」
ハコ「変な音を出すとか?」
まさし「そう。どうやったら個性が出るのかと思って、でも王道のフレーズは弾けないし、スケールも1・2種しか知らないし」
下田「俺に言われて?」
まさし「そう。でもやってたら自分もおもしろくなってきちゃって」
――普通のコードを弾くだけのギターは、御多忙的にはおもしろくないということ?
下田「俺はあんまり好きじゃない。せっかくやるなら自分の好きなものに近いものになるといいなと思って」
――好きなものっていうのは?
下田「……進行ですよね」
――結局、進行(笑)。
下田「俺がずっと尊敬してる大好きなバンドは、進行方向別通行区分と、たまですね」
ハコ「たまいいね」
まさし「いいね」
――Mikikiの〈御多忙プピーピを作った10曲〉という記事でも、たまを選んでいて。
下田「そうそう。その2つはずっと変わらないリスペクトです。たまのギターはあんまりバッキングっていう感じじゃないですよね。進行での真部さんのギターも普通のバッキングと違うし」
まさし「まあ、そんなすごいことはできないんですけどね(笑)」
下田「元々そういうオーダーがあったっていうだけです(笑)」
まさし「でもそういうのができないから、変な音を出してたんですよ。そしたら二人がおもしろいって言うし、言われると僕も〈あ、いいんだ〉って思って、どんどんそっちにシフトしていったんだと思います」
下田「あとさ、HINTOをよく聴いてたよね」
ハコ「聴いてた~」
下田「あのギターが相当ヤバくて。歌メロとは別にギターのメロディーもあって、何回聴いてもおもしろいんですよね」
ハコ「HINTOの影響は大きいかもしれないね、忘れてたけど」
まさし「たしかに意識してたね」
下田「昔はギターのフレーズも歌って考えてたんだけど、最近はまさしがちゃんと考えてきてくれるんで、まさに成長ですよね。昔は〈マジで何も浮かばないな〉みたいな時も多くて」
まさし「最初の頃は苦戦してましたね。知識もないし、どうすりゃいいの?って」
ハコ「だって曲が変なんだもん、私たちもわからないよ(笑)」

クロスロードスタジオとM部さん
――ベースのほうはどうオーダーしてるんですか?
下田「ベースは100%ハコさんに丸投げです」
ハコ「でも、つまらないって言われる時もあるよね」
まさし「ベースに対する下田さんのオーダーがいちばんふわっとしてるよね。〈もっと動いて〉とか」
下田「知識がないからさ」
ハコ「もともと私もルート弾きが好きじゃなくって、でも歌も歌わなきゃいけないからどうしようってなって、弾けるのを弾いてるかな」
まさし「歌いながらよく弾けるよね」
ハコ「ベースが好きなんですよ。だからもともとヴォーカルを入れたかったんです」
――でもあのハコさん独特の歌声を使わないのも勿体ないとも思います。
下田「結局あと1人いても4人用のネタなんて思いつかないし」
――結局寸劇のこと(笑)。今作を作るのに関わったのは、3人と井上さん(レコーディング・エンジニア)だけですか?
ハコ「あと酒井さん」
――俺はレコーディングをちょっと覗いただけで何もしてないけど。井上さんには何か言われました?
下田「今回は何も言われなかったよね。初めてレコーディングした時は、“趣味はバンド~”にすごくいろいろ言ってくれて。でも、井上さんは俺らみたいな音楽について何も知らない人に対して、あえて指示とか出さないようにしてくれてるみたいで。だって井上さんが指示出しちゃうとそれになっちゃうから。〈おかしいですか?〉って聞いても〈おかしいかどうかを決めるのはお前だ〉って言ってくれますね。でも、〈合ってるか合ってないかで言えば合ってないけど〉とも言われた(笑)」
――井上さんも本当はいろいろ言いたいんじゃ(笑)。じゃあそれは後ほどご本人に聞いておきますね。
下田「あと井上さんが某M部さんに我々の音を聴かせてくれたみたいで、いいと言ってくれたとかくれてないとか。それがウチのバンドの活動のピークですね」
まさし「でもさ、ハコちゃんはM部さんと対バンしてるじゃん。古都の夕べとS団行動で」
ハコ「でもそんなこと聞けないよ(笑)! 私、対バンの人と仲良くなれないし」
下田「ハコさんもほぼ一般人ですから。ミュージシャンじゃない(笑)」
――じゃあ最後に。今後、御多忙の音楽が広まってほしいっていう気持ちはありますか?
下田「そりゃありますよ、バンドをやってる以上は。いろんな人に聴いてもらえたら嬉しい。けどそのための努力とかはそんなにしてない(笑)」
まさし「怠惰(笑)」
ハコ「売れたい、か……。何も気にしてないや」
――中長期の目標があって、いろいろ達成できたわけで、いまの目標はありますか?
下田「最近の目標なんてない気がする……」
――いま作ろう!
ハコ「……辞めない」
下田「そうだよな」
まさし「続ける」
ハコ「解散しない」
――それはいちファンからすればいちばんありがたいことです。
下田「ハコさんはともかく、俺もまさしも誰ももらってくれないし(笑)」
まさし「このバンドがなかったら確実にバンドやってないし(笑)」
――じゃあ長く続けてくださいね!
レコーディング・エンジニア井上勇司さん(クロスロードスタジオ)からのお言葉
これからも仲良く、ゆっくりじっくりバンドである事を楽しんで下さい。
仮にめちゃ売れて通帳に振り込まれた金額に驚いても決して揉めないで下さい。揉めるくらいならクロスロードスタジオで引き受けます。
LIVE INFORMATION
GARAGE年末イベント AD再騰就任シリーズ2019FINAL "さよなら2019 さよならAD"
2019年12月30日(月)東京・下北沢GARAGE
出演:
【AD再騰就任シリーズstage】
ADBANDTHENX/バスクのスポーツ/OOPS! PIG PALE ALE INC./御多忙プピーピ/seijishukyoproyakyu/エンヤコーラーズ
【fr.BASE”TABLE&DESK”stage】
AD再騰二三夫/ベントラーカオル/イケダトモユキ/Nomi(バスクのスポーツ)/ティンカーベル初野/前田徹/らすてぃー(茶封筒)
【Opening Anime Song DJ】
DJ Nyanpassed-Lab.
開場/開演:12:00/13:00
料金:2,500円(ドリンク代別500円)
