
〈daisansei〉と書いて〈ダイサンセイ〉と読む。もともとはギター/ヴォーカルの安宅(あたく)伸明のソロ・ユニットに、キーボードの脇山翔が合流するかたちで2019年5月に〈大賛成〉としてバンド活動をスタート。2020年2月に現メンバーの5人が揃い、daisanseiへと改名した。
音源も少なく、メンバーさえ固定していなかった2019年夏の段階で早くもインディー・バンドの登竜門的なイベント〈exPOP!!!!!〉に出演、今年も2月にビクターエンタテインメントが主催する新人オーディション企画〈ワン!チャン!!~ビクターロック祭り2020への挑戦~〉に出場。さらにコロナ禍の今年4月以降には、4か月連続で配信シングルをリリースし、ひそかに話題を呼んでいた。
シンプルな言葉で景色や隠れていた感情を浮かび上がらせる歌詞や、口ずさみやすいのに複雑な構成を持つ楽曲、そしてそれを支えるバンド・サウンド。そんなピースが揃ったファースト・アルバム『ドラマのデー』は、なんとフィジカル・リリースではカセット先行だという。彼らが〈ユニット〉から〈バンド〉になってゆく過程を見ているようなこのタイミングで、メンバー全員に話を聞いた。

大賛成と手をあげた5人のミュージシャン
――バンドの経歴を見ると、結成が2019年の5月。まだ1年半くらいなんですよね。もともとは安宅さんのソロ・ユニットとしてのスタートだったそうですが。
安宅伸明(ギター/ヴォーカル)「ソロ・ユニットというか、それ以前は完全に趣味でしたから。家でひとりで作って友達に聴かせたり、お母さんに送ったり。そのうちSoundCloudにも曲を上げるようになって」

――それ以前はバンドをやることは考えてなかった?
安宅「やっちゃダメな感じがしてました。厳しそうで。僕はお笑いをやりたかったので芸人を目指してステージに上がっていたんですけど人前に立つのが結構きつかった。〈俺はこういうの無理かもな〉って思って20代前半を過ごしたんです。
だから、音楽もバンドでライブとかじゃなく発表だけでいいし、曲をサンクラとかにあげてボーン!ってひとり歩きして広まるのでいいなと考えてましたね。でも、曲がボーン!って広まらならなかったので、ライブ活動しなければと思って。それでインターネットでメンバー募集をかけたところ、彼(脇山)がだまされてくれたんです」
――でも、あながちだまされたというわけでもなかったような。
脇山翔(キーボード)「……そうですねえ」
安宅「いまだにだまされてるのかもしれない(笑)。最初、彼は自分の周りにいたミュージシャンでメンバーを揃えてくれて、俺がバンドで演奏できる状態にしてくれたんです」
――それが去年の5月ですか。その時点ではバンド名は漢字の大賛成。daisanseiになったのはいまのメンバーが今年の前半に揃ってからだそうですね。
脇山「このバンドらしい歌詞の感じとか音の感じが出来てきたのも、2020年に入ってからだと思います」

――大賛成時代にファーストEPの『箱根』を2019年の7月にリリース。いま『箱根』を聴くと、まだ打ち込みの曲も多いし宅録ユニットっぽいですね。
安宅「最初のEPは僕が宅録でやってきたことをみんなで再現してくれた、というのに近いんです。でも、それが出来たときに〈これだと俺の殻を全然破ってない〉って気がして、そこから変わっていったというか、周りの力を借りるようになっていったという感じです。『箱根』の次に『ショートホープ』というEPを2019年の12月に出して、そこで初めて彼(脇山)と一緒に作った曲が“ショッポ”。そこで他の人の意見を取り入れて曲を作るということもできるとわかったんです」
――その頃までは、まだ安宅さんのユニットを脇山さんがアシストするという体制だったと思うんですが、そこからいまの5人の〈バンド〉になっていった過程を、せっかく全員取材なので聞いてみたいです。
川原徹也(ドラムス)「僕も最初は募集を見て参加したんです。そのときはアコースティック・ライブでのパーカッション募集で、カホンを演奏しましたね」

安宅「最初はドラマーというより〈カホニスト川原〉でしたね。その頃、作る曲もバンドっぽくなっていってたし、ドラマーが必要となったときも、〈あれ? こないだカホン叩いてくれた人でよくない?〉みたいな(笑)。それで3人でやり始めたのが2019年の9月、10月だったかな」
――女性メンバー2人はどうやって加入したんですか?
脇山「出会ったのは(小山)るいさんが先かな」
小山るい(ギター)「私は前にやっていたバンドで、アコースティックでやっていたときの彼らと対バンしたんです。そのときに声をかけてもらいました」

安宅「2人(安宅と脇山)で〈せーの!〉で声かけました(笑)。弾きざまが美しかったから〈この人を加入させよう〉と決めたんです。でも、そのときは僕らにギターがもうひとり必要なのかもまだ決まってない感じだったので、それから2か月くらいして本気でお誘いしました。TwitterにDMをして。そしたら、そのDMの画像をTwitterにさらされて。〈なんか来たんだけどwww〉みたいな」
小山「ウソです(笑)」
――どっちなんですか(笑)。でも、真意は通じたというか、それで加入を決めたということですか。
小山「いったん話を聞いてみようと思って会いました。ライブで初めて観たときも普通にいいなと思ってたし、そのとき聴かせてもらった曲もよかったので、やってみようと思いました」
――そして、ベースのフジカケ(ウミ)さんが最後に加入。
安宅「バンドに参加したのは、ほぼ(小山と)同時期でしたけどね」
フジカケウミ(ベース)「もともとやっていたバンドが去年の年末で一回休止しまして、その頃にマネージャーから〈このバンドが女性のベーシストを探しているんだけど、やってみないか〉と勧められたのが最初です」

安宅「なので大人経由でした(笑)」
フジカケ「音楽的にはいままで私が聴いてきたバンドとは違ったんですけど、練習のために何度も聴くじゃないですか。聴くたびにすごくハマっていく感じがありましたし、最初にスタジオに入ったときに、(ほかのメンバーと)リズムの乗り方がすごく似ているなって勝手に思ったところがあって、すごく楽しかったんです」
ふざけてるようにも、真面目なようにも聴こえる音楽
――だいたい2020年の頭にはこのメンバーが揃ったんですね。
安宅「2月くらいです。僕の誕生日も2月17日なんですけど、5人が揃った日にバンドの新しいかたちが生まれたなと思いました。〈過去の俺らが死んでった〉って感じですかね」
一同「(苦笑)」
――そのタイミングで、バンド名もdaisanseiになって。その後、この5人になってからの充実が、今年に入ってからの4か月連続での新曲シングル配信という活動につながってるのではないかと思うんですが。
安宅「まさにおっしゃる通りです。あの曲たちで大きく変わった感じがあります」
――脇山さんが参加した時点でもサウンド面での変化はあったとは思うんですが、そことは違うものですか?
安宅「連続のシングルでいうと、最初の“北のほうから”(2020年4月)は、僕がすごく落ち込んでたときに自分に対する励ましのお便りとして作らせてもらったような曲でした。次の“体育館”(2020年5月)は、たまたま〈体育館は迫ってくる〉みたいなフレーズができたので、そこから膨らませていったら、いつの間にか僕の内側にいる〈中二のときの俺〉に宛てた曲になってしまって。この2曲あたりが自分の内側と向き合う期間でしたね。そして、それを脇山がより掘り下げてきたという感じでした」
アルバム『ドラマのデー』にも収録
――脇山さんが掘り下げた、とはどういう感じで?
安宅「僕を部屋の隅に追い詰めてきましたね。〈もう自分の心からは逃げられないからね〉と言われた気がします」
――……(苦笑)。
脇山「“ショートホープ”までの彼の歌詞はわりと情景描写的な歌詞で、それも美しいんですけど、もうちょっと心に残る歌が欲しいとなったときに、どこまで自分と対話しながら作れるかというのを追求したのがその2曲だったなと思いますね。心情描写にフォーカスして、〈つまりここってどういう気持ちなの?〉っていうQ&Aを繰り返していきました」
安宅「彼(脇山)がやってくれたのは僕の歌詞の推敲とかじゃなくて、歌うときの気持ちはどっちなのかを整理してくれたんです」
脇山「シングルの最初の2曲は、僕ら2人で曲を詰めてスタジオに持っていって完成させた感じだったんですけど、“しおさい”(2020年6月)、“ざらめ、綿飴”(2020年7月)では、メンバーによって広がっていったかもしれないですね」
――“しおさい”で印象的なのは、フジカケさんによる朗読ですね。
アルバム『ドラマのデー』にも収録
安宅「彼女が自身で希望しました。〈私、朗読やりたいかもしれないです〉って」
フジカケ「……ウソです(笑)」
――またあからさまなウソを言いますね(笑)。
フジカケ「前から朗読を入れたいとは言われていたんですけど、(“しおさい”の)コーラスを録ったあとでお願いされました」
安宅「なんか自然に思いついてしまって。お願いしたら一発でできましたね。僕が朗読をやっちゃうとコミック・バンドになりかねないんですけど、(フジカケは)そうならないギリギリのところを持ってる人だなと思って。ふざけてるようにも聴こえるし、めっちゃ真面目なようにも聴こえる。そのスレスレな感じは僕だと出ない」
――そういうスレスレな感じって、daisanseiの曲自体にも言えますよね。真面目かもしれないけど笑っていいのかも、と感じられるところもある。たとえば“北のほうから”の歌い出しって、ほとんど細川たかしの“北酒場”みたいじゃないですか。
アルバム『ドラマのデー』にも収録
安宅「これはね、意識してたわけじゃないんですよ! やってしまったんです(笑)」
――でも、正解だと思うんです。耳に残るし。一応、(安宅の)出身も秋田県で、〈北のほう〉だし。
安宅「意味なくそれにしてるわけじゃないんで。“北酒場”の世代と、こっちの世代で分かれてくると思うし。“北酒場”と張り合おうという感じです(笑)」
大喜利みたいに、次々とおもしろいアイデアが出てくる
――言葉の選び方もおもしろいんですよね。笑えるという意味じゃなくて。“ざらめ、綿飴”も変わったタイトルだし、いまの街の景色と心情の両方が絶妙に描写されている歌詞にもグッとくるじゃないですか。
アルバム『ドラマのデー』にも収録
安宅「あの曲はもともとは、淡々としながらもわりと幸せな日常を描いていたんです。それをみんなでドラマチックにできたのは大きかった。川原さんにドラムのパターンを全投げしたら、あんなドラマチックな感じであがってきたんです。あれはぜったい僕には思いつかないし、そこから始まったことで全体もすごくドラマチックになった。
言葉に関しても〈どっかでまた祭りがあったよね〉っていうもともとあった一節から脇山が急に〈祭り行ったよね、綿飴買うよね〉みたいなこと言い出して。〈綿飴の原料ってなんだっけ?〉〈ざらめだね〉ってやりとりが2人であり、そこでタイトルが“ざらめ、綿飴”になったんです。そのタイトルが決まってから、夕陽の景色とかを歌詞に入れこんで。人に聴かせると〈さみしげだね〉とか言われるので、人がそう思うのならそういった風合いに近づけていこうと。そういう要素が結構全部ガチッとハマった曲なんです」
――脇山さんがそういう感じで曲に対してスイッチが入るのはよくあることなんですか?
脇山「夜な夜な(安宅に)電話したりして、そこでぽろっと出た会話を彼が歌詞に拾ってくれることは結構あるかもしれないですね。お笑い好きって言ってましたけど、彼は大喜利みたいにパッとおもしろいことを言うのが好きなので。それに、やっぱりメンバーと話していて出てくることってすごく価値があるし、ユニークなアイデアが多い。なるべくそういう場ができるように僕はしてるかもしれないです。“ざらめ、綿飴”はサビの歌詞が会話形式になっているんですけど、あれもフジカケの歌がなかったらああいうキラメキは生まれなかったと思うし」
安宅「前の僕だったら絶対やらないことだったんです。それが、〈なんか会話っぽいこと書いてるし、ほらねとか言ってるけど大丈夫か?〉みたいな感じ(笑)。でも、やったことで解放されましたね」
脇山「あの曲のリード・ギターも〈るいさんならどういう世界観を作ってくるんだろう?〉っていう考えがなかったら、ああいうキラキラした音は入らなかっただろうし」
安宅「あの曲のギターは、ミックスをもう完成させて送らなきゃいけない当日の朝3、4時くらいに〈これは終始ワウのギターがないとダメだな〉と思って、小山さんにお願いしましたね。〈音色は好きに変えていいので〉と書き添えて。そしたらストーン!って早めにギターのトラックが来たんですよ。〈私はこの音が最初から鳴ってました〉って書いてあって(笑)。〈じゃ、最初から言えよ〉って思ったけど(笑)」
脇山「半年前には生まれさえしなかったいろんなアイデアが生まれて、4か月かけてここまでたどり着いた感じがすごくあります」

転調しまくり、完璧主義者のポップ
――コロナ禍だし、このメンバーが固定されてからまだライブもそんなにやれてないはずなのに、結構バンド・マジックが起きてますね。そして、その4曲のシングルや“ショッポ”など重要なレパートリーも加えてのファースト・アルバム『ドラマのデー』が11月11日にリリースされます。しかもフィジカルはカセット先行発売で※。
脇山「自分が音楽を聴くときも全部サブスクリプションで聴いちゃうなというのがあって。CDとかはファンが応援したくて買う、みたいな印象がありますよね。たぶん、我々が出しても同じようなことは起こるだろうなと思って、せっかく出すのなら物として価値があるものにしたかったんです。僕の世代はカセットがリアルタイムではないんですが、レトロでかわいくて憧れみたいなものがあるし、アイテムとして欲しくなる物なんです。ちょっと懐かしい感じとか、かわいい感じは自分たちの楽曲ともリンクしている気がしたのでおもしろいかなと」
安宅「その案を聞いたときは思考が一時停止しましたけどね。いまはもう気持ちが再生してB面のような気持ちです」
――(スルーして)アルバムに収録された“ラジオのカセット”という曲には想いがちゃんと詰まってますよね。
安宅「〈じゃあ、表題曲はカセットの曲だよね。ラジカセの曲作ろう〉ということで作りました。カセットで出すアルバムの表題曲たるものになったんじゃないですかね」
脇山「(歌詞は)カセット大喜利でできた曲ですからね」
安宅「〈橋を渡るような〉とか〈巻き終えた〉とか、どこまでカセットっぽいこと言えるかな?みたいな、ひとり大喜利。〈スーパーひとり安宅〉でした」
――(スルーして)これがリード・トラックですからね。
安宅「普通にキャッチーな曲が出来たなと思ってたんですけど、あとあと聴いてみると変な曲なんですよね。すごい転調してるし」
――いままでやっていたバンドとdaisanseiの曲の違いといったら、安宅さん以外のメンバーは何を思いつきます?
安宅「おー、それは僕もちょっと興味ありますね」
小山「……転調。すごく多い(笑)」
脇山「コードがいやだね(笑)。普通の人の曲は10個くらいのコードでやるけど、(安宅の曲は)20個とか30個とかあるし、すぐオーギュメント※とか使うし」
安宅「僕は曲の全体を見た作り方ができなくて、順番に考えていくやり方なんですよ。メロディーに対していちばんいいコードはどれかを探して当てはめて、それが連続していくだけ。だから、ナチュラルに変になっちゃうんです。構成が変なのも、2番は倍にしてみようとか、半上げにしようとか遊んでしまうから。シンプルに繰り返してもいいんですけど、それでいいのか考えなくちゃダメ」

――そもそもひとりユニットをやる人の多くは、かなり重度の完璧主義者だったりしますが。
安宅「もちろん僕もそうなんですよ。全部やりたいんです。でも、それより(メンバーに任せたほうが)よくなってしまうから、そうするしかないって感じなんです。人に投げたほうが広がるなというのがわかったし、確信が持てたので、そういうところはどんどんみんなにやってもらおうと思ってます。やがて、僕は何もせずに座ってるだけで曲ができていくみたいな(笑)」
安宅、裸足でステージに立つ
――ちなみに、アルバム・タイトルはどうやって決めたんですか?
安宅「サイコロを振って、一文字ずつ決めました」
――はぁ。それはまた冗談として。
安宅「脇山とは〈ファーストだし、『daisansei』にする?〉とか話してたんですよ。でも、僕は個人的にはセルフタイトルはいやだった。なんか『頭文字(イニシャル)D』みたいにしたいと思って、〈頭文字D、daisanseiのD、ドラマのD、あ、ドラマのデーじゃねえ?〉みたいな感じで決まりました。〈ドラマチックな曲多いね〉みたいな理由もあったかな。
もともとは〈実家〉って案も出てたんです。僕の曲は日常の2、3分を切り取ってできてるはずなんですよ。でも、それがいざ並んでみたら意外とドラマチックな流れになっちゃってたので〈実家〉じゃないなと。ドラマの日々という意味でもあるし、語感も素晴らしいし」
――あと、安宅さんのメロディーとか言葉の源泉には、やっぱり北国っぽい情感があって、そこが妙に心に響くのかも。
安宅「たぶん、そんな自分が好きなんですよ。そこは捨てられないし、捨てたら終わりだなと思うし。そこを感じていただけてるのならうれしいです。土の匂い、素足、みたいな。どんどん素足でステージに立ちたいですね。一青窈か、Coccoか、俺か、みたいな」
――それがインタビューの締めになりそうですが……。
安宅「いいですね! あ、でも、お2人に〈さん〉はつけておいてください(笑)」

LIVE INFORMATION
daisansei『ドラマのデー』リリースツアー
2020年11月17日(火)名古屋 CLUB UPSET
共演:猫にOSUSHI/Mez-zo-forute /くすり
2020年11月18日(水)大阪 LIVE SQUARE 2nd LINE
共演:my sister circle/ズカイ/POOLS
2020年11月24日(火)東京 新宿LOFT
共演:キイチビール&ザ・ホーリーティッツ/Lucie,Too/がつぽんず