3作目にしてメジャーからの初アルバム。前半は歌謡曲的な情緒を濃厚に孕んだポップな楽曲が続き、後半はトリップホップの要素も織り込んだダウナーでメランコリックなナンバーが並ぶ。全編を通じて成熟した艶と色気を発しており、ポップスを解体するような実験の季節を経てこのバンドならではのカラーを確立した作品と言えそうだ。ペンギンラッシュ流のR&B“eyes”などでの打ち込みやエレクトロニクスの使い方も新鮮に響く。
かわいらしい名前とは裏腹に、独特の大人な世界観と時に変態的・圧倒的な技術を見せつけ、昨年の『七情舞』で飛躍した4人組が本作でメジャー・デビュー。ラテンの風味が漂う“本音”や、変則的リズムからダンス・チューンに豹変する“turntable”、フレットレスのベース・ソロが輝く“色彩”などの先行配信曲はもちろん、5拍子の“二〇二〇”やバンド・アンサンブルが爆発する“淵”など、〈変わったこと〉をあたかも〈変わった風〉にやるのではなく、ラテンやジャズを経由してうまく〈ちょっと不思議な〉ポップスに落とし込んでいるさまが見事。さらにこれまで以上にアダルトになったところに進化を感じる。頭がグチャグチャになった夜に聴きたい。